14.冒険者ギルド

 ようやくコルト村に入った僕たち。


 コルト村に入って、まず目に入ってきた光景は、日本でも見たことのある光景だった。


 コルト村の家々は、茅葺き屋根なのだ。


 まさに、岐阜の白川郷そのものだった。


 その時と違うのは、雪があるかどうかだけだろう。


 どうしても、この風景だけを見ていると、ここが異世界だという事を忘れてしまいそうだ。



 視点を移してみる。


 やはり、自給自足中心の生活という事のとおり、家々の奥には畑が広がっており、そこで自分たちが食べるものを育てているようだ。


 そこには、見たことのない野菜だったり、薬の原料になるであろう葉なども育てられており、これが目に入ってしまうと、どうしても現実に引き戻される。



 確かに、元いた世界、日本に戻れたならば喜ぶことは間違いない。


 続きが気になるアニメや小説があったり、行ってみたい場所があったり。


 でも、その後に待ち受けているものは結局、平凡な生活だろう。


 そんな生活が本当に楽しいわけがない。


 異世界の冒険に勝るものなんて無いんだから、だからしっかり異世界を満喫しないとな、とふと考えてしまっていた。



 「おーいハルトー、こっちだぞー!」


 「ロードさんすいません。 ちょっとボーっとしてしまっていました。」


 「急に立ち止まるからどうしたのかと思っちゃったよ。 ギルドはもう少し村の奥にあるから、ちゃんとついてくるんだぞ。」


 「はいっ!」



 しばらく歩いたのち、僕たちは冒険者ギルドの前に到着した、のだが・・・。


 「えぇ!? こ、これが、これが冒険者ギルド・・・、す、凄すぎる・・・。」


 そう、冒険者ギルドの建物は、村の家々とは一回りも二回りも、いや、三回りも四回りも大きく、造りも全く違っていた。


 いうならば、中世ヨーロッパの館のような建物だ。


 全くもって周囲とのレベルが段違いに違うのだ。


 驚いていると、ロードさんが手招きしているのが見えた。


 「初めて見るやつはみんな同じ反応するなぁ。 さ、中に入るぞ、なぁに、そんな構える必要はないから心配するなって。」


 そんな事を言われても、こんなとてつもなく立派な建物なのだ。


 多少構えながら扉を開けるとそこは・・・。



 中は意外にも、普通のギルドという感じだった。


 カウンターがあったり、依頼ボードがあったり、食堂があったりと、建物を見る前に想像していたような、そんな普通の冒険者ギルドだったのだ。


 「中は普通なんですね。」


 「そうだなぁ、中は普通だが、ここの良い所は倉庫も広いし、2階は俺らギルド職員それぞれの宿の部屋になっていたりする点だな。 まあ、職員にとっちゃ凄いが、冒険者にとっちゃ普通なんだよなー。」


 そうだったのか。

 確かに2階もあったけれど、そういう事だったようだ。



 そうしていると、カウンターからロードさんに声が掛かる。


 「あー、ロードさんったら。 何ですか? 門の警備はどうしたんですか、またサボりですか??」


 「うっ、サボりとは人聞きが悪いじゃないか。 そうじゃないんだよ。 というか声が大きすぎる、みんな振り向いてるじゃねーか。」


 「あ、すいませんー、ついついー。」


 「ついついじゃないっての!」


 「テヘッ!」


 一体僕は、今目の前で何を見せられているんだろう。



 「あ、そうそう。 で、サボりじゃないなら何なんですか、ロードさん?」


 「おう、ちょっと用があってな。 この子が冒険者ギルドで冒険者登録したいんだと。 それで連れてきてあげたってわけなんだよ。」


 「あら、意外ですねー。 ロードさんがちゃんと仕事してたんですねー。」


 え、ロードさんって普段の仕事ぶり、一体どんななんだよ?

 そう疑問が浮かんだ瞬間だった。



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