第3章 第24話 バランス調整不足な世界

「この世界のシステムについて聞きたい」


 以前から思っていたけど、全く違うゲームが1か所に集まり、少なくともバランスなんて一切取れていない状況で、この世界への影響はどうなっているのか。

 俺にはチグハグな世界、矛盾しまくっている法則に見えて仕方がない。


「世界のシステムか。お前は本当に1回目なのか?」


「1回目? ああ、転生1回目って事? 初めてだよ」


「……まあいい。この世界の法則は別に矛盾などしていない。そうだな……この世界はゲーム機、もしくはオペレーティングシステムだと思えばいい」


「ゲーム機やOS?」


 少し考えるけど、それだとこの世界は俺が考えている物とは違う事になる。


「じゃあこの世界はやっぱりゲームなのか?」


「違う、間違いなく地球と同じ現実だ。ゲーム機やOSはあくまでも例えだ。この世界には間違いなく決まった法則があり、俺達はその法則にのっとって動いている」


 ブラスティーの話しはこうだ。

 この世界には魔法というモノが存在するように、我々がいた地球とは違う法則で動いている。地球でも言葉の違い、習慣の違い、宗教の違いがあるが、決して違う法則で動いている訳では無い。

 地球上で活動している多様性。この世界でも、数多くの多様性があり、俺達はその枠内で動いているに過ぎない、と。


「でもそれじゃあエリクセンにいた魔女の罠とか、ジュエルみたいなブラウザゲームみたいなシステムはどうなんだ?」


「そこまでは知らん。お前は地球の全ての法則を理解できているのか? 地球でもお前の知らない事など、いや知らない事だらけのはずだ」


「う、そ、そうだけど」


「だからわかり易くゲーム機やOSと言ったんだ」(ハードウェア的な問題は知らんがな)


「ん? なに?」


「プレスタやリンドウズの様な物、という事だ」


 確かにゲーム機やパソコン上では、全く違うゲームが動いてる。それと同じように、俺達も世界の中で動いているだけ、って事か。

 そのゲーム間でのバランスなんて知ったこっちゃない、てのは当たり前と言えば当たり前か。

 当事者はたまったもんじゃないけどね!!


「何となくだけど分かったよ。ただもう少し調整してから放り込まれたかった」


「それには同感だ」


 大体聞きたい事は聞けたかな。

 謎が全て解けたかというとそうでもないけど。

 部分的には、さらに謎が深まったし。


「お話し、終わった?」


 リアがウズウズしながら聞いてきた。

 

「あ、ごめん、わけわからなかったよね。終わったよ」


「じゃあデザートのお時間です!」


 リアとアニタが喜々としてお菓子とお茶を並べだした。

 食後のデザートが待ち遠しかったみたい。

 お堅い、いや意味不明な話しが終わって、みんな安心してる。

 う~ん、ここでする話しじゃ無かったかな。


「今度ウチのシェフを数名送る、指導しろ」


「俺達は普段、家にはいねーよ」


「む、では指導に来い、いつでも入れるようにしておく」


「じゃあお城の料理も教えてください」


「伝えておく」


 食というのは人の垣根かきねを取り払うようだ。

 ブラスティーと仲良くする必要は無いけど、もう敵対はしたくない。

 みんながある程度の交流を持っていた方が、今後もお互いにいいだろう。




 そんなこんなで、すっかりドミストリィの恐怖心が消え去り、日常生活が戻った頃、冒険者ギルドから1つの依頼が舞い込んできた。


「熟練冒険者と同行、ですか?」


「そうなのよ、向こうのパーティーたってのお願いでね、ぜひご一緒にお願いしますって、どう? 受けてもらえるかしらん」


 わざわざ2階の会議室に呼ばれたと思ったら、熟練冒険者と同行? 熟練が複数必要って事は、それなりの難易度って事なのかな。

 みんなの顔を見ると、特に気にしてる様子も無いし、まぁ久しぶりに他のパーティーと行動するのも悪くないな。


「分かりました、お受けします。それで相手のパーティーというのは?」


「ありがっと。みんなー出て来てだいじょうぶよ~ん」


 扉を開けて入ってきたのは剣士風の男2人、体の大きな男1人、そして軽装の女1人だった。

 あれ? あの女の子どこかで……あ。


「イチャモン付けてきた女!」


「イチャモンとか言うな。ふっふっふ、これで化けの皮を、化けの皮をはがしてみせる!」


 えぇえぇえええぇぇぇ、この前のじゃ納得出来てなかったのか~。

 面倒くせぇ~断りてぇ~。

 でも受けちゃったしな~、どうしよー。


「あの、ユグドラさん、こいつが失礼なこと言ってすみません! 何度も言ってるんですが聞かなくて」


「でも一緒に依頼を受けてくれて光栄です!」


「今度斧を持たせてください!」


 他の3人は普通に良い人たちだ、なのになんで……。

 でも、あれ? 3人は結構歳食ってるな、30代、そろそろ40近いんじゃない?

 キッカスのお父さんと言っても納得する年齢だ。


「コラ! こんな奴に頭を下げるな! 熟練冒険者、熟練冒険者としての自覚を持て!」


「俺達、熟練冒険者になったばっかりで、人数も少ないから簡単なのを受けようとしたんですが、コイツが難しいのを受けるって聞かなくて」


「そうだったんですか。じゃあ昇格おめでとうございます」


 リアに褒められてデレてる。

 あ、握手を求めてる。

 あ、さらにデレた!

 おのれ……リアは可愛いから仕方がないよねぇ~。


 結局全員が握手をしたけど、俺だけキッカス? だっけ、に手をはたかれた。

 一緒に行こうと誘われてコレか……前途多難だな。

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