第222話 女子たちとの再会


「お主の作る料理は美味いの~ 

 わらわの城のシェフより美味いぞ!」


「おうおう、そうだろ!そうだろ~~~!」

したり顔でミリアに言う。


「でしょ。アオ君の作る料理はどれも絶品でしょ!」


俺たちは召喚の犠牲になったイズモニアの人たちの埋葬を終え、森の中へ場所を移し食事にありついた。


「まぁ、これも女神様のスキルのおかげだけどな」


「お主らはどの神に呼ばれたんじゃ?」


「エッ? 神様は何人もいるのか?

あの女神さまだけじゃないのか?」


「おるぞ。 わらわの知っているだけでもオーロラ、サイレント、オメガ、フェニックス、グラヴィタスとか

 そして邪神と言われているアリーナというのもおる」


「沢山いるな! 何か有りがたくないな~

 特に名前は名乗っていなかったし、俺たちも聞くこと無かったからな~」


「他にもいると言われておるがな!

 まぁ、35人も召喚できるのは『名無しの女神』しかおらんと思うが。

 多くいる神の中でも『名無しの女神』は別格と言われておる。

 この世界、ハルフェルナを統治していると言われておる」


「あの女神様、名前が無いのか?」


「拙者らはそんなに凄い女神様に召喚されたでゴザルか!」


「そなたたちは良い女神に召喚されたのかもしれんな」


「凄い女神様なのは分かったけど、そんな凄い女神様や多くの神様がいる割には争いだらけなのだが、それは何故だ?」


「それは人間、魔族、獣人と入り乱れているからじゃないか?

 ついこの間まで俺たちの世界でも白人は黒人を奴隷、黄色人種を猿と思っていたからな。

 いや、今現在も白人は有色人種を見下しているだろ。

 俺たちの世界となんら変わらない。

 神が制御できないのかもしれないし、神様同士の対立もあるんじゃないか?

 だから争いは絶えないんじゃないかと思ってるけどな」


智弘のあきらめとも思える鋭いツッコミが入った。

そのとき!





ダダーン!

チュドーン!


いきなり森の奥で爆発音が聞こえた。


「何物かが魔法を放ったようじゃの!」

ミリアが立ち上がった。


「俺が先に行く! 何かあったら合図を送る」

智弘が飛空魔法で宙に舞い上がった。


「俺たちも行こう!」


食事そっちのけで爆発音の方へ走り出した。

ミリアも空を飛び全速で智弘の後を追った。

そして、爆発音があった辺りから上空にファイヤーボールが打ちあがった。


智弘の合図だ。

俺は全速力で智弘の元を目指した。


たどり着くとオークの集団、いや、軍団と女子が10数名ほどいた。

その中には見慣れた制服姿、見慣れたジャージの上下とトレーナーの女子がいた。

智弘とミリアはオークと女子たちの間に割って入り、智弘はマジカルなんちゃらを伸ばしオークの頭を突き刺し、ミリアはファイヤーボールを駆使してオークを焼き尽くしていた。


智弘たちに負けず5名ほどの女子たちも頑張ってオークと戦っていた。

背の高い女子は両手剣を持ちオークを斬りつけ、見慣れたジャージの女子は槍を投げオークを絶命させていた。

忍者姿のちっちゃいのはクナイをなげ応戦していた。

見慣れたトレーナーを着ている女の子は踊っていた。


戦っている女子の後方には何とか立っているという感じで6人ほど固まっていた。

後方にいる女の子たちは明らかに疲弊していた。



!!!



「お前たち!無事だったのか!!」

闘っている女の子達に声を掛けた。


「白田!」

「白田!」

「白田君!」

「白田!」


女の子達が俺の名前を連呼する。


やっちゃいますよ! 女子の声援さえあれば俺は頑張っちゃいますからね!!


「オ、オ、オーク!!」

将太がオークを見た瞬間、俺の後に隠れる。

やはり、コリレシアのオークとの戦いがトラウマになっている。

これは治ることは無いかもしれない。


マジカルランドセルからマシンガンを取り出しグレネードモードにして、後方にいるオークの集団目掛け1発、2発、おまけにもう1発。


ポーン、ガシャン! ポーン、ガシャン! ポーン、ガシャン!


チュドーン! ドドーン! ドーン!


2,30匹のオークが宙を舞う。


則之が女子とオークの間に割り込みバッサ!バッサ!と叩き切っていく。

一振りするたびにオークの遺体が出来上がっていく。

オークも剣で受けるが剣ごと真っ二つにされていく。

鎧なども役に立たず着ていなかったかのように切伏せられていった。

則之の通った後にはオークの死体の山が築き上げられていった。


「サンダーブレード!」

「サンダーライトニング!!」

「サンダーボルト!」


七海もありったけの魔法を唱え女子たちに近寄るオークを倒していく。



オークたちも敵わないとみたのか、一斉に撤退を始めた。



「井原!栗原! 大丈夫か? 他のみんなも大丈夫か?」


俺は駆け寄り声を掛けた。


「白田」

「白田」

「白田君」

女子たちは俺の名前を呼びながらゆっくり近づいてきた。


「うわ~~~~~ん! 白田ーーーー!」


一人の小柄な女子が飛びついてきた。


「お、おい、篠原!!」


忍者姿の篠原が飛びつくと、堰を切ったように栗原、井原、高沢も飛びついてきた。


俺にモテ期到来?・・・・というわけではなく、知っている顔を見ての安堵感がからである事は間違いない。


「怖かったよ~~」

「死ぬかと思ったーー」

「早く帰りたい」

「もういやだ~~」


「みんな大丈夫だよ。

 俺がついているからもう安心だ!

 大丈夫、大丈夫!」


女子たちを安心させるために、つい口から適当な言葉が出る。


「痛い! 痛い! 痛い!!」


俺のお尻は左右から抓られた。


後を見ると七海と将太がいた。



後方で固まっていた女子たちも、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。


「井原! これで女子全員か?」


井原はコクッと頷いた。

見知ったはずの女子の顔は数名足りなかった。


「数名足りないのだけど」


と再度、井原に尋ねると黙って頷いた。


「そうか」


としか答えることが出来なかった。


「男子は? 赤城は?」


「私たちを逃がすために囮になってくれた」


「安否は分かるか?」


「何人かは・・・・・亡くなったと思う」


「思う?」


「多分・・・・鶴岡や石原は真っ二つに斬られたから・・・・・

 他にも斬られた男子はいたから・・・・・」


「赤城はどうした?」


俺たちには赤城だけが希望なのだ。

勇者だけが魔王を封印できる。

フェルナンドを倒せる唯一の手段。


「分からないの・・・・」



「みんな、大丈夫だった」

七海が仲の良かった4人に声を掛ける。


「え?」

「え!?

「え!!!!」

「そ、その声・・・・・・」


一瞬、犬の仮面を付けた怪しげな女性から声をかけられて戸惑う。


「「「「紫音??」」」」


一斉に疑問系の声を上げる。


「紫音?」

栗原が信じられないような声を上げる。


「本当に紫音?」

高沢が尋ねる。


「そうよ、紫音よ」


「うそ・・・本当?」

篠原も理解できたのか、出来ていないのか?


「七海紫音です!」


「本当に紫音なのよね! 嘘じゃないわよね!!」

井原が確認するように尋ねた。


「本物の七海紫音です・・・・まだ、骸骨のままだけど」


「「「「うわ~~~」」」」

4人が七海に飛びすがり全員がワオンワオン大声を上げて泣いた。

その姿を見ながら俺はホッとした。

智弘たちは女になったと言っても中身は男だ。

仲の良かった女子と再会でき、これで寂しくは無いだろう。

相談する相手もいなかったから心細かっただろう。

俺は5人の側からそっと離れた。


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