第12話 ゴム銃

「おおっ!」



 割りばし鉄砲は本格的な姿のゴム銃に姿を変えた。見た目のカッコよさが段違いだ。形は従来のハンドガン、グロック17を模しているように見える。

 上の蓋部分を外してみると弾を装填出来るようになっていた。俺は無理のない数、8発分の弾を込めて蓋をした。



「セ―フティもかけれるようになってんのか……。凄いな」



 俺はセーフティを下ろし、試し撃ちに少し離れたところにある岩を狙う。照準器もついているので、割りばし鉄砲の何倍も使い勝手がいい。フロントサイトとリアサイトを使って狙いを定める。ああ、これだよこれ。銃を使ってるっていう実感がある。

 俺は引き金を引いた。実銃に比べると殆ど反動はない。だが、射出された弾の速度は桁違いだ。目で追う事はもはやできない。



 ぱぁんっ!



 岩の一部がはじけ飛んだ。そして岩の表面には大きな窪みが出来た。銃痕といっても過言ではないだろう。



「疑似ブローバック……。一体どんな作りになってるんだ?」



 引き金を引いたときにスライド部分が後退するのがたまらなくそそる。まるで本物の銃のようだ。



「横のこれはスライドストップか?」



 俺は銃身の横についていたレバーを倒して、再び引き金を引いた。

 がしゃがしゃがしゃがしゃがしゃ。スライド部分が忙しなくピストン運動をすると、残っていた弾が連続で全て発射された。おいおいこれ連射の機能もあるのかよ。



「凄い。これはもう兵器と言って過言じゃないかもしれん……」



 俺は切れに研磨されたボディを愛おしく撫でた。こいつの名前は割りばしさらば3号、略して『ワリサー3』にしよう。

 再びワリサー3に弾を装填させ、セーフティを掛けポケットにしまう。割りばしと比べて心強さがある。



「いいところに!」



 遠くにスライムの姿を見つけた俺は、すかさずワリサー3を構えてセーフティを解除する。躊躇なく引き金を引くと弾はあっという間にスライムを捉え爆散させた。



「威力も桁違いだ。これなら……」



 俺は2階層を悠々と歩きながら、出会ったスライム達を残さず倒していく。ああ、快、感!



「おっ。あったあった!」



 俺は次の階層へつながる階段を見つけた。ワリサー3があればもはや敵無し。俺は自信をもって階段を降りることにした。



「3階層はどんな奴が出てくんのかな? 確かガンスライムはもう少し下だよな」



 そんな俺のドキドキを無視するかのように3階層も全く同じスライムのみ……。しかも風景は一切変わらない。俺はモチベーションが下がった。意外に戦闘を楽しみにしてたんだな……。



「ふぁあ……何か急に眠くなったな……。帰るか……」



 俺は体を翻し、引き帰る。当たりに散らばったスライムの死体はしっかりと弾にして。



 ぱぁん!



 凄まじい音と衝撃が元の道から聞こえてきた。どうやら誰かもここまで降りてきているらしい。俺は狩りの邪魔になると思い、遠回りをして帰る事に……。しかしこれが、まさか再びの出会いのきっかけになるなんて。



「あなたは……」

「どうも……」



 そこには飛行機で墜落しているときの表情とは全く違う表情をした。あの時の女性がいた。



「えっと……。こんなお時間までダンジョン探索ですか?」

「貴方こそ……」

「お、俺はもう帰ろうとしていたところで……。ポイントもそこそこ集まりましたし……。そろそろベッドで寝たいですしね」

「そうなんですか。でもこの時間はどこの宿もやってないですよ」

「えっ!」

「私も本当はそうしたかったんですが……。時間もあるので、のんびり、また、ここのボスでも倒そうかと……」

「また?」



 俺が知ってる限りあの飛行機に乗って今の段階でダンジョンを踏破しているのは一人しか思いつかない。



「もしかして鬼神ちゃんって……」

「はぁ。あの人ですね……。私は姫宮凛ひめみやりん。鬼神って流石に失礼じゃないですか?」



 噂の鬼神ちゃんの正体は思いがけない人であった。

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