第3章 第56話 特級冒険者の条件

 冒険者ギルドの地下訓練場には、冒険者のみならず国の兵士や傭兵まで集まっておった。

 いくら王都のギルドが大きいからと言っても、これだけの人数が地下に集まると身動きが取れぬ!


「ええい! 外じゃ! 全員外に出るのじゃ!」


 何とか全員をギルドの外へだし、王都で1番広い広場へと連れて行った。

 改めて見たのじゃが、今回の数は異常じゃな。

 冒険者、兵士、傭兵、所属不明の者までおるではないか!


「一体どうしてこれだけの数が集まったのじゃ? 訓練すると言ったのは昨日じゃぞ」


「それなんだがバンチョウ、実は俺、20日ほど前からバンチョウを探してて、訓練をしてもらうって叫んでたもんだから、あちこちに広まってしまったかもしれん」


 20日……それだけあれば、1番遠い街でもウワサが行って帰ってこれるのぅ。

 なるほどなぁ、そういう事じゃったのか。

 しかしこれだけの数の面倒など、ワシには見きれん。

 まずはアレから始めるとしよう。


「まずは以前の訓練で最後まで残った者以外は、王都の外周を走ってもらう! 1日で戻ってこれない者は訓練に参加はできん!」

 

 全員にどよめきが走る。

 そうじゃろうなぁ、訓練された馬がやっと1日で走り切れる距離じゃからな。

 しかしワシらは当然1日どころか、アズベル・ベネット・アニタは半日で走り切り、リアもエバンスも1日かからず走り切る。


 たぶん馬もワシら流の訓練をしたら、もっと速くなるんじゃろうなぁ。

 この世界の人間、いや生き物は、地球の生き物とは比べ物にならないほど身体能力が高い。

 王都の防壁外周は約1200kmあり、それを1日で走るという事は休みなしで時速50km。

 半日なら時速100kmと、自動車並みの速度が必要じゃ。

 前回は無理難題で諦めさせようとしたら、20人近くが出来てしまったという……あな恐ろしや。


 ほとんどの者が門から出ていく中、見知った連中が残っておる。


「久しぶりじゃのぅ、お主ら」


 以前の訓練で最後まで残っておった面子じゃ。

 アズベルの元パーティーもおるのぅ。

 それではギルドへ戻って訓練を開始すとしよう。





「それでは成果を見せてもらうぞ。順番にワシと手合わせじゃ!」


 今ここに居る連中はしずかの特製武具を持っておるからな、それを見るだけでも大体の事は分かるんじゃが、やはり実際に手合わせをしたいからのぅ!


 うむうむ、ほうほう、なるほどなるほど、そうきたか、ガッハッハ!


 3時間ほどで全員と手合わせをしたが、良い感じじゃ! 以前よりも断然強くなっておるわい!

 その中でも元アズベルパーティーは頭1つ抜けておる。

 やはり特級冒険者なだけあるのぅ。


「うむ! その後もしっかり鍛錬をしておる様じゃな! 全員強くなっておるわい!」


 じゃが今回の1番の目的は筋骨隆々の冒険者・エリクの特級冒険者入りじゃ。

 ならばまずは特級冒険者と戦ってもらうのが早かろう。


「エリクよ、まずはロバートと戦ってみるのじゃ」


 ロバートは元アズベルパーティーの1番若手で、大型の剣を持っておる。

 確か他のメンバーよりも少し遅れて特級入りを果たしたはずじゃから、特級の中では1番下のはずじゃ。

 他の連中には指定した相手と戦わせ、ワシはエリクとロバートの戦いを見る事にした。


 体は圧倒的にエリクが大きく装備も剣と盾じゃが鎧は重装備じゃ。

 ロバートは剣は大型じゃが盾はなく、鎧も部分的な金属鎧で少し軽装。

 戦い方は全く違うのぅ。


 戦いはロバートが優勢……かと思ったが、いい勝負をしておる。

 ぬ? 戦力としては互角じゃな。ではどうしてエリクは特級入りできんのじゃ?

 最終的にはロバートが勝ったが、どちらも疲弊しており、それほど実力差は無いように見える。

 

 はて、当てが外れたのう。

 これならば直ぐにでも特級冒険者になれるのではないか?


「ロバートが特級でエリクがなれぬ理由が分からん。どれ、グレゴリィオネェに聞いて来るとしよう」





「そう言われてもねぇん。特級冒険者になる条件を言うと、みんながそれだけをやっちゃうから、言えないのよん」


「そういうモノなのか?」


「そういうモノよん」





 地下の訓練場に戻り、ワシは頭を悩ませておる。

 うぬぅ、どうしたものかのぅ、このままでは強くなっても特級冒険者になれぬではないか。

 条件があるハズじゃが、一体全体どうしたものか。


 フレディ・ケンタウリ

「俺達が特級になった時か? そうだな、ケンタウリと2人で熟練パーティー向け依頼を何回かやった後だったっけな?」


「そうねぇ~、2人でやってて面白くなってきて、何回か熟練依頼をやったねぇ~」


 アルファ・クリスティ

「俺達か? 俺達はクリスティと熟練パーティー向けの依頼を達成させた後だったかんな?」


「そうよ、私達で何度か熟練依頼を達成させて、アルファからプロポーズされた後だったわ」


 ロバート

「俺は1人で何度も上級パーティー向け依頼をクリアした時だったと思う」


 ふむ、まとめると、2人で熟練パーティー向け依頼を複数回達成する、1人で上級パーティー向け依頼を達成する、の2つじゃろか。

 ……今すぐにでも特級入りを果たせるのではないのか????


「エリクよ、今すぐ上級パーティー向け依頼を1人で受けてくるのじゃ」


「ことわーる!!!! そんな危ない事はできん!!!!」


 !?!?!?!? なぜじゃ!?

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