第9話 再出発

 俺は受付カウンターに戻り、幸さんからポーションを受け取った。緑色で色は少し濁っている。これは下位ポーションだからだろうか?



「さあグビッといっちゃってください!」

「いただきます」



 コルクのような栓を抜き、取り敢えずそれはポケットへ。そして、本命のポーションの入った瓶を口に付け一気に飲み干す。思ったよりもさらっとして飲みす……くはない!



「にっが! センブリ、センブリだろ!」

「はははははははっ! いいリアクションですね! でもHPはこれで全快のはずです。もう一度ダンジョン【ぷよぷよ】に向かわれますか?」

「ええ! 宿泊代と飯代を稼いできます」



 俺は再び幸さんに案内され、エントランスホールの上に立った。すると、幸さんのカウントダウンが始まる。



「3、2、1、ゼロ」



 白い光によって視界が遮られ、俺は再びダンジョンへ向かったのだった。





「本当にここ、景色だけはいいんだよな……」



 早すぎるダンジョンへの帰還。正直大分疲れてきた。寝たい。何か食べたい。しかし働く者食うべからずなのである。

 俺は草原に隠れているスライムを探しながらゆっくりと歩く。レベルも上がった。攻撃手段もある。最初と比べて、戦いへの貪欲さが湧いている事に自分でも驚く。



「いない……」



 誰かが倒してしまったのだろうか。スライムの体液が辺りに散ってはいるが肝心の生きたスライムがなかなか見当たらない。取り敢えず俺は手あたり次第、体液を弾に変えながらくまなくスライムを探す。



 プルン。プルン。



 少し離れたところに小型だが、スライムを見つけた。色はいつもの青ではなくてオレンジ色だ。これ完全にベスの方だろ……。

 俺はスライムに悟られない様に体を地面につけ、匍匐前進(ほふくぜんしん)で射程範囲までじりじりと近づく。普通のRPGの主人公であれば真っ直ぐに敵に向かって倒しに行くのだろうが、俺は現代のガンマン、いや打つことに関しては素人の銃器職人(ガンスミス)だ。破れかぶれの特攻何て、自殺行為であると認識している。

 スライムとの距離は大分縮まった。これなら攻撃が届く。俺はポケットから割りばし鉄砲1号を取り出し、弾を装填する。連射の出来る割りばし鉄砲2号は無駄打ちする可能性があるので取り敢えずは1号で仕留めに行く。

 割りばし鉄砲の先端で照準を合わせる。片目をつぶり、確実に捉えられるように慎重に慎重に……。狙いが定まった。俺は引き金を引く。割りばし鉄砲から放たれた青い弾は見事な弾道を描き、スライムに向かう。当たる直前、何かに気付いたような反応を見せたスライムだったが、最早手遅れ。弾はスライムの体ヒットし、スライムを爆散させた。



「やっぱり、それなりに攻撃力はあるな。さっきのガンスライムは攻撃するたびに弱体化するタイプだったから一発で仕留められたと思ったけど、それ以外の奴は何もしなくても一発か。ただの輪ゴムの弾なのに……」



 俺は普通のスライムが弱いことをやっと実感した。さっきまでのスライムへの俺の認識は確実に強者であったのだ。

 立ち上がり、スライムを探す。見つけたら態勢を低くし射撃。これの繰り返しをひたすら行った。



 数時間後。流石にスライムの姿が見えなくなったので、俺は次の階層に続く何かを探す事にした。階段なのか、それとも扉なのか全く分からないが、もうここに味気を感じない。



「おっと、その前に敵発見……」



 俺は再び匍匐前進でスライムを射程範囲に収め、引き金を引く。この作業にもだいぶ慣れた。だが、やればやるほどちゃんとした銃が欲しくなる。正直この体勢で、割りばし鉄砲を使っている画は恥ずかしい。



「何してるんですか?」

「えっ! あのこれは……」



 スライムを仕留め終わると、地面にうつ伏せの俺に1人の男性が話し掛けてきた。この人は見た事がある。俺を起こしてくれた人……。確か金山さん……。



「この辺はちょっと前に鬼神ちゃんが殆ど倒しちゃったから、今はあんまり狩りをするには味気ないかもしれませんよ」

「鬼神ちゃん?」

「あーもしかして、先に行っちゃったから知らないんですか? 彼女の事」



 俺は金山さんの言う事が何一つ把握出来ずにいた。それにしても俺の事覚えてたのか。尚更この格好みられるの恥ずかしいんだが……。

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