第94話 ファイヤーボール
城下を出ると草原地帯が広がっている。
が、気温のせいか草木は緑ではなく黄色く半分枯れかかっている。
「昔はあたり一面緑豊かな牧草地だったそうです」
とアルファが呟く。
「これもイフリートのせいなのね」
黙ってアルファは頷いた。
「この辺りなら初心者向けのモンスターが出てきます」
「お~~し、お前ら狩りだぞ!!」
茜が拳を天に突き上げる。
「茜ちゃん・・・・・盗賊のお頭みたい」
「後に伝承に『茜と10人の盗賊たち』とか言われないようにしないと」
「加奈、酷い事を言うな~」
「その人数だと私も仲間に入れてもらえそうですね」
とニッコリ笑い答えた。
「あっ、王子様、失礼いたしました。9人に変更させて頂きます」
「いえいえ、私も『茜盗賊団』に入れてくださいよ。ハハハハハ」
当初は茜にいきなりチャームの呪文を掛けてくるいけ好かない王子と思っていたが接してみるとなかなかの好青年ってヤツ?
と思う加奈であった。
アルファが携帯していた荷物の中から子袋を取り出し30mほど先へ投げた。
「今のはモンスターを誘き寄せるめの匂い袋です。
こうすれば魔物たちが集まってきます」
「王子様、私が全部倒しちゃっても問題ないの?」
「異世界から同時に召喚された方々は誰が倒しても全員のレベルが上がる恩恵があるそうです。
魔物討伐の訓練にはなりませんが、みなさんのレベルが少し上がるまでは茜様が倒した方が良いかもしれません」
「なるほど。みんな、と言うわけだから私の戦い方を良く見ておくように!」
と腰に手をやり意味無く胸を張る茜だった。
しばらくしてスライムがぞろぞろ現れた。
辺り一面、赤、青、緑、黄色と100匹は優にいそうだ。
「これは予想外に集まってしまいました」
「全部、ブッ倒せばいいんでしょ」
茜はスライムに駆け寄り必殺の
「アイアンクロー」
と叫びブチ噛ました瞬間
「茜様、素手は危険です。手が溶けてしまいます」
「エッ?」
王子が忠告するよりも早くスライムを握りつぶした茜であった。
「茜様、手は大丈夫ですか?」
「うん、今のところなんともないけど・・・・・素手じゃダメだったの?」
もちろん、茜は腐食耐性や酸化耐性などもMAXなのでダメージは一つも入らない。
「スライムは何でも溶かすので人体で触れるのは危険です。剣か魔法で倒してください」
「茜はもう人間じゃないのかも・・・・」
とポツリいう加奈であった。
「なんか面倒ね。 どっこいしょ」
と言って背中からタナの剣を取り出し一匹一匹、刺して歩いた。
5分ほどスライムを刺し続け歩いただろうか。
「飽きた!!、もう、飽きた!! 面倒!! 魔法で焼き尽くす!」
茜は初級の火炎攻撃魔法・ファイヤーボールを唱えた。
手の平に火球をイメージした。
イメージした。
イメージした。
イメージした。
手の平のファイヤーボールは大きく大きく大きくなり、ついには人間よりも遥かに巨大な火の玉が出来上がってしまった。
「おい、茜・・・・・」
「茜ちゃん・・・・・」
「あ~~~これどうするの? どうすればいいの?? 大きすぎる気がするんだけど」
と茜はパニックになった。
「茜様、危険です。向こうにある砦に投げてください。無人なので大丈夫です」
と言ってアルファは北にある寂れた砦を指差した。
言われたとおり茜は砦のほうへ巨大すぎるファイヤーボールを投げつけた。
真っ赤な巨大な火球は轟音を轟かせながら寂れた砦に激突した。
ズゴーーーーーーン
砦に命中すると巨大な火柱を上げ一瞬にして消え去った。
辺りには、
ゴーーーーン!
ゴーーーーーーン!!
ゴーーーーーーーーン!!!
と爆発した音が木霊する。
おびただしい砂埃が舞い降り、強烈な熱風が到達する。
クラスメイトの何人か熱風で吹き飛ばされ転がっていった。
加奈は詩織の手を引っ張り茜を楯にして熱風から身を守った。
吹き飛ばされたクラスメイトはその場に座り込みガタガタと震えだした。
砂埃が消えた後、砦は跡形も無くすっ飛び、砦があったと思われるところに半径500mほどの巨大な穴が出来ていた。
「茜ちゃん・・・・・・・」
「アカネーーーーーーーーーーーー!! 正座!!」
加奈が大激怒して茜に命令をした。
茜はシュンとしながら正座をすると加奈は茜を指差しながら怒鳴りまくった。
「茜は何で昔から加減が出来ないのよ! もう少し考えなさいよ。
あそこに人がいたらどうするの!!
何で、そんなにガサツなの!!
何であんな巨力な魔法をいきなり撃つの!!
王子様の機転が無かったら私たち死んでいたじゃないの!
碧さんを助けるために来たのに死んだらどうするの!
碧さんが見たらなんて言うか!!」
「ご、ごめんなさい・・・・・・初級の呪文を使ったはずなんだけど・・・・」」
どんどん落ち込んでいく茜であった。
「加奈ちゃん、そんなに言わなくても茜ちゃんが可愛そうよ」
「何言ってるの!詩織!! 茜にはこれくら言っておかないと分からないでしょ!!
茜! 茜は魔法禁止!!」
「えーーーー!」
「えーーじゃないの、えーーー じゃ!!
魔王を封印する前に私たちが永遠に封印される事になるわ!!
返事は!!」
「は・・・・い」
「声が小さい!!返事は!」
「はい!」
としっかりした声で返答する茜であった。
「加奈殿、もうそこまでに・・・・・」
見かねたアルファが助け舟を出してくれた。
茜様を手なずける加奈殿はきっと大物になると確信するアルファだった。
アッ!!
クラスメイトたちが一斉に声を上げた。
どうやらレベルが上がったようだ。
「おおお、すげ~レベルが7上がったぞ」
「俺は5しか上がってない。勇者は上がりにくいのか」
「私は10上がってる」
「・・・・・私は上がってない。なんで、私だけ上がらないのよ!!」
正座しながら茜は憤慨しているが・・・
「お前はもう上がっても意味ないだろう」
「レベルとか以前の問題だろ」
「お前、レベルとか関係ないから」
とクラスメイトたちは思っていた。
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