第62話 下卑た男達


ワレトラマンがガルメニアの新拠点・旧イズモニア領サンジョウに帰ってきた。

おっ、変身が解ける。

素っ裸か。本当、難儀なヤツだ。

以前はすぐに服を着ていたのに、今はしばらくマッパ状態でいる。

変な性癖にでも目覚めたのか?

いや、違うな。

ワレトラマンになってガルメニアによる世界統一の一助として自信をつけたのだろう。

俺も鈴木も山中も目立つような生徒では無い。

いや、山中は嫌われ者の変人だが。

普通の高校生がこんなにも強大な力を手に要れ世界変革の中心にいるのだから自信もつくだろう。


「今日も作戦、ご苦労。鈴木」

「お疲れ、鈴木」


鈴木は下半身を隠しもしないで俺と山中のところへ歩いてきた。


「今日も予定通り任務をこなしてきたぞ。異常は無かった」


鈴木・ワレトラマンの任務はサンジョウからダイワを超え、次の攻略地アナミを含む小さな町の破壊活動だ。

マッハ3で地面すれすれを飛ぶ。

マッハで飛ぶ衝撃波が地面、町を破壊する。

住民は一瞬のことで何が何なのか分からず恐怖に襲われるだろう。

正体不明の恐怖ほど恐ろしいものは無い。

噂が噂を呼び恐怖が流布する。

ワレトラマンが飛び去った後には死と恐怖だけが残される。


「山中、鈴木、アナミへの侵攻作戦は何時になるのか聞いているか?」


「俺は聞いていない。山中は?」


「俺も聞いていない。俺はセキジョーのダンジョンへ行って現代世界へ戻れるゲートと勇者・茜の銃を調査に行ってくる」


「お、例のゲートか。俺も行きたいがズガーンダムでは中に入れないからな」


「俺はしばらくアナミとの往復作戦があるからな。調査の方、頼むよ」


「俺の部隊ならダンジョン内へ入るのも問題ないからな」

と言って山中は自分の背後に控えるコリレシアの軍人に目をやった。


「ハルフェルナの人では気がつかないことでも俺たちなら新しい発見があるかもしれないからな。

 丁寧に調査してくるよ。特にゲートを。

 と言っても、お前たち日本に帰る気はあるか? 俺は無いけどな」


「日本に戻ってもワレトラマンに変身できるなら戻ってもいいけどな」


「俺も戻る気は無いな。ズガーンダムを日本に持って帰れたとしても没収されるのがオチだしな。

 ここの生活も悪くないからな」


「イズモニア攻略戦が成功したら俺たちは栄えあるガルメニア男爵様だからな。ハハハハハ。星野男爵、山中男爵」


「そうですな。鈴木男爵。そのために我がズガーンダムに活躍してもらわないといけませんな」

星野はカイゼル髭などないのに髭を引っ張り離す仕草をした。


「鈴木は攻略成功の暁にはイズモニアのダイグウの領主さまだろ」


「星野、お前だってイズモニアのアナミの領主さまではございませんか」


「山中は女子を貰うんだろ。そんなのより領地の方が良かったじゃないか?」


「いずれクリムゾン魔国の領地は貰いたいと思っているが、さきに高沢と井原を貰っておこうかと思っている」

 

「高沢は可愛い子だから分かるが井原はうるさくて可愛げのない女じゃないか」


「鈴木、分かってないな~ 井原のような高飛車な女を屈服させ調教するのが奴隷調教の醍醐味だぞ。

 あのレオタードのようなボディースーツ、最高だろ! 性格はキツイがいい体しているからな。

 毎晩、可愛がってやるよ」

山中は下卑た笑いを浮かべながら話す。


「山中、お前、ゲスイな~ ハハハハ。でも、あのスーツはエロ過ぎだよな。俺もクラスメイトの女子を手柄に貰おうかな」


「星野! お前もゲスイぞ。 俺も井原を見てハァハァしてるけどな。ハハハハ」

男達の下品な笑いが響く。


「俺は七海が欲しかったな~ あの美少女を好きなように出来たら死んでも良いかもな!」


「鈴木の気持ち分かる分かる。俺も七海がいたら真っ先に貰っているよ。毎晩、あの胸に顔を埋めているな」


「七海は惜しい事をしたな。本来なら緑山じゃなくて七海が聖女だろ。何、聖女を選んでるんだよ!」


「分かる分かる。俺も七海こそ聖女になるべきだよな。それがリッチだなんて」


「まぁ、死んじまったものは仕方がない。俺は井原の胸で我慢するさ」


「山中、いいな~ 俺にも井原の胸を揉ませろよ」


「鈴木、高くつくぞ。ハハハハハ」


「いくらでも払うから俺にも揉ませろよ。ハハハハハ」


3人はくだらない事を言って笑いあった。


「では、俺はこれからセキジョー・ダンジョンへ調査に行って来る。後はよろしく頼む」

と敬礼をして見せた。


「気をつけて行ってくれ」

「気をつけてな」

星野、鈴木も敬礼で返答するのであった。







単純な鈴木と星野が見送りの言葉をかけてくれる。

思いのほか井原の体は役に立ったな。

奴らは単純すぎるな俺の真意に一切気が付いていないようだ。

俺の本命は井原では無い高沢の踊り子の能力だ。

戦闘系のスキルは何一つ持っていないが味方の士気を上げたり能力を上げたり意外と有能なバフ・プレイヤーなのだ。

高沢がいればコリレシア軍を強化できる。

人数が多ければ多いほど一回のバフで強化される。

俺のコリレシア軍損失を少しでも防ぐのに必須なのだ。

本来なら聖女の方が色々と能力は高いのだろうが仕方が無い。

緑山を貰っても男色家と見られるのがオチだからな。

まぁ、その緑山もどこで何をしているのか?


そして、領地などではなく女、しかもクラスメイトを要求すれば俺がただの好色家にしか見えないだろう。

領地など後から貰っても問題ないからな。

色々と目を欺くのにも有効な選択だ。

お前ら物事の裏を少しだけ考えろよ。


戦いだけ考えてドンパチしていれば良いと言うものでは無い。

この世界では生き残れないぞ。







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「皇王さま。我が国クリムゾン魔国へどうかお逃げください。

 我が国は皇王さまを歓迎いたします」


一人の若い銀髪のオールバックの男がイズモニア皇王・ダニアスの前で片膝をつき頭をたれている。


「伯爵、王が国民を見捨てて逃げるわけにはいかんのでな。国と共に滅びるのも王家の勤め」

皇王はもう60を優に超え顔には数多くのシワ、頭髪は白髪であり誰がどう見ても先はあまり長くない老人にしか見えない。


「しかし、皇王さま・・・・・・」


「伯爵、セキジョー・ダンジョンのゲートを使えれば魔国まで簡単にいくことが出来るのだがガルメニアの勢力下に置かれてしまったから簡単にはクリムゾン魔国にも行くことも叶わないだろうて。

 まさかガルメニアが侵攻して来るとは思わなかった。

 どうやらすべてがガルメニアの後手に回ってしまったようだな。

 ワシより伯爵が魔国に戻るのが大変になってしまって申し仕分けない」


「私は飛んで帰る事が出来ますので闇に紛れて飛び続ければ普通の者より早く国へ帰れますので」


「伯爵のおかげで良い会談が出来た。伯爵のような有能な者を使者として送ってくれた紅姫べにひめ殿には宜しく伝えてくれ」


「皇王さま、今一度我が国への亡命をお考えください」


「いや、それはならんのじゃ。民を見捨てて王だけが逃げることなどあってはならないのじゃ」


「左様でございますか・・・・・・・」


皇王と伯爵の間に静かな沈黙が訪れる。


「皇王さま、お世話になりました。私はセキジョー・ダンジョンへ行ってゲートを破壊した後、我が国へと帰ります」


「ロゼ様のご加護がありますように」

と皇王・ダニアスは伯爵へ手をかざした。


そして、伯爵と呼ばれた男はセキジョー・ダンジョンへ一人向かった。

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