第16話 街並み

「ここは……」



 白い天井。明らかにダンジョンの光景ではない。俺はベッドに横になっている体を起き上がらせ、周りを見る。



「起きましたか」

「金山さん?」



 俺のベッドの脇にパイプに座っている金山さんが居た。なぜこの人がここに……。



「なんで俺がここに座っているのか気になる感じですよね?」

「はい。それと姫宮さんは……」



 金山さんがここ、治療スペースであろう場所にいる理由。俺自身がここにいる経緯。姫宮さんの安否。聞きたいことは山ほどあった。



「何でもダンジョンで倒れた佐々木さんを鬼神ちゃんが無理やり帰還させたんだとか。まぁ鬼神ちゃん程の力の持ち主なら男一人運ぶ位できても不思議じゃないですが……」

「姫宮さんが俺を……」

「俺は幸さんに頼まれてぐったりしている佐々木さんを治療スペースに連れてきただけです。鬼神ちゃん、佐々木さんを帰還させるまではいいんだけど、後は幸さんに丸投げしたみたいで……。丁度その辺をうろうろしてた俺が幸さんの代わりに佐々木さんの世話を引き受けたんですよ」

「すみません。迷惑をお掛けしました」



 てっきり死んだと思っていた。まさか姫宮さんが俺を助けてくれていたなんて……。



「HPは残ってたから、単純に痛みで気絶してただけみたいでしたよ。HPはさっき医療班の人が回復してくれたから大丈夫なはずです」



 俺は自分のカードを取り出した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


名前:佐々木重一

年齢:30

性別:男

レベル:13

HP:75/75

攻撃力:34

防御力:30

耐性:無し

スキル:ガンスミスLV2(特定の物体で銃や弾を作成できる)

保有ポイント:2600→2550

踏破ダンジョン:【ぷよぷよ】


―――――――――――――――――――――――――――――――――


「ポイントザクザク何だけど……」

「あっ! 治療費は勝手にそのカードで払わせてもらいました」

「だからちょっと減った記載があるのか」



 俺はまじまじとカードを見つめる。レベルもポイントも驚いたが、ダンジョン踏破したことになってるよ……。なんか申し訳ない。



「俺は今からダンジョン潜るけど、佐々木さんは休んだ方がいいかもしれませんね。もう宿もやってる時間なので」

「えっ!」



 俺がダンジョンで姫宮さんと居た時間はそんなに長くない。もしかして俺、寝すぎた?



「ポイントがそれだけあれば装備とかも整えれるかもしれませんね。では!」



 金山さんは急ぐようにその場からいなくなった。前会ったときよりも元気そうに見える。



「はぁ……。俺もやっと休める……」



 俺は治療スペースを出て、セントラルタワーの出口を目指した。よくよく考えればここから出るのなんて初めてだ。少しドキドキする。



「おお! 以外にレトロだ……」



 出入口の記載のある扉を開けると大きな階段が正面にあり、その下にはレンガ造りの建物が立ち並ぶ、中世ヨーロッパのような街があった。噴水のある広場には大きな時計にベンチ、出店まである。

 俺は駆け足で階段を下ると、辺りを見渡した。街の中央の道はかなり長く、先が見えない。それに思っているよりも人が多い。気を付けなければぶつかってしまいそうである。



「取り敢えず宿……。いや飯だな」



 俺は街を散策しながら飯屋を探す。考えてみれば丸1日以上何も食べていない。

 ショーウインドに飾られている、食べ物サンプルや服、それに装備品。現代の街並みに思っているよりも近い。



「おっ! ここ美味そう!」



 俺は蕎麦とかつ丼のセットのサンプルに釣られて店に入った。しばらく海外に居たという事もあって日本食が恋しくてしょうがなかったのだ。



「いらっしゃいませ。お一人様ですね。喫煙ですか禁煙ですか?」

「禁煙で」



 日本流のサービス。思いの外居心地がいい。



「こちらへどうぞ」

「ありがとうございます……。あっ!」

「あ……」



 俺は隣に座る姫宮さんの姿に、公共の場で思わず声を上げてしまうのだった。

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