第2章 第34話 ご褒美はドラゴン
「さて、やっと俺の出番か。主役は最後に現れるってな」
アズベルの番になり、軽く腕や足を延ばしている。
細身の剣を抜き、俺と対峙して口を開いた。
「やっぱりお前に1撃入れるのは俺が最初のようだな」
「へぇ、1撃入れる気でいるんだ」
「おうさ! 1撃どころかお前を倒すために熟練向け依頼ばかり受けていたからな」
フェンシングに似た構えをとり、軽く肘を曲げて剣先を俺に向けた。
剣先をこちらに向ける事で、俺からの攻撃を防ぎやすくなる。
「ふぅーん、じゃあ訓練の成果を見せてもらうよ!」
今までとは違い、今度は俺から攻撃した。
斧で細身の剣を弾くと少したわんで上に上がる。
すぐさま胴体に斬りかかるが、たわみながら剣先が俺の腕に向く。
慌てて斧を戻すと腕があった場所に突きが放たれた。
あっぶな。
アズベルは武器の特性上、相手の攻撃を正面からは受けられない。
なので戦い方はベネットに近く『力に逆らわない』になる。
しかしベネットとの最大の違いは『斬る』よりも『突く』に重点が置かれる事だ。
番長の指導も突きがメインで、斬る事は補助や攻撃バリエーションを増やすため。
なので超接近戦になると突きを放ちにくくなる。
試してみよう。
本来なら巨大なバトルアックスも接近戦は苦手だが、左手で柄を持ち右手で先の方、刃の付け根を持つ事で間合いが近くなり、接近戦も出来るようになる。
上下左右に斧を振り回し、時々剣を目がけて斧を振るう。
それに対してアズベルは正面からではなく、上下左右から突いてくる。
元々バランス感覚の良いアズベルだったが、最小限の動きで攻撃をかわし、かわしきれない場合は細身の剣の腹で斧を滑らせ、わずかに軌道を変えていた。
ここからがベネットとは最も違う所だ。
剣の腹で斧を受けるから剣がたわむ、たわんでブレた剣先で攻撃をするとこちらはどうしても払うかかわすしかなくなる。
下手に武器で受けようとすると、まるで剣が生きているように武器をすり抜けて、突きが命中してしまうからだ。
非常に厄介だ。
そんなやり取りを何合も繰り返し、
接近戦では埒が明かないと思ったのか、アズベルは距離をとった。
「どうだ? 一番てごわいだろう?」
「そうだね、中々したたかな戦いをするね」
事実強い。
リアとアズベルが戦えば、間違いなくリアが勝つ。
でもそれは、リアがアズベルの戦い方を知っているからだ。
初対面の相手の場合、リアは基本に
だがアズベルは違う。
冒険者としての経験、引き出しの数が多く、どんな相手にでもどんな戦い方もできる。
どれだけ強くても、経験が少なければ宝の持ち腐れだ。
アズベルとリアを見ていると痛感させられる。
今後の課題だな。
「じゃあそろそろ、手強い俺を見てもらうよ」
「あん?」
ワザとゆっくり接近し、ワザと斧をゆっくり振り下ろす。
アズベルは俺の意図を理解できないが、何をするのか見たいのだろう、
剣の腹を斧が滑り、そろそろ斧が剣から離れると思った瞬間! アズベルは剣を落とした。
「!? なんだ!」
予備の短剣を抜こうとするがさせるはずもなく、右足でアズベルの両足を払い、左手で胸を押さえて地面に叩きつけた。
「ゴガッ!」
どうやら俺は斧を持っている時に限り、格闘戦もできるようだ。
これは王都で冒険者を鍛えていた際に気が付いた事で、俺の“斧スキル”は斧を持っている場合の戦闘技術が高い、という事らしい。
しかし斧と剣を同時に持っても斧しか扱えず、剣はダメだった。
「はい、終わり」
「いってぇ……なんだ? 最後は何したんだ?」
「
「全然気づかなかったぜ」
「そこはほら、俺の腕がいいって事で」
「ケッ! 言ってやがれ!」
手を差し出してアズベルを起こす。
改めて振り返ると、みんなの成長速度って凄い!
アズベルとベネットに教えた事、最初は無理だと思ってたけど1ヶ月程でモノにしてるし、エバンスは手段を選ばないという厄介さ、リアに関しては俺に魔法ダメージが入った。
魔法使い組の体力は確認できなかったけど、1人でやれば嫌でも体力が付くだろう。
何かご褒美をあげたいところだけど、しずか製アイテムはリアに1撃入れたらという条件を出してあるし、他に何かないかな……あ、よしこれでいこう。
キャラクターチェンジ
ユグドラ
⇒ルリ子
しずか
番長
ディータ
メイア
◆ ユグドラ ⇒ ルリ子 ◆
体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。
じゃあ早速だが呼ぼうかねぇ。
「ゲート」
高さ2メートルほどの青い楕円形の魔法の門が現れ、中から茶色の巨大なドラゴン・チャコが出てくる。
「お前たち、特別に4人でなら戦わせてやる。準備しな」
「「はい!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます