第16話 月夜の集会
月が高くなるにつれ、空き地にはぽつり、ぽつりと猫が集まってきた。
空き地の入り口で、コジロウはハチと並んで座っていた。
そして、猫が通るたびに「こちら、新入りでやんす」とハチが言い、その後に続けてコジロウが「コジロウですっ」と名乗った。
猫たちの反応はさまざまで、「おう」「よろしく」などと返してくれる者もいれば、ちらりと一瞥して行ってしまう者もいた。
中にはモーのようにいちいち上下関係を誇示しないと気が済まない輩もいるようだったが、廃車の上をちらりと伺い、そこにクロの姿があることを確認した途端に興味が失せたような顔をして行ってしまうのだった。
おそるおそる見回してみたが、例の「しっぽを噛み切る」と言った三毛猫の姿はないようで、コジロウはほっとした。
そして、顔見知りが一匹もいないことに気付き、たまらなく寂しくなった。
クロは相変わらず廃車の上にいたが、集まってくる猫を一匹一匹丁寧に眺め、各々が息災であることを確認しているようだった。
いつの間にかハチもコジロウの側を離れ、廃車の真下を陣取っている。
月明かりの中に浮かぶ二匹の姿は凛々しく、あるいは聡明に見えた。
ここは彼らが生きている土地であり、自分はよそ者なのだとコジロウは理解した。
風で揺れる草に紛れ、彼はそっと空き地を離れた。
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