第15話 決着

 水弾は勢いよく向かってきた。俺はすかさずゴム銃を取り出し対抗する。あの時みたく相殺させてやる。



「なっ!」



 俺の放った弾は水弾に飲み込まれる。相殺どころか、敵の水弾が大きくなった気さえする。

 慌てて身を屈めて避けるが、少しだけ髪に掠る。掠った所は見事に消滅している。喰らったら間違いなく即死だ。



「避けやがったか……。クソがぁっ!」



 激高するスライム。姫宮さんも何とか攻撃を避けれていたようだ。



「佐々木さんっ! ここから逃げて!」

「でも、姫宮さん一人だけじゃ……」

「いいから!」



 姫宮さんが俺の顔を見て叫んだ。俺はその叫びを拒み、姫宮さんの後方へ移動する。



「俺は後衛で援護にまわります」

「何言って……」

「女性1人をこの場に置いてくことは流石に出来ません。どうせ、もう死んでる身です。別に怖くはありません」

「……。死んでも知らないから」



 怖くない? そんなの嘘に決まってる。怖いよ、痛いの嫌だよ。でも俺も大人の男だ。ちょっとくらいカッコつけさせてくれ。



「お前ら生意気。死ね。死ね死ね死ね死ね死ね!」



 スライムは勢いよく姫宮さんに襲いかかる。鋭く尖らせるように変化させたスライムの右腕はまるでランスのようだ。



「串刺しにしてやるっ!」



 スライムの突き攻撃は恐ろしく速く、姫宮さんは避けるだけで精一杯だ。しかし、そっちにばかり気を回すのはあまりに俺を舐めていないか?

 銃に弾を素早く装填し、引き金を引く。狙いは足元、それに尖った両腕だ。俺の放った3発の弾は確かな弾道を描き、飛んでいった。



「っく!」



 スライムは弾に気付いたが、流石に3発の弾は避けれず、足元に飛んでいった一発が被弾したようだ。

 がくっと落ちる膝。姫宮さんはその隙を見逃さず、スライムのボディに一撃を入れた。はじけ飛ぶスライムの体。流石にこれでは動けないだろう。



「人間の癖に、腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ! もういい……。お前らを食うことは諦める……。ただ、確実に殺す」



 スライムの体が液体に変わり、宙に浮かぶ。液体は球の形に変わるとゆっくり膨張する。




「まずい!」



 俺は姫宮さんの元に駆け寄るとその頭を掴み無理やり地面に這いつくばらせた。



「痛っ! 何する……の」



 ぱぁんっ!



 膨張したスライムは膨らませ過ぎた風船のようにはじけ飛んだ。そして、その破片は水弾に変化し、部屋全体に飛び交う。

 俺は、庇う様に体で姫宮さんを覆った。あーあ何してんだろ俺。



「ぐぁぁああああああああああぁあああああ!!!」



 水弾の威力は先ほどよりも弱かったが、数の暴力が俺を襲う。痛い。死ぬ。



「何してるの! どいて! どいてよ!」

「ぐああぁぁあっ! へっへへ……」

「なんで笑うの?」

「分からな、い、です。で、も死ぬのが、やっぱり、怖かったからかな……」

「……。だから、死んでも知らないって言ったのに……。忠告したのに……」



 スライムの攻撃から何とか姫宮さんを守りきると俺は、そのまま姫宮さんに覆いかぶさる。駄目だ、意識が……。



「まさか、まだ生きてるなんて……しぶとい奴らね」



 スライムの声が聞こえる。なんだか、さっきよりも大分幼い声になっているが間違いないだろう。



「その身体……。ごめんなさい。今の私は手加減できないわよ」



 俺は姫宮さんの顔を見た。右目に稲妻のような紋様が現れていて、牙のようなものも見える。その姿は異様なほど禍々しい。

 姫宮さんの顔から徐々に余裕が見えなくなり、獣のそれの様になる。



「ぐぁっ!」



 獣のような声を上げてスライムに向かおうとする姫宮さん。



「ふ、ふんっ! そんな顔が変わったくらいで私がびびるとでっ! ……」

「えっ!」

「へへ、お、れの勝ち」



 俺は銃の引き金を引きスライムの脳天に弾を放った。見事に頭が吹き飛ぶ。そして、姫宮さんの顔が人間のそれに戻っていったのが見えた。俺は、その姿に安心し、ゆっくりと目を閉じたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます