第60話 何れ戦うであろうクラスメイト


智弘、将太が戻ってきたのでナミラーの町へ戻る事にした。

アレックスさんが教えてくれた『白田 碧先生』の話とヘルムートさんからの依頼を相談した。


「なぁ~碧。イズモニアへ行こう。 勇者・茜様と茜さまの関係をハッキリさせた方がいいと思う。

それが残酷な結果をもたらすとしても確かめない訳にはいかない。

そして、ゲートの件もあるし」


「あまりにも偶然が重なりすぎるよな。何れにしろ確かめない訳にはいかないな。

 が、ヘルムートさんの依頼はどうする?」


「それは受けないでも良いと思う。俺たちには関係ないだろ」


「とは言うが、この町が無残に襲われるのは心が痛む。相手がガルメニアならなお更だ」


「僕は反対。この町の人たちを放っておいては・・・・・・・」


「我輩は碧殿の事を考えると早くイズモニアへ行くべきだと思うでゴザルよ」


「私も白田君の事を思うと早くイズモニアへ行くべきだと思う。でも、この町の事を考えると・・・・・・」


「俺たちがここに残るという事はガルメニアとまた戦うと言うことだ。人殺しをする覚悟があるか?」


「智弘、頼まれてるのは主に俺の料理スキルだ。戦闘には極力不参加にさせてもらうよ」


「う~~~ん、そう言っても大なり小なり巻き込まれるぞ。

特に碧は七海が人殺しをするのを嫌っているだろ。

俺たちの中で最大火力を持つのは七海だ。

必ず七海に助けを求める事になる」

幼女が腕組みをしながら思案する。


「そうだな」

七海の事を思うと智弘の意見を否定することが出来なかった。

もう、七海に苦しい思いはさせたくは無い。

これ以上、人殺しはさせたくない。


「白田君、私は平気よ。なんなら今すぐルホストの町へ行って最大火力の魔法を撃ち込んできても構わないわよ。

いつも、白田君にばかり辛い思いをさせるの嫌だし、さっきだって緑山君が斬られたとき殺意に狩られたもん。

白田君がやってなかったら私があの騎士を殺していた。

だから私の事は心配しないで。

みんなのためだったら人に対して魔法を打ち込むことに躊躇しません!! 」


「うわ~過激だな~ 七海」


「今すぐ行きましょう魔法を打ち込みに行きましょう」


「おいおい、七海、お前らしくない過激な発言だな」


「そうだよ。七海さんらしくないよ」


智弘と将太が驚く。


「白田君の事を考えると早くイズモニアへ行くべきだと思うの。

 だとしたら懸案になっているルホストの事を早く終わらせた方が良いんじゃないかなって」


「フェルナンドに一泡吹かせてやりたい気持ちもあるけどな。それにしても、七海、過激すぎるよ」


と俺が言い終えると


「いつまでもナミラーにいるのは反対だ。明日、騎士団長に会って妥協点を探ろう」


智弘の言うとおり、いつまでもナミラーにいるわけには行かない。

妥当な判断なのだろう。







歩きながら気になったことがあったので智弘に尋ねた。


「なぜ、ガルメニアが撤退するのが分かったんだ?」


「あぁ、あれか、ガルメニアが全滅したからだよ」


「まだ、騎士も沢山いただろう。歩兵だって足止めしたに過ぎないだろ」


「全滅を勘違いしていると思うが、全員死なないでも全滅と言うんだよ」


「へ?」

俺はマヌケな声を上げたのだった。


「全員死ぬのを全滅というのはゲームの世界やおとぎ話の中だけだよ。

 雑な計算だけど戦場に投入された2割の人員を失うと作戦の遂行が困難になるんだよ。

 見た感じ敵の第一陣の騎兵は1割は損失していたように見えた。

 その後、投入される第二陣が戦場に到達する前に損害を食ったのだから、まともな指揮官だったら作戦遂行不能と判断して撤退すると読んだからだよ」


「たった2割で全滅なのか?」


「正確に言うなら全滅判定とでも言えば良いのかもしれない。

 例えばこれが、日露戦争の日本海海戦のような国を挙げての最終決戦だったら、それこそ最後の一隻になるまで戦うだろうが今回は町の攻略戦レベルだからガルメニアも被害の拡大は嫌うだろう。

 これが山中のコリレシア軍だったらどちらかが全滅するまで戦ったかもしれないけどな。

 コリレシアは所詮、余所者にしか過ぎないだろ。あの王のことだから俺たち召喚者は使い捨てと思っているだろう」


「コリレシア・・・・・山中か」


「そう遠くは無いうちに山中あたりとはやりあう事になるかもしれないな。

 碧、そうなったらどうする?」


「直接本人に刃を向けるわけでは無いだろ。

 まずはコリレシア軍とだろ。なら平気でナイフは投げられそうだけど・・・・・

 山中本人となると躊躇するな」


「確実に敵に回るのが鈴木のワレトラマン、星野のズガーンダム。山中のコリレシア軍。どれも厄介だな。

 ワレトラマンは3分間しか戦えないから人間のときに決着をつけるとして、

 星野のズガーンダムは・・・・・・コリレシア軍なら楽勝に破壊できるんだろうけど」


「ズガーンダム、楽勝か? あれ強いだろ」


「あんなの標的以外の何物でもないよ。

 地上戦で全高20mだぞ。撃ってくれと言わんばかりだろ。

 戦車を見てみろ!どんどん全高が低くなっているから。

 ズガーンダムがいくら強いと言っても戦車100両の砲弾を受けてみろイチコロだよ」


「機動力があるだろ。当たらないんじゃないか?」


「数発は避けられるだろうけど10発も当たれば、ズガーンダムが無事でも中に乗っている人間が耐えられないぞ」


「TVじゃ名台詞があるじゃん。『さすが、俺のズガーンダムだ何ともないぜ!』って」


「まぁTVだからな。TVの設定通り頑丈だったとしても戦車は10秒に1発くらい撃てるから1分で600発。避けられると思うか?」


「確かに。まぁ、コリレシアとズガーンダムが戦うんじゃないからな。俺たちがズガーンダムと戦うとするならどうするんだ?」


「それだよな~ 手は無いこともないが」


「コリレシア軍も問題だよな。戦車100両なんてどうすればいい?」


「相手にしなければいいんだよ」


「へ? 侵攻して来るんだぞ。町を放棄するのか?」


「それも一つだけど、山中を殺せばいいだけだ」


「エグイな」


「エグイぞ。戦争だからな」


「もう、アオ君もトモ君も物騒なこと言うのは止めようよ。クラスメイトなんだから」


と聖女・将太さまのありがたいお言葉を聞く俺たちであった。




智弘の予想は裏切られる事になった。

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