第61話 姫騎士


「うわ~~~~~」


翌朝、トイレの方から聞こえる声で起こされた。


「おい、どうした。誰だ?」


「我輩でゴザルよ。お漏らししてしまったでゴザル」


則之の方へ向かいながら


「何寝ぼけ て  る  ん   だ   よ」


トイレには金髪の長い髪の大女がいた!


誰?・・・・・・って、則之だよな。


「の、の、の り ゆき だよな」


「そうでゴザルよ。漏れそうなので慌ててトイレに入ったら・・・・・無くなっていたでゴザルよ。

しかも、放尿の仕方が分からず・・・・・・漏らしてしまったでゴザル」


高校生にもなってお漏らしはショック大きいよな。

則之は大きな体を小さくしてしょげていた。


「黒木君、私が片付けておくから水浴びしちゃったら」


優しい、七海は優しい子だ。

今は女の体になってはいるがクラスメイト男子のおそその始末をするなんて・・・・・

俺もお漏らししてみようかな?



「七海殿、申し訳なかったゴザル。お手数をおかけしたでゴザル。

 金髪の長髪でゴザルよ。何だか典型的な不良でござるな」

水浴びした則之が戻ってきた。


ちょっと赤い顔をしているのが可愛い則之であった。


「則之、お前、意外と美人だぞ。メスゴリラになると思っていたからなぁ~ うんうん、イケルイケル。

 金髪のロングヘアも似合ってるぞ。俺好みだ。ハハハハハ」


「アオ君、何がイケルの!! 今は美人になっても中身はノリ君なんだからね!」


「な、なに、怒ってるんだよ」


「則之、お前のおぱーいどうなった?気持ち悪いおぱーいから普通のおぱーいに戻った?

 俺のおぱーいは膨らみそうにないな」

とガッカリしながら智弘が言う。


「普通のに戻ったでゴザルよ」


「マジか!、則之、見せろよ!!」


と則之に飛びかかろうとしたとき七海の手が稲光を帯びた。


「はい、はい、嘘ですよ~~冗談ですからね~七海さん。そんなことしませんからね~~~~」


あ~~怖い。加減して撃ってくれるのだがサンダーボルトのビリビリ感は気持ちの良いものでは無い。

則之は晴れて姫騎士になったのだ・・・・・・

だけど、姫騎士って何なの?

お姫様の騎士かお姫様に仕える騎士を『姫騎士』って呼ぶんだよな。

普通、聖騎士だよな。

それとも何か凄い特性が何れ発揮されるとか?

女神様のセンスがよく分からない。



「女体化の数値は幾つだった?」


「昨夜の時点で40でゴザル」


「40が一つのラインかもしれないな」


「僕、今34だ。40で聖女になれればいいんだけれど・・・・・早く成れたらみんなの役に立てると思う」


将太も完全に覚悟を決めたようで聖女になる事を望んでいた。

いつも『男らしくなりたい』『軟弱なのが恥ずかしい』とか言っていたのに。



「則之、スキルや魔法はどうなった?」

智弘が聞くと


「スキルは剣術、楯術、弓術、槍術、攻撃力強化が解放されたでゴザル。

 魔法はヒールとハイヒールが使えるようになったでゴザル」


「あぁ~~~僕どうしよう。ノリ君までハイヒールが使えるようになっちゃって・・・・・・

 僕、いらない子だよね」


止めろ、止めてくれ、将太。すがるような目で俺を見ないでくれ。


「そんなことは無い。俺は将太にヒールを掛けてもらいたいぞ!」








俺たちは朝食を取り騎士団の駐屯地へ向かいヘルムートさんと今後の事に付いて相談することにした。

駐屯地はちょっとした砦のようになっていて真ん中辺りに騎士団長の詰所があった。


「よく来てくれた。協力してもらえるのだろうか?」


「我々はイズモニアのセキジョー・ダンジョンへ行って確かめなくてはいけないことがありまして依頼の件ですがお受けすることは難しくなりました」


「待ってくれ。数日。オリタリアから援軍が来る事になっている。1週間もしないうちに到着するはずだ。

 それまでの間でいい。頼む。異世界からの勇者達よ」


と言ってヘルムートさんは深く深く頭を下げた。


「ヘルムートさん頭を上げてください。騎士団長が俺たちみたいなガキにそんなに頭を下げるのはマズイですよ」

俺は慌てて頭を下げるのを止めてもらおうとした。


「部下が一人でも救われるのなら頭の一つ二つ下げる事は惜しくもない」


ヘルムートさんは頭を下げる姿勢を崩そうとはしなかった。


町の騎士団長、しかも俺たちより年上の人に頭を下げられ微動だにしない。

これはある種の脅迫なのかもしれない。


「分かりました。分かりました。援軍が来るまでここにいますから。 

 なぁ~みんな、いいだろう? ヘルムートさんに頭を下げられたら断る事は出来ないだろ」


「碧がそう言うのなら異論は無い。援軍が来るまでナミラーにいよう」

「碧殿がそういうのなら我輩も異論はないでゴザル」

「良かった。これでナミラーの人たちの役に立てる」

「私も白田君がそう言うのなら構いませんよ」




早速、昼食用の食材を調達しにナミラーの町へ戻った。

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