第55話 ザコ共が雲霞のごとく来やがったな

「さあ、行くよお前ら!!」


 ナイトメアにまたがり号令を出すと、龍たちは翼を大きく広げて1回羽ばたき空に浮いた。

 龍にもなると重力を操って空を飛ぶから、翼は補助としか使っていない。

 吸い込まれるように高度を上げ、こちらに向かってくる敵を見据みすえると、一気に速度を上げて移動を開始した。


 おっと、置いてかれちまうね!

 ナイトメアの手綱を握りドラゴン達の後を追う。

 

 


 1時間ほど走っただろうか、森の中を走っていると空が暗くなり、同時に強い光がいくつも発せられて上空を見上げた。

 向こうは始まったようだね。

 ドラゴンの真っ赤なファイヤーブレスが扇状に広がり、雲霞うんかのごときザコ共は一瞬で燃えつくされ、ほどほどのザコは燃えながら落ちていく。


 3匹の巨大なドラゴンのブレスの前に、空のモンスター集団はす術もない。

 小型で素早い奴の中にはブレスから逃げ延びた奴もいる。

 しかしソレを小型の龍・飛龍は見逃さず襲い掛かり、確実に仕留めていた。


 4匹同時の戦闘なんてそうそうないが、上手くできてるじゃないか。

 ん? どうやら少々出来る奴が来たようだね、どう戦うんだい?


 空での戦いはまだまだ終わりそうにない。

 遠くに見える姿はロックちょうだ。簡単に言うとでっかいワシだねぇ。

 ロック鳥のひなは象を食らう、と言えばその凶暴さがわかるだろう。


 さらに見えるのはワイバーンやグリフォンといった幻獣の類がわんさが居る。

 まぁ龍がいるんだから何が出てきてもおかしくないねぇ。


 赤いドラゴンの1匹がブレスを吐くのをやめ、自身の前方にいくつもの魔法陣が展開された。

 ほう、しっかり役割分担が出来ているんだねぇ、しかも選択したのはその魔法かい?

 まったく、ドラちゃんは頭がいいねぇ。


 1つめの魔法陣から出てきたのは風の精霊だ。召喚魔法だね。

 小さな竜巻の姿だが、その姿が一気に巨大化し、上空にとてつもない嵐が巻き起こった。

 グリフォンは魔法が使えるから重力制御も出来るだろうが、ワイバーンやロック鳥は魔法が使えない。

 つまり嵐の中ではまともに飛ぶことが出来ないわけだ。


 なんとか墜落しないようにするのが精いっぱいで、とても回避行動がとれる状態ではなく、残りの魔法陣からファイヤーボールが連続で飛んでいき直撃・炎上した。

 ファイヤーボールと言ってもドラゴンが使うからねぇ、威力は半端ないよ。


 ワイバーンとロック鳥が片付いた所で残るはグリフォンだ。

 が、すでに飛龍が動いていた。

 嵐に気を取られている隙に背後にまわり、足の鋭い爪で掴むとドラゴンに向けて投げ飛ばした。

 グリフォンは全力で羽ばたき、魔法も駆使して止まるも、そこはすでにドラゴンの眼前であり、大きなあぎとが開かれた後だった。


 ワイバーンやロック鳥が全滅したため風の精霊は姿を消し、残りはグリフォンの集団とザコ鳥だけだ。

 それも赤いドラゴンと飛龍のコンビがグリフォンを狩り、残りのドラゴンはザコ鳥を始末している。

 後は時間の問題だねぇ、空は見晴らしが良いから見つけてしまえば対処は簡単だ。





 戦闘時間は数時間を過ぎた。

 そろそろ地上でも足の速い奴の姿が見えてくるはずさ。

 ほら、耳をすませば木の枝や葉がこすれる音が近づいて来る。


 瞬間、目の前の木が揺れたかと思うとキバを剥いた猿が降ってきた。

 速いじゃないか!

 上半身をかがめて避けると、すぐさま右手を猿にかざす。


「マジックアロー!」


 魔法の矢は猿の後頭部を貫通し、そのまま地面に転がって動かなくなった。

 小型の猿だが、随分と動きが素早い。

 こいつぁ~思ったより苦労するかもね。


「チャコ! 降りてきな!」


 土色の鱗をしたドラゴンが降りてくる。この子は空よりも地上が得意な子だから、しばらくはナイトメアと一緒に3人でやるとしようか。


 それにしてもこの森、思ったより木が高いねぇ。

 チャコよりも高い木が沢山あるよ。

 葉っぱが視界の邪魔をしないからいいのか?


 チャコとアタシ、ナイトメアが距離を置いて横1列に並ぶ。

 空ではまだ戦いが続いているが、ほぼ制空権は取れたといっていい。

 万が一地上の奴を通してしまっても対応は可能だろう。


 じゃ、暴れようかね!


 ネコ科イヌ科の魔獣が大挙して現れた。

 足が速いと言ったらこいつ等だろうねぇ。

 しかしまだ距離があるから射撃戦といこうか!


魔法の矢マジックアロー! 灼熱弾ファイヤーボール!」


 見えている奴を片っ端から打ち抜いて行く。

 ザコの数は多いねぇ、もう少しまとまってくれれば楽なんだけどねぇ。

 数は多いがそれぞれの距離が離れているから、範囲魔法を使ってもイマイチ効果が薄い。

 まあ対応できてるうちはこれで良いさね。


 数十、いや数百か? イヌネコを倒したがまだまだいる。

 しかしそろそろ足の遅い連中も来る頃だろう。

 そうすればイヤでも固まって移動しているから、その時に範囲魔法を使おう。

 チャコもメアもしっかりと対応できてる。

 まだ1匹も通しちゃいない。


 チャコは魔法で地面からトゲを出して刺したり泥濘ぬかるみを作って足止めをしている。

 メアはアタシと似てて一匹ずつ魔法で倒している。


 しかし、ああ来たようだねぇ。

 軽い地震かと思うほどの地響きがする。

 大型モンスターのお出ましだ。

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