第13話 姫宮さん

「すみません……」

「……それでは私、ボスの部屋に行くので。受付の人に聞いた限りだと、ボスは少し時間を置くと復活するみたいです。もし貴方もボスを狙っているのなら、少し時間を空けてから来てください。では」



 鬼神ちゃんこと姫宮さんは、そういうと次の階層への階段があるであろう所へ向かって行く。冷たい表情。業務的な話し方。俺はそんな彼女が何となく心配になって後を追った。



「……。貴方も付いてくるんですね。もしかして、ドロップ品狙いですか? 邪魔になるので止めて欲しいんですけど」

「行き先が一緒なだけです」

「そうですか……。でも何かあっても助けませんからね。それに、貴方も私について来られない」



 姫宮さんは俺を巻こうとしたのか、凄まじい速さで走り出した。俺はそれを必死に追いかけた。何でこんなに必死なのかと言われれても答えられないがとにかく必死に追いかけた。



 姫宮さんは階段をも走って駆け下りる。レベルが上がったおかげなのか、何とか追いかけれているが、流石に息が苦しい。

 気付けば場所は6階層。7階層階段前。あまりの速さにモンスター達は、驚くばかりで攻撃を仕掛けてこなかった。



「はぁ、はぁ、うっ! はぁあ、はぁ」

「行き先が一緒なだけにしてはよくついてきますね。ストーカーですか?」

「ち、はぁ、違っ、はぁ、はぁ、います」

「そうですか……。でもこの先は本当について来ないで下さい。ボスに集中したいので」

「はぁ、はぁ、は、一緒に戦うのが怖いだけ、じゃないんですか? それとも人が怖い?」

「!!!」



 姫宮さんの顔が険しくなった。ヤバい、調子に乗った。



「適当な事言わないでください。不快です」



 俺を一瞥すると、姫宮さんは次の階層への階段を下り始めた。いつもよりも長い階段。螺旋状になっているのが少しだけおしゃれに感じる。そして、階段を下りきるとそこには今までよりも大きな扉が姿を現した。



「いいですか。私が戻ってくるまで絶対来ないでください。邪魔でうっとおしいので」



 先ほどよりもきつい言葉に俺は委縮してしまう。姫宮さんは扉を開けてボスのいる間に。俺は階段で座って待つことにした。



「美人が凄むとこんな怖いのか……」



 姫宮さんの肩につく位の綺麗な髪、白い肌。それとは対照的な冷たい瞳。目元の泣きぼくろが余計にクールさを際立たせる。いい歳したおっさんがあんな華奢な女性に圧倒されるとは……。

 俺は姫宮さんの帰りを待ちながら、ゴム銃の手入れをする。胸ポケットに入っていたハンカチで木でできたボディに着いた細かい汚れを落とす。



「銃は手入れするのも楽しみなんだよな……。にしてももう30分位か……」



 姫宮さんが扉に入ってから30分。いくらボス戦とはいえ少し長すぎる。



「確認だけならいいよな」



 俺は扉に手を掛けた。すると……。



「うっくっ!」



 右腕から大量の出血をしている姫宮さんと全身青色の人型をした、スライム? がそこにいた。



「久々に起きたらこんな威勢のいい子がいてラッキーだわ。そこの子も私を楽しませてくれるのよね?」



 スライムであろうそいつは、流暢に人の言葉を使いながら、俺を見て舌なめずりをするのだった。

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