異世界迷宮都市の銃器職人~スライムもゴブリンもドラゴンも近代兵器を舐めすぎだろ~

シュン

第1話 ようこそ異世界迷宮都市へ

 体がふわりと浮かぶような感覚。俺死ぬんだ。墜落していく飛行機。意外にも冷静な自分。頭の中で反芻されるのは、家族の事でも、恋人の事でもない。



「せめて自分で銃を一から作ってみたかった……」



 ぽつりと呟くと、落ちていく飛行機の中にも拘わらず、横の人と目が合う。大人の女性。恐れく30歳位だろう。

 その人は俺の顔を見ると、にこりと微笑んだ。俺はその顔に釣られてにっこりと微笑む。



「私ももうちょっとだけ生きたかったな……」



 にこりとしているのに女性の声が震え、涙が流れていた。その光景を見た瞬間、俺の意識は無くなっていった。



「おい! あんた起きろ! 俺達生きてる! 生きてるぞ!」



 知らない男性の声で目が覚める。辺りには俺と同じく、今目が覚めた人たちがちらほらと見える。その中には先程の女性も……。どうやら飛行機事故の被害者達のようだ。

 助かったのか? それにしてはどうやら様子がおかしい。まず、ここはどこだ? 海でもなく俺の知ってる陸にも見えない。ただ分かるのはここが何もない真っ白な空間という事だけ……。

 それでも、体があるという事は生きているという事なのだろうか? 他の飛行機の乗客だった人たちは泣きながら喜んでいる。中には喜びを抱擁で表している人もいる。



「水を差すようですが、皆さんは死にました。間違いなく。ここは魂の漂流する場所。言い換えれば天国に行くまでの待合室みたいなものです」



 いきなり俺達の目の前にナース服を着た一人の女性が現れた。垂れ下がる目の下の泣きぼくろが印象的だ。



「誰だお前は! 俺達はこうして体もある! 生きてる……生きてるはずだ!」



 一瞬の静寂を破るように、俺を起こしてくれた男性が、ナース服の女性に向かって大声を出す。



「……。その身体は魂を具現化しただけです。実際のあなた達の体はここにはありません。証拠をお見せしましょう」



 ナース服の女性は男性に掌を向ける。すると男性の体は、ゆっくりと小さくなり青白い火の玉の様になった。



「どうですか? これで信じてもらえたでしょうか? あなた方150人は既に死んでいます」



 青白い火の玉が男性の姿に戻る。そして、その場にもう一度静寂が訪れた。



「その……。私たちが死んだのは分かりました。ですが、なぜ私たちは人間の姿を貰っているのでしょう? さっきみたいに全員を魂だけの状態にしてほっとけばいいじゃないですか」



 飛行機が落ちる直前に見た女性が発言した。確かに既に死んでいる俺達なんか火の玉の状態にしてしっかり成仏するまで待たせればいい。



「ふふふ。ようやく本題に入れますね。なぜここに貴方達を呼んだのか……。それは悲運の結果、命を落とした貴方達にチャンスを与える為です」



 チャンス……。俺を含めたここにいる人間全員が次の言葉に期待する。



「今から貴方達を【異世界迷宮都市】にお送りします。そこはダンジョンを攻略する事が全ての世界。もしダンジョンを全て攻略できた暁には貴方達の願いは叶う。そして……」



 女性の含みのある言い方に違和感を覚えると女性が急に光り出した。眩しさで目を閉じる。そして、ゆっくりと目を開ける。



「ようこそいらっしゃいました! 異世界迷宮都市、中心部受付カウンターへ! 私は本日皆様の担当をさせていただきます、幸さちと申します! どうぞよろしくお願いします」



 そこには元気ハツラツなスーツの女性の姿があった。

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