第39話 生意気な犬コロだねぇ、面白い

 気が付くと  馬車の  中で横になって   いた。

 少し揺れて る 移動してる   のかな?

 誰か が居る  でも視界が ぼやけて  良く見えない  意識もはっきりしない。


 俺の周りに  何度も小さ な光の粒が  出ては消える。

 俺は  生きてい  るのか?

 アイツは  狼はどう   なったんだ?


 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 俺は体の内側が焼かれる感覚を最後に、俺は意識を失った。


キャラクターチェンジ

 ⇒ルリ子

 ◆ユグドラ⇒ルリ子◆


 体が光り、だんだんとアタシの姿が現れる。

 なんだい一体。死んだんじゃないのかい?

 それにしても熱いねぇ、流石はモンスターが使うフレイム・ストライクだ、アタシが使うのより威力が高いじゃないか。


 赤い魔法使い帽子に長くて黒い髪。白い長そでシャツに赤いチュニック、赤いタイトスカートをはいた姿のアタシは、一体いつキャラクターチェンジしたのかねぇ。

 無意識下でもできるのかい?


 まあいい、それよりも今は犬っころを退治しないとねぇ。

 またがっている飛龍から飛び降り、命令を下す。


「飛龍、時間を稼ぎな」


 一鳴きしてデッカイ犬へ向かう。

 飛龍ではアイツの相手はキツイ、急いで応援を呼ばないとねぇ。


「ゲート! 出ておいで、アタシの可愛いドラゴン達、ナイトメア!」


 アタシの前に高さ2メートル、幅1メートルの青い楕円形が横1列に4つ現れ、中からは赤いドラゴン2匹と茶色のドラゴン1匹、漆黒の馬・ナイトメアが現れる。

 4匹は呼び出された意味を瞬時に理解したようで、すでに臨戦態勢に入っている。

 

「お前たち! その犬っころをやっちまいな!」


 命令と同時にドラゴン3匹は犬に灼熱のブレスを吐き、ナイトメアと飛龍はエネルギーの塊・エネルギーボルトを叩きつけた。

 3方からのブレスと魔法で、すでにむき出しだった地面が真っ赤に溶け始める。


 この逃げ場のない攻撃を食らえば、図体だけの犬もタダじゃ済まないだろう。

 それにしてもユグドラは随分と飛ばされたんだねぇ。馬車が見えない距離だよ。

 だが今はそれがさいわいした形だ。


 ドラゴンのブレスがとまり、ナイトメアと飛龍は魔法を撃たなくなった。


 終わったか?


 煙か水蒸気か分からない白いモヤの中から、表面が焦げたイヌが歩いて来る。

 ドラちゃんのブレスでもその程度なのかい!


 犬がナイトメアに飛びかかる。

 チッ、接近戦では狼と馬では分が悪いね、ドラちゃんも飛龍も犬の素早さには敵わない。


魔力防護壁エネルギーウォール!」


 アタシと同時にメアもエネルギーウォールを使い、メアの前方に2重の半透明の防護壁が出来た。

 よし、足止めをして魔法コンボを叩きつけて……! 一瞬で引きちぎるか!?

 1枚目の防護壁を爪で破られ、2枚目を牙で食い千切ろうとしている。


「どんだけ化け物なんだい、しかし一瞬でも足が止まったお前の負けさ」


 1匹のドラちゃんが全体重を乗せて犬を踏みつぶした。

 数メートルは地面にめり込んだね、しかも地面はブレスで溶けたから石のように固くなっている。

 どうだ? いやまだ生きているだろうねぇ、ブレスに耐えきる奴がこの程度でくたばるハズがない。


 踏みつけたドラゴンが小さな悲鳴を上げた。

 足を地面から抜くと犬が足の裏に噛みつき、体を回転させている。

 地面にこすりつけても離れない。

 こんの、アタシのドラちゃんを!


「足をこっちに向けな!」


 足の裏をアタシに向けると、意地でも離れまいと爪も使ってへばり付いている。

 ジャンプして犬の体に右手を当てて魔法を発動させる。


「マジックアロ  !」


 詠唱を止めた。

 犬がドラゴンから離れたからだ。


 こいつは魔法の特性を知ってやがる。ただ使えるだけじゃない様だねぇ。

 実は魔法が最大威力を発揮するのは対象と接触している時だ。

 対象と隙間なく触れている時、魔法は強制射出される。防御力を無視して、だ。

 しかし少しでも隙間があると、そこで爆発なりの効果が発動してしまい自爆する。


 ただのモンスターには知りえないはずの知識だ。

 ルーン文字を……理解している。

 こいつを魔法で倒すのは厳しいねぇ。


 しかしルーン文字を理解しているのはお前だけじゃないさ。

 お前は1だがこっちは4さ。


 茶色のドラちゃんが離れた犬コロを巨大なアゴで噛みつく。

 当然の様に防護壁でガートしているが、それをドラちゃんは解除しようとする。

 目まぐるしく魔法の攻防が入れ替わり、口の中ではまばゆい光が点滅した。


 魔法の攻防ではケリが付かなかったのだろう、ドラちゃんは犬を空中に放りなげ、それに合わせて赤いドラゴン2匹が体を横に回転、長い尻尾は音速を超えて衝撃波が発生し、落ちてくる犬を2本の尻尾で挟みつぶす。

 音速を超える速度と質量、硬いうろこに挟まれた犬は、魔法防御ごと砕かれて口から血を吐きながら地面に転がり落ちた。


「流石にどうだい、幸せな気分になれたかい?」


 しかし流石はユグドラの斧が効かないほどの防御力、恐らくは全身の骨が折れているだろうが、立ち上がろうとしている。


「ああ、わかったよ、今とどめを刺してやるよ」


 アタシは魔法コンボを叩きこむ準備を始める。


「遅延式爆炎・エクスプロージョン!」


 第1段階でイヌに爆弾をセットする。


「魔力雷球・エネルギーボルト!」


 第2段階で青紫の魔法エネルギーの塊が飛んでいく。


「至極の炎熱柱・フレイム・ストライク!」


 犬の足元から巨大な火柱が上がり、同時にエネルギーボルトが命中、連動してエクスプロージョンの爆発が起こる。

 3つの魔法を同時に当てる事で威力は倍増し、回復の時間を与えず葬ることが出来る。

 

 犬は火柱の中でもだえ苦しみ、エネルギーボルトが命中した胴体からは流血し、エクスプロージョンの爆発で傷口が開いて行く。

 追い打ちをかけるように5匹が魔法とブレスを使い……ついに動かなくなった。




 しばらく燃えていたが、驚いたことに犬の毛はたいして燃えていない。

 一体どんな耐性を持った犬なんだろうねぇ本当に。


 本当に死んだか?

 そう思ったのはアタシだけじゃなかったようで、足の裏を噛まれたドラちゃんが噛まれていない方の足で踏みつけた。

 ああ、ピクリとも動かないね。


 やっと、終わりだ。

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