第51話 炒飯


魔道師討伐の依頼の断りをネーナさんに伝えた後、食材を調達しみんなと合流。

その後、ナミラーの町の東方面へ馬車で向かった。


「実は私、手に皮膚が戻ってきたの」

と明るい声で、そして手袋を外し両手を見せてくれた。

お面越しだがきっと笑顔なのだろう。

見せてくれた手は白魚のような綺麗な手をしていた。

きっと凄く嬉しいのだろう。


「うわぁ~~綺麗な指だ。頬ずりしてもいい??」


「えっ、それセクハラと言うことでしょうか?」


「いえいえ、そんな事はございません。俺の心のそこからの言葉です」


「七海、良かったな。学校一の美少女に戻る日も近いな」


「え、美少女かどうかは分からないけど・・・・・やっぱり、嬉しいな」


「七海さんの指って綺麗だね。肌も白いし。男子から大人気なのも分かるよね」


「そうでゴザルな。七海殿はうちのクラスの顔でゴザルからな」


「もう、みんなどうしたの。誉めすぎよ~そんなに誉めても何もでませんよ」


考えてもみれば学校でも評判の美少女が骨だけになってしまったのだ。

七海は何も今の容姿について言わないがショックだろうし相当辛いと思う。

一言も弱音を吐かないで明るく振舞っている。

だからこそ、早くもとの姿に戻って欲しいと思う。



「なぁ、智弘。女体化が完了したとき、数値は幾つだった?」


「確か40だったと思うな」


「七海が元の姿に戻るにはもっと数値が必要と言うことか」


「あの・・・・・僕のも・・・・・一段と小さくなってる気がする」


「何が小さくなったんだよ? 背か?」


「もう、アオ君はいじわるだな~ あれ」


「あれじゃ分からないよ」


「もう~・・・・・・・」


「白田君・・・・・・緑山君にも容赦ないのね」


「なんとなく、将太にもハッキリ【ピーー】って言わせたくて」


「分かってるじゃない!! アオ君、絶対ドSだよね」


「我輩も確実に小さくなっているでゴザル・・・・・・

我輩もハッキリ言った方が良いでゴザルか?」


「いや、則之はいいよ。則之は」


4人の俺を見る目は冷たかった。



「僕も40で女体化が完了するのかな?」


「我輩は今33でゴザルよ」


「僕は27だよ」


「こればかりはなってみないと分からないでゴザルな」


全員で「う~~~~ん」と唸るしかなかった。




「では、数値を上げるために食事を作ります。今日は炒飯にします!!」


「パチパチパチ」

「いいね~」

「楽しみ」



早速、馬車を降り釜戸を出し中華鍋を火で焙る。

初めて中華鍋を料理に使うのであった。


中華鍋の温度が上がるまでにオークの肉を刻みネギ、人参他の具材をを切る。

満遍なく鍋に油を多めに引きオーク肉を炒める。

本来なら焼き豚を入れたいのだが、ここ数日忙しくて作っている暇はなかった。

焼き豚に近い味にするために肉を炒めるとき砂糖を少量入れ、次は醤油を少し多めにして味をつける。

最後にホワイトペッパーを入れ味を調える。


その後、溶き卵を入れかき混ぜ即座にご飯を入れるのだ。

卵を入れるときにモタモタしてはいけない。

卵を入れてから10秒以内にご飯を入れるのだ。

それが難しければご飯に溶き卵をかけても良い。


ここで細かく切った、人参、玉ねぎなど具材を入れる。

そして、ご飯を煽る。

よく『返し』と『煽り』を一緒にしてしまうが別のテクニックなのだ。

『返し』というのはひっくり返すだけだ。

お好み焼きをひっくり返すような事を言う。

『煽り』というのはご飯を高く上げコンロの火にさらす事を言うのだ。

火にさらすことにより米に付いた余計な油を飛ばすことが出来て初めて『煽り』なのだ。

日本にいた頃は時々、自分で炒飯を作るのだが、調子に乗って煽りをやると・・・・・・・

食べる分より散らかす方が多かったのに今はどうだろうか。

完璧な煽りをみんなに披露することが出来るのであった。


「アオ君、そんなことも出来るの?」

「ダイナミックでゴザル」

「白田君、すご~~い」

「これはおいしそうな炒飯が出てきそうだな」


そして、最後に火から下ろし細く輪切りにしたネギを入れる。

細いネギなら余熱で充分なのだ。

その方がネギの香りが飛ばないで済む。


ホラホラ、凄いだろ・・・・・・・・まぁ、凄いのは俺ではなく料理スキルなのは言うまでもない。

皿に装い完成。

スープは作り置きの豚汁で我慢してもらう事にした。

味わ言うまでもない!

みんな大絶賛だった。


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