16.冒険者能力試験
冒険者カードを手に入れた僕は、冒険者能力試験を受けることになった。
試験といっても、念のためのようだけど。
試験は、建物の裏手の中庭で行うようなので、サリーさんに案内してもらって後をついて行く。
中庭に着くまでに、ざっと試験の内容を教えてもらった。
試験では、剣術と魔法の2つの実技試験を行うようだ。
冒険者カードに刻印が現れた時点で、ある程度身についている事になっている様なので、問題はないようだが、決まりなので一応やるんだとか。
中庭に到着するとそこは、冒険者たちの鍛錬場になっているようで、数人の冒険者が、汗を流しながら、鍛錬に励んでいた。
しかし、ちょっと失礼かもしれないけれど、こんな田舎にもちゃんと冒険者っているもんなんだな。
そんな事を考えていると、僕の試験を行うスペースに辿り着いた。
「ハルトくん、はいこれ。」
そう言って、サリーさんが僕に木刀を渡してきた。
「最初は剣術からやっていくわよ。 相手はロードがしてくれるから、ボコボコにしちゃっていいよ。」
「ハルトくん、サリーの言った事を真に受けちゃダメだぞ。 この試験は別に、相手を倒す訳じゃぁ無いからね。 俺と剣の打ち合いをして、剣をしっかり扱えるかを見る試験だからね。 間違っても斬りかかってこないでくれよ。」
「そうだったんですね。 分かりました。」
こうして僕たちは、剣の打ち合いに入った。
打ち合いって言っても、基本的には鍛錬の方法と何ら変わらないようだ。
僕が10回打ったら、今度はロードさんが10回打つ。
その時の僕は、ロードさんの剣を僕の剣で上手く防いでいくというものだ。
お互いの剣と剣がぶつかり合う、甲高い音が響き合う。
それを5セット行ったところで、剣術の試験は終了となった。
思ったよりも疲れる。
今までの鍛え方は素振りだけで、実際に物に向かって振ったのは盗賊との戦いの時が唯一だったのだ。
やはり、当たるものがあるとないとでは全然違うようだ。
ただ、素振りをしていただけあり、剣術については「合格」となった。
しかし、ロードさん曰く、鍛錬は必要だという。
人は頑張った分だけ身になる生き物なので、どれだけ頑張っても更に頑張るしかないんだそうだ。
そうだね、頑張ろう!
続いて、魔法の試験に移る事になった。
魔法の試験では、ターゲットとなるカカシに向かって、得意な技を繰り出せばいいんだそうだ。
早速、サリーさんがカカシを持ってやって来た。
魔法の試験は、サリーさんが見てくれるようだ。
彼女も魔法を使えるようなので、僕の魔法がどうかを見てくれるんだそう。
「よし、じゃあ好きな技を放ってみて!」
早速、地面に刺されて立たされたカカシに、僕は手の平を向ける。
そして、手の平から火の玉が出る様子を創造する。
火魔法は旅の途中で焚火や何かに使っていたから、だいぶ制御にも慣れてきた。
なので、簡単に火の玉を出現させることが出来た。
僕はその火の玉を、カカシに向かって飛んでいく様に心の中で念じる。
すると、僕の思ったままに火の玉はカカシに向かって飛んでいき、カカシに接触した途端炸裂した。
「ドゥォォォン!!」
そこまで大きな火の玉ではなかったが、音だけは立派だな。
だが、布や綿などで作られたカカシには効果は絶大だ。
その瞬間、カカシ全体から火の手が上がり、カカシは程なくして消失してしまった。
「あらあら、君の得意な魔法って火の魔法だったんだね。 持ってくるの失敗したなぁ。 これ、結構作るの大変だったんだけどなぁ・・・。」
「あ・・・あのぉ~・・・。」
い、今さらそんな事呟かれてもである。
何なんだろう、この罪悪感は・・・。
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