第4話 スライム

 俺の握っていた木の枝は白い光に包まれながらゆっくりと形を変えていく。ポケ●ンとかデジ●ンの進化シーンを何となく思い出す。


 姿を変えた木の枝の光がだんだんと落ち着きだし、その姿を現した。



「えー……」



 木をまとめる茶色いあいつ。銃とは思えない程の軽さと小さいボディ。数本の木の箸から作られたそいつの名前は間違いなく割りばし鉄砲である。まあ木ならこれが精一杯なのだろう。



「はぁ、本格的な奴はやっぱり別の素材が必要か……。あっ! もしかしたらさっきの自販機のアルミニウムとかで……」



 プルン。



 俺がある閃きをしていると、後ろから聞きなれない音が聞こえた。その音は段々と大きくなる。おそらくはあいつがこっちに近づいているのだろう。



「スライム……。もの凄い想像通りの見た目だな」



 青い体に、今にも溶けてしまうのではないかと思うほどの不安定さ。大きな瞳。頭一つ分くらいの体格。これぞ、ザ・スライムである。

 初めてのモンスター。緊張していないと言えば嘘だが、その愛くるしい見た目の所為でモンスターが現れたという意識があまりに薄い。俺は、小型犬に触りに行く時の様に中腰でゆっくりとスライムに近づく。おーよしよしよしよし!



 プルンプルン。ブルルルルルルルルン!



「えっ?」



 愛らしくゆっくりと近づいてきたスライムがいきなりスピードを上げて俺に向かってきた。そして、その身体を縦長に伸ばし一気に体を縮める。


 まるで大砲の玉の様に勢いをつけた体当たりは、俺の胴体にクリーンヒットした。



「痛っった!」



 激しい痛みが俺の身体を襲う。脳は揺れて今にも倒れそうだ。これがモンスターからダメージを負うという事、HPが減るという事、そして何もしなければ死ぬという事。



「っくあ! スライムだと思って舐めてたよ……」



 俺は漫画の主人公張りに恰好付ける。誰も見てないしちょっとぐらいいいだろ。



「次はこっちの番だ!」



 右手に握っていた割りばし鉄砲を右ポケットに突っ込み、全力でスライムに殴りかかる。しかし、スライムkの動きは意外にも早く、何回拳を振っても当たる気がしない。



「はぁ、はぁ、う、はぁ、くそっ!」



 ブルルルルルルン! 



 俺が息を切らしていると再びスライムが体当たりをしてきた。流石に2回目は俺もスピードに慣れていた事もあって何とか躱せた。しかしこのままではじり貧である。こっちは少し動いただけでも息切れしているというのに、スライムは疲れた様子が一切ない。



 ブルルルルルルン!



 まさかの連続の体当たり攻撃。ヤバい。少し気が抜けて……。



「くあぁぁっ!」



 スライムの攻撃は再び俺の胴体に決まった。痛い痛い痛い。おそらく腹の辺りは痣だらけになっているだろう。ただ……。



「俺、これでも負けず嫌いなんでね!!」



 反動でスライムの動きが一瞬止まった。痛みに悶える事もせず、俺はスライムに殴りかかる。



 プルン。



 手応えが一切ない。しかし、相手の動きが明らかに鈍くなった。俺はすかさず何度もスライムを殴る。

 ぺちゃぺちゃと粘り気のあるスライムの体液が拳にまとわりつく。凄くうっとおしい。



 ブルルルルルルン!!



 相当弱っているだろうと思っていたスライムが、最後の力を振り絞るようにその場から離れだした。俺も急いでスライムを追うが中々追い付けない。何か相手の動きを止める物があれば……。



「一か八かやってみるか」



 俺はポケットから割りばし鉄砲を取り出した。少し距離をとられた相手に対する攻撃手段はこれぐらいしかない。

 あとは弾があれば……。俺はスライムを追いかけながら、弾になりそうなものがないか辺りを見回す。しかしそれらしいものは見当たらない。



「くっそ! 輪ゴムみたいな弾力があって伸縮自在なもの……。さっきのスライムみたいに……。スライム……?」



 俺は自分の手に付着していたスライムの体液を見た。これが輪ゴムの代わりになるか分からないが、何もやらないよりは間違いなくいいだろう。



弾丸作成クリエイトバレット!」



 俺は今度は口に出してスキルを発動させる。手に着いたスライムの体液は段々と変化し……そこには一つの青色の小さな輪が現れた。

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