第62話 魔法戦士として
森から姿を現した4つ首のドラゴンは、まるで値踏みするように俺たちを見ている。
全高60メートルで胴体前方から4つの長い首が突き出し、頭の角は4つとも形が違う。
全身が漆黒の
4つの首のバランスを取る長い
首が別々に動いて俺達を見ていたかと思うと、ふと1つの物を凝視した。
―バールドの街
「ふっざけるな!」
絶対に行かせない! 森を出て地響きを上げながら走る4つ首に、全速力で近づいて攻撃を開始する。
しかし接近するとその大きさに圧倒される。
全高60メートルほどだと知ってはいたが、あらためて足元にいくと巨大さが際立つ。
ほとんど真上を見ないと首が見えない。
その漆黒の鱗に加え、4本足に尻尾も含めると更に大きく見える。
クソッ! だから何だ、デカきゃいいってもんじゃない!
足では弾き飛ばされそうだったから、高く飛んで右横腹をバトルアックスで力いっぱい叩きつける。
「止まれぇ!」
黒く大きな鱗に全力で斧を叩きつけると、鈍い音と共にはじき返される。
こんのぉ! デカイだけあってただ攻撃するだけじゃ通用しないのか!?
しかし攻撃の効果はあったようだ。
4つ首のドラゴンは横へ数歩よろけ、街へ走る足を止めた。
そしてすべての首で、地面に着地した俺を確認する。
遠くからだと分からなかったけど、目はあるけど瞳らしきものが無い、真っ白だ。
しかしどうするか、他の人達は攻撃したくても出来ないだろうし、ヘタに矢を撃ったり投石されたら俺に当たるかもしれない。
街に接近し過ぎない限りは1人の方がいいな。
「みんなは街まで後退してください! コイツが街に近づきすぎない限り攻撃は不要です!」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに逃げ出た。
でもアズベルと指揮官だけは声をかけてきた。
「おい! 確かに俺達じゃどうしようもないが、無理はするな! ヤバくなったらお前も逃げろ!」
「キミ1人に任せてすまない! 迎撃態勢と避難準備は整えておく!」
それだけ言って街へと走ってく。
その言葉だけで充分さ。
元々は遺跡の調査依頼を受けたのは俺だしね!
4つ首の口が開き、4つ同時に赤黒いブレスを俺に向けて吐き出した!
ディータの時はテレポートで逃げたけど、今は来るのが分かっているからドラゴンの足元へ退避した。
それでもブレスを吐いたまま俺に顔を向けてくる。
おいおい! 流石にそのままだと自分の体に当たるだろ!
胴体の下を通って反対側まで逃げたが、案の定ブレスは4つ首の胴体に命中した。
バカなのかな? 図体だけでおつむが弱いとか……あ、違うのか。
胴体に当たったはずのブレスだが、残念な事に黒い
自分には効かない? それとも単純に鱗が堅いのか、ひょっとしてブレスは弱い?
しかし地面を見ると大きく深くえぐれている。
げ、想像以上にヤバイやつだ。恐竜のとは比べ物にならないや。
しかし手をこまねいてる訳にはいかない。
上を向いて無防備の腹に向けて飛び、ジャンプの勢いも利用して鱗に覆われた腹に向けてバトルアックスを振り抜いた。
しかしさっきと同じで鈍い音と共に弾かれてしまう。
でも胴体が少し持ち上がった。こっちの攻撃は無効化されてる訳では無い様だ。
4つ首が俺を踏みつけようと足を激しく上下に動かしている。
うおっ! 地響き! 震度3はありそうなほど地面が揺れて、直撃しないまでも足元をすくわれそうだ。
そんな図太い足で足踏みしてんじゃねーよ!
流石に危険だから距離を置いた。
頭の1つが俺を見つけ、足踏みをやめてこちらに体を向ける。
以前ヴォルフに負けた時の反省点として、俺は斧にこだわり過ぎていた。
“戦士”として戦っていたが、ここはそんな甘い世界じゃない。
“魔法戦士”として戦う!
真正面から向かい合い、斧を両手で持って腰の高さで横に構える。
恐らく……この戦い方が出来るはずだ。
4つの頭が上空から俺を目がけて突っ込んでくる。
何の変哲もない頭突きだが、ドラゴンの、それも高さ60メートルから放たれる頭突きの破壊力は洒落にならない。
1つ目が地面に突き刺さる。2つ避け、3つ避け、4つめを避けた時に斧を振りかぶった。
「
魔法を発動させ、俺の
しかし魔法は4つ首へは向かわずバトルアックスの後ろ側、平らになったハンマー部分に命中し爆発の勢いも付与して正面の頭に力の限り斧を叩きつける!
4つ首ドラゴンの脳天に直撃し、やはり鈍い音が響き渡る。
が、弾かれる事なく斧は鱗に突き刺さった。
今だ!!
「
魔法を
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