12.コルト村
夜の警戒任務も無事に終わり、翌朝目を覚ました僕たち一行は、再び村を目指して歩みを開始した。
しばらく進んでいくと、遂に周囲の景色が開けてきた。
今まではずっと森が傍にあったので、こういった開けた景色を見るのは、異世界に来てから初めてだ。
「うわぁ! やっと森を抜けたんだね! 草原の中に花が所々に転々と咲いているだけでも綺麗だよ!」
意図せず口から言葉が漏れた。
しかもガッツリと。
でも、それほどまでに僕は感動していた。
今までは本当に進んでいるのかも分からないような、薄暗い森の中に閉じ込められていたようなものだから尚更だ。
感動しながら辺りを見渡しているうと、嬉しいお知らせが聞こえてきた。
「おいハルト、もう直ぐ村に着くぜ!! 後1時間も歩けば到着だ!」
マジか!! ようやく、ようやく待望の村に到着するぞ!!
「やったー!! ホント?カイト!! ようやく着くぞー!!」
思いっきりはしゃいでしまった。
でも、そのくらい嬉しいからしょうがないよね。
ここで、ふと思ったことをハシュードさんに聞いてみた。
「ところでハシュードさん、今から行く村って何て名前の村なんですか?」
「おっとそうだったね、伝えていなかったよね。 今から行く村の名前は、『コルト村』っていうところだよ。」
「へぇー、コルト村かぁー! 楽しみだなー!!」
「あ、でもハルトくん、あんまり期待しすぎちゃダメだよ。 というのも、コルト村自体は広いんだけどね、市場規模的にはかなり小さいんだ。 産業もあまりなく、基本的には自給自足の生活をしてしまっているから、貨幣の概念が中々浸透しなくて、物もそんなに売れないんだ。」
「え? そうなんですか!? でも、冒険者ギルドだってあるんですよね? それならば少しは栄えていそうな気がするんですが・・・。」
「ま、まぁそんなにあからさまに落ち込まないでくれ。 商業面では魅力は少ないが、流石に何もないわけじゃないんだ。 多少街もあるし、貨幣の流通だってある程度はあるからさ。」
「そうだぞ、ハルト。 確かに田舎だけど村は村だ。 それに、冒険者ギルドがあれば冒険者はおのずとやってくる。 そのために店や宿屋なんかもちゃんとあるからさ。」
「そうだよね! だって冒険者ギルドがあるもんね! 良かったー、農業だけやっているような、村というよりも集落レベルなのかと思っちゃって。」
「まあ、そこは俺の伝え方が悪かったかな。 ハルトくん、着く前からすまないね。 まあ、楽しみにしていてくれよ。」
「はいっ!!」
やがて、そのまましばらくワクワクしながら歩みを進めていると、何やら人工物が見えてきた。
門の役割を果たしているであろう木の柵の様なものだ。
その門には1人の衛兵が立っていた。
その衛兵はこちらの一行に気が付くと、駆け寄ってきたのだ。
え!? 一体何!?
突然の衛兵の行動に戸惑いを隠しきれない。
すると、その衛兵がハシュードさんに話しかけてきた。
「おい! ハシュード、ハシュードだよなっ! そうだよな! ハシュードに間違いないよな!!」
「何回も確認しなくても、俺はハシュードだ。 久しいな、ロード!!」
どうやらこの衛兵は、ロードという名前らしい。
最初は僕たちが何かやらかしたのかと思ったけれど、知り合いを見付けて駆け寄ってきただけの様だ。
それにしても、このロードという衛兵、門の守りを放棄してきてしまったが良いんだろうか?
これが日本ならば、同僚やら村人やら、どこかしらに監視の目が光っていて、後々上司の耳に入って叱られてしまうのであろうが・・・。
まあ取り敢えず、僕たち一行はコルト村の入り口に到着した事は、これで間違いないようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます