第33話 松坂牛


その夜、昨日と同じ宿を取ったのだが、いつもなら夕飯込みにしてもらうのだが無しにしてもらった。

女神様との約束を果たすために宿の裏庭を借りて松坂牛を焼くことにした。


「まさか、異世界へ来て松坂牛を食べることが出来るなんて思ってもみなかったね。アオ君、美味しく焼いてね」


「おう、任せろ!!」


おれは 女神様から頂いたフライパンに付属していた牛脂を入れ暖めた。


「みんな焼き加減はどうする?」


「碧、この肉はどの焼き方が一番美味しい?」


「レアからミディアムだね。その中でもミディアム・レアが一番美味しさを味わえるよ」


「じゃ、俺はミディアム・レアで」


「我輩もミディアム・レアでお願いするでゴザル」


「私はミディアムくらいにして」


「僕もミディアムがいいな」


「了解。女神様の分もはミディアム・レアがいいかな」


まず最初にフライパンを出来るだけ高温にした後、火から下ろし少し冷ます。

その後、肉を入れ再加熱。

良い火加減になったところでS社の岩塩Cを振り掛けブラックペッパーを挽いて完成。

まな板に乗せて包丁で適度な大きさにカットして一丁上がり。

みんなの分を作り、その後、女神様のお供え分を。

肉だけでは寂しいので野菜スープとサラダとライスをセットにしてお供えを。


旨い、やっぱり、高級肉。

ミノタウロスさんより松坂さんの方が旨い!!

流石、世界を制する日本の和牛!


「なぁ、碧、これをハルフェルナで売ったらどうだ?」


「A5の松坂牛サーロインステーキ、これ一枚いくらすると思う?」


「2千円くらいか?」


「そんな安くない。1枚5千円だぞ!!」


アイテム取り寄せ能力で値段まで分かってしまう。


「そんなにするのか!! それは美味しいわけだ」


「美しい女神様、ありがとうございました。女神様のおかげで素敵な夜を過せました。感謝します」

俺は天に感謝をしてお供えをした。


「利益を考えると倍の値段をつけて上流階級に買ってもらうしかないな」

智弘がアイデアを出した。


「それにはきちんとした店を出さないと誰も来ないんじゃないか?」


「確かにそうだな。1万円の食事を屋台などで食べるわけないな」


「ギルドに卸すか信頼のある商人、商会に卸すしか無いだろうな」


「まぁ、松坂牛でウハウハ作戦は諦めておこう」


「1万円の物がそう簡単には売れないな」

智弘と金稼ぎを考えていたとき


「お、レベルが上がった。寸胴を2個貰ったぞ」


とランドセルから出してみるとカレー100皿分を作れるサイズの寸胴が2個出てきた。

しかも、すくい易いように枝の長いお玉付き。

さすが、俺の敬愛する女神様だ。分かってらっしゃる。

寸胴を開けると紙切れが入っていた。


「松坂牛、とても美味しかったですよ。ご馳走様。


 前回の質問ですが、答えられる事と答えられない事がありまして答えられない事に相当します。

 今までに何人かの召喚者がハルフェルナに訪れ現代に帰っています・・・・・

 皆さんから見ればハルフェルナは幻想の世界です。

 答えは皆さんで考えてください。


 PS 次はカレーを食べてみたいです」


みんなに分かるように読み上げた。


「現代に戻ったものが何人かいる。

 もし、魔法やらスキルが現代に戻って使えたらどうする?俺ならその力利用する。 

 魔法とかスキルとか認知されていないならハルフェルナだけの力ということだろうな」


「私も水原君の意見に賛成。

 ハルフェルナは幻想の世界と言うことだから、ここだけの話しじゃないかな」


「そうでゴザルな。現代に戻っても魔法など使えたのなら悪用するヤツはいるでゴザろう」


「確かにそうだな。俺なら絶対、悪用して世界制服でもするわ・・・・・・

 でも、俺の料理スキルで世界征服は厳しいな ハハハハ」


「僕は日本に戻っても女子のままでもいいかな。

 アオ君がお嫁さんに貰ってくれるから。ハハハ」


「将太、その話マジで止めてくれ。なんか笑えん」


みんなで笑った。


「多分、男に戻れるでゴザろう。戻れなかったら我輩も碧殿元に嫁ぐでゴザルよ ガハハハハハ」


「いや、それないから!!」


「じゃ俺も、碧、よろしく~~~」


「智弘、お前だけは絶対に無い!!」


近寄ってくる智弘にアイアンクローを噛まし拒絶した。

そのとき、うん?なんか智弘の頭が小さくなっているような気がした。


「なぁ、智弘、お前、頭小さくなってないないか?」


「そうか?・・・・・・頭は分からんがアレは確実に小さくなっているよ」


「水原君、背も少し縮んでいない?」


「そ、そうか? 将太、ちょっと並んでくれ」


将太の身長は155cm、智弘の身長は160cm少し超えたくらいだったはずだが、今はすこしだけ智弘のほうが高い状態だ。


「智弘、お前、縮んでいるんじゃなか?」


「女体化が進んでいるでゴザルよ。我輩も縮むのでゴザロウか?

 アレがも小さくなって無くなってしまうのでゴザロウか」


「順調に進んでるようだ。いいぞ。アレがお亡くなりになったら女体化完了って事だな」


「智弘、お前ヤッパリ、どこかおかしいよw 男の象徴が無くなるんだぞ」


「問題ない!! アレを失っても俺の目の前に新しい世界が開けるんだ! 恐れることは無い!!」


「僕もいつかアソコが無くなってしまうのかな? なんか・・・・・・切ない」


「もう~~、女の子の前で卑猥な言葉を言わないでよ~ これでも女子なんですよ!! プンプン」


「あぁ~ごめんごめん。いつものノリで悪ふざけしちゃったよ。

 七海も早く戻れるといいね。俺、頑張って料理作るから」


「あっ、白田君、ずるい。もぅ~怒れないじゃない」


上手く誤魔化すことができたぜ。

でも、早く七海が元の体に戻って欲しいのは偽らざる本心だ。

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