第63話 調理という名の戦い


俺がナミラーの市場で昼食・夕食用の山のような食材の買出しをしているとネーナさんがやって来た。


「碧さん、騎士団の皆さんの食料代は商業ギルドで用意しますので今後は商業ギルドに言って下さい。

 すぐに用意しておきます。

 今日の分は後ほど請求してください。

 碧さん、ありがとうございます。ナミラーのために旅立ちをずらしてくださって。

 仮面の魔道師の討伐といい、今回のガルメニアの件といい碧さんのパーティに助けられっぱなしです。

ありがとうございます」


と深く頭を下げてくれた。

ナミラーはハルフェルナの交通の要所でオリタリアの利益に3分の1はナミラーが稼ぎ出しているといわれるくらい旅や交易で最も重要な都市の一つなのだ。

オリタリアとしてもナミラーは是が非でも守りたい町だろう。

ハルフェルナの魔族側の地図を含めた物は見たことは無いが人類側の地図を見るとほぼ真ん中に位置する都市だ。

ナミラーからは西のワイハルト帝国、南のガルメニア王国、東のイズモニア皇国へ繋がる街道の出発地でもある。

ハルフェルナ一の商業都市と思われる。

ナミラーを抑えるという事は経済と交通を抑えるというのと同義語だ。



フェルナンド王も最初からナミラーを狙っていたのでは無いだろうか?

イズモニアこそがオトリ?

ナミラーが本命か?

イズモニアを侵略した目的は何なのだろうか?

ダイワやサンジョウはうま味のある土地なのだろうか?

ワレトラマンやズガーンダムでの侵攻作戦って破壊しかできないんじゃないか?

ナミラー侵攻作戦は自前のガルメニア軍を使った。しかも、徹底した破壊を意図していないという事はナミラーは出来る限り破壊したくは無いのだろうな。

すると本命はナミラーなのか?

・・・・・どちらにしろ、あのクソ王の目的は世界征服だろうな。

こういう難しい事は智弘に考えてもらって俺は料理を作る事にしよう。



俺の料理スキルのひとつに

『とても便利なキッチンセットでレシピ通り、白田 碧が作った料理を食べると食べた者は一定時間ステータスが上がる。

どのステータスが上がるか、上がる量は料理によって異なる』

というのがあるのだが今俺が覚えたレシピは


豚汁        耐冷+20  

味噌汁・スープ   耐冷+20  

そば・うどん    耐熱+20 or 耐冷+20 


サラダ       俊敏+10  

野菜炒め      俊敏+10


炒飯        防御力+20 

八宝菜       防御力+20  

酢豚        防御力+20 

餃子&シュウマイ  防御力+20


肉じゃが      魔力+20 

から揚げ      魔力+20  


ハンバーグ     攻撃力+20   

牛丼・カツ丼    攻撃力+20 

ステーキor焼肉   攻撃力+20


カレー       体力+20【回復】

パスタ       体力+20【回復】

焼きソバ      体力+20


刺身        HP+20  

サバの味噌煮  HP+20


素早さに関する物以外、アップ率は20。

そば、うどんは温かい掛け蕎麦か冷たいざる蕎麦によって耐冷・耐熱が変わる。

汁物を見ると温かい物は耐冷が上がるようだ。

中華系は防御力、和食という分類には少なすぎるが魔力が上がり。肉を使った料理は攻撃力。

洋食、これも少ないが体力が上がる。

魚を使った料理はHPが上がるようだ。

が、ナミラーは内陸にあるので魚は手に入りにくい。

これから戦火が広がれば広がるほど入りにくくなってくるだろう。

残念ながらMPが上がる料理は今のところ無い。

そして、ステータスがアップしている時間は信頼関係が確立されていない人でだいたい8時間くらいだった。

パーティーメンバーは12~16時間ほどステータスが上がっているようだった。


今後、追加される料理に期待をしよう。


この中で外せないのは体力、防御力、攻撃力、HP。

が、HPは魚を消費するので少々難しい。

八宝菜か酢豚で防御力を上げ、焼肉で攻撃力を補い、カレーかパスタで体力&回復効果を期待しよう。

餃子やシュウマイ、ハンバーグなど加工が必要な物は極力外し中華鍋で一気に調理できる物に絞る事にした。

10人20人なら手間隙の掛かる料理を作っても良いが騎士団と冒険者の分で500名近い調理をしなくてはいけない。

食材を切るのは手伝ってもらっても調理は俺がしないとステータスが上がらないのだ。

出来る限り手間を減らしたい。

ネーナさんにお願いして食材を切る人を回してもらうことにしよう。




駐屯地でみんなと合流する。

早速、地獄のような調理大会が始った。

とりあえず昼はパスタと焼肉、サラダにしようと思う。

ついこの間、カレーのルーに続き麺類を異世界から取り寄せられる事になったので味見を兼ねてカレーではなくパスタを作る事にした。

そこへネーナさんがお手伝いを10人引きつれ魔道コンロを3台持ってきてくれた。

アレックスさんも家の者を数人連れて来てくれた。


「アレックスさん、ありがとうございます」


「私もお手伝いをしますので何でも言ってください」


昨日のお嬢様ルックとは違い髪の毛を結わきポニーテールのようにしている。

服も作業着を着ている。

学術ギルドで発掘作業などしているだけあって『深窓の令嬢』とは違うようだ。


「助かります。

 ネーナさん、ありがとうございます。

 石釜しか持っていないので魔道コンロはありがたいですよ。

 火力も安定しているし調理が捗りますよ」


「魔道コンロはそのままお使いください。商業ギルドからプレゼントです」


「えっ、3台もですか?我々はセキジョー・ダンジョンへ行かなくてはいけないので他の誰かが調理を引き継ぐのでその方に使ってもらうべきです。

 有りがたいお話しですが受け取るわけには行きませんよ」


「遠慮深いのですね」


「ええ、それが日本人の美徳と言われていますから」


「私も日本へ行ってみたいですわ。どんな世界なのですか?」


「俺たちの世界は大なり小なり戦争や争いは絶えないのですが日本は表面上は平和な国ですよ。

 人を殺しあったりするような戦争は無いですけど経済で戦争をしていますね」


「経済でですか」


「ネーナさんのような若くて美しく辣腕の政治家がいたら日本は全戦全勝でしょうけどね。永遠の繁栄を築けるかもしれませんね」


「どこかが儲かればどこかで損失が出るのが経済の基本原則ですからね。私には荷が重いですわ」


「おっと、おしゃべりはこれくらいにして手を動かさないと昼ごはんが遅れてしまう」


と、俺は2時間かけ、みんながカットしてくれた肉を焼き、ペペロンチーノ500人分を用意した。


疲れた、とにかく疲れた。

寸胴は良いとして中華鍋が小さいし一つしか無いので肉を焼くのに時間が掛かってしまう。

バフが掛かるのは俺が作って『とても便利なキッチンセット』を使ったときというのが致命的な弱点だ。

まさか女神様も500人分の料理を作る事になるとは予想していなかっただろう・・・・・



その時!!


来たーーーー!!

『超特大・焼きたいときだけ素早く焼けて普通は熱を通さない頑丈なタナニウム・プレート』

『投げれば戻ってくる超特大中華鍋取って付き』

『伸縮自在・調理時間半分以下・この世界に1台しか無い3口魔法の魔道コンロ×4』


すげーーースゲーーー!!

女神様、凄すぎ!

日本語がおかしかったり、訳が分からなかったり色々ツッコミどころ満載なアイテム達だが、今必要なものを必要なタイミング贈ってくれるなんて!


やはり俺の敬愛する女神様だ。


PS 私もネーナさんに負けられませんので奮発しました。


と手紙が入っていた。


ありがとうございます。女神様。

愛しています。最高です。素敵です!!




「女神様、茜ちゃんと勇者・茜様の関係を教えてください」


俺は空に向かって問うたが答えは返ってこなかった。

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