† † いとしき訪問者 † †

「トゥインクル・トゥインクル・リトルスター……」


 夢見心地で歌う少女は、ネグリジェ姿でガラス窓に歩みよった。


 見上げれば、広がるのは満天の星空。

 その合間から一筋の星が流れる。


 誰かが言っていた。

 流星は、願い事を叶えるために空を走るのだと。


「私の願いを叶えて。今夜お見かけした、あの美しい方――ナイトレイ伯爵様に、もう一度お会いできますように」


 両手を組んで祈る。

 すると、窓の向こうで、ばさりと衣擦きぬずれの音がした。


 見れば、黒いトップハットをかぶり、マントを肩にかけた紳士が立っていた。


「星が願いを叶えてくれたわ!」


 感激して窓を大きく開けた少女は、おかしなことに気がついた。

 ここは二階だ。紳士は、窓の向こうの宙に浮いている。


「ど、どうやって?」


 戸惑っていると、マントが夜風にひるがえった。


 月明かりに照らされたのは、血をかぶったように赤黒い肌をした、怖ろしい顔つきの大男――。


「こんばんは。レディ?」

「きゃああああああっ」


 少女は、窓を締めようと手を伸ばした。

 それより早く、男は部屋に押し入ってきた。

 節のある手で口を押さえられた少女は、ベッドに転がされる。


「ん、んん!」


 少女は身じろいだが、男が手をかざすと目をうつろにして意識を手放した。


 それを見た男は、醜悪しゅうあくな顔をゆがめて笑う。


「そうだ、眠れ、罪人つみびとよ。すべては『』のために――」

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