第100話 飛空魔法


「さぁ~ みんな! 今日もレベル上げに励んでちゃっちゃと魔王をぶっ倒しに行くわよ~~~」


昨日の砦の跡地に置いた巨大なアイスボールは溶け、今や湖になっている。

が、予想より水が少ない。

気温の高さと乾燥による土の保水力の低下で水は半分くらいしか無い。


「これは、今日も私の出番ね!」


心を研ぎ澄まし呪文を唱える。


「アイスボール!!」


氷の塊は頭上に掲げた手の上で100m、150mと大きくなる。

そして、200mサイズになったとき魔力の供給を遮断する。


「良し出来た! ちょうどいいサイズ」


と言って湖に投げ込む。


「茜、ちょっと待て!!」


ドップ~~~ン!!


湖の水が津波のように溢れ出し流された。


「うわ~~~」

「キャ~~」


茜は一人飛空魔法で空に逃げるのであった。


幸いも流されたと言っても100mも流されたわけでは無い。

10mかそこらだった。

が、王子を含め全員がびしょ濡れになってしまった。


加奈は濡れた顔を脱ぎ払い怒鳴った。


「茜ーーーーーーー!!降りてきて正座!!」


すごすご降りてきて大人しく正座する茜であった。


「茜、少しは考えろ!! あれだけ巨大な物を水に投げ込めばどうなるか分かっているだろ!!」


「は、はい。ごめんなさい」


肩をすぼめて茜は答える。

周りではみんなブーブー言っている。


こんな脳筋娘なのだが実は茜は学年トップクラスの成績なのである。

勉強の仕方も脳筋娘に相応しい力押し。

記憶力が人一倍優れており、タフな体を使って徹夜で一夜漬けをする力技なのだ。

しかも、このタフさが半端ではない。

三日徹夜が出来るタフさなのだ。

そして、試験が終わると事切れ、毎回、碧におんぶして貰って家に帰るのが茜の試験必勝法であった。


「じゃ、お詫びに風魔法でみんなを乾かすから」


「いや、ダメだ!! 茜がやると誰かがどこか遠くへ飛んでいきそうだから、私と理沙で乾かす!!」


「あ、はい」


と一段としょげる茜であった。




濡れた服を乾かし終え


「昨日の続きのレベリングをしましょう」

今日はアルファ王子にお付の騎士が2人加わっていた。


加奈はお付きが付いた理由を。

茜だよね。茜が雑な事をするからマストンさん辺りが付き人を仕込んだのだろうと。


「今日は砦の奥に森があるので、そこへ行ってみましょう。コボルトやゴブリンなどがいるので戦闘の練習になると思います」



アルファたち騎士が馬で先頭を行き、学生たちは馬車に揺られながら後に続いた。


「う~~ん、お尻が痛~~~い!」


「茜!我慢しなさい」


「茜ちゃん、もうすぐよ」


「う~~ん、痛い、痛い」


?!!!!


閃いた。


飛空魔法で浮いていればいいんだ!!

私、天才!!


「Sky high」


と魔法を唱え馬車の中で座った格好で座面から5cmほど浮いた。


「白田、お前、魔法の無駄使いだな」


「でも、、いいアイデアだ」


「俺も飛空魔法が使えたらな」

織田、藤吉、明石が言った。


こいつらと理沙が女神様との会話を聞いて横から職業を取ったせいで私は無職になってしまったのだ。許せん!!

いつの日か、こいつらはまとめてお仕置きだな!!

と、茜は悪い笑みを浮かべた。


一人苦悶の表情を浮かべている少年がいた。


「平内、どうしたの苦しそうな顔をして」

茜が聞く。


「あ、うん、うん、別に な、なんでもない」


平内はあまり目立つのを好のまず大人しい性格をしている。


「無理するな、回復魔法かけてあげようか?」


「回復魔法ではなんともならないと思う・・・・・・・痛い」


「ヒール」


「あ、ありがとう。白田さん・・・・・でも、痛い」


「え?治らないの? 詩織もヒールかけてみて」


「分かった、ヒール。   どう?」


「早川さん、ありがとう・・・・でも、治らない」


「え、詩織でもダメなの?」


「痛い、痛い、あーーーーもうダメ」

と言って平内はorz姿勢でお尻を押さえた。


「ど、どうしたんだ? 平内!!」

茜はいきなり変な格好をしたからいっそう驚いた。


「わ、わ、わ、笑わないで欲しいんだけど・・・・・・僕、痔なんだ」


男子はブワハハハハハ と

女子はへ?という顔をするかクスクスクスと笑う。


「みんな笑わないでくれよ。本当に痛いんだから!!」


「悪い悪い。笑って悪かったね、平内、じゃ、こうする?」


と言って茜は座っている平内の手を取り引っ張り上げ自分が座る格好そして魔法で宙に浮くと膝に平内を座らせた。


「え?!ちょ、ちょ、ちょっと」」


「これならお尻、痛くないんじゃない?」


「い、い、いいよ、僕、降りる」


「ダメ、痛いんでしょ。ヒールで治せないのだから仕方ないでしょ」


と、平内が動けないように茜が腰を抑える。


「茜ちゃんは優しいのよね~」


「ひゅ~~ひゅ~~ひゅ~~ いいな~~、次は俺を膝抱っこしてくれよ」


「織田! お前は死ぬほどこき使ってやるからな!」



と茜は宣言した。

数日後、織田は調子にのって余計なことを言ったと後悔する事になる。




しばらく馬車で走ると森に着いた。


平内は真っ赤な顔をしていた。


「帰りも膝の上に乗せてあげるから大丈夫だよ」


より真っ赤な顔をした平内がいた。

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