第24話 モテ期かのう。ワシ、モテモテじゃ!

 「助かったよ。ところでアンタ名前は」


 アズベルが剣を鞘に納めながら聞いてきた。

 そういえば自己紹介がまだじゃったわい。


「ワシは番長じゃ。ユグドラに呼ばれて応援に駆け付けたんじゃ~」

 

 学生帽をかぶり直し、長ランのほこりをはらった。

 うむ、相変わらず頑丈な学ランじゃな。


「そうか、よろしくなバンチョウ。俺はアズベル、このパーティーのリーダーだ」


「うむ、お主の事はユグドラから聞いておる。よろしくじゃ」


「ところでー、その~……随分年上に見えるが、バンチョウはいくつなんだ?」


「ワシは17歳じゃ」


「え!? 俺よりも若いじゃんか!」


 そう叫んだのは一番若いロバートじゃ。大型の両手剣を持つ剣士じゃな。

 まぁ17歳というのもワシの設定なんじゃがな。


「ワシは老けて見られるからのぉ、いっつも30歳位だと言われるわい」


 みんなあっけに取られとる。よくある事じゃが、女子おなごの3人も驚いとる。

 そんなにオッサンは嫌かのう。

 ちなみにエリーナはまだ目が覚めておらん。


「今は歳の事はいいじゃろ。それよりも鳥をどうするかじゃ」


 空を見上げて話しを戻した。

 上空で旋回しておるだけで、狼男と戦っとる最中も何もしてこなんだ。

 鳥モドキ単体では何もできんのか?


「どうにかしたいんだけど、あれだけの数を魔法だけで倒すのは難しいわね」


 白く短いローブと白いズボン、短く真っ直ぐな木の杖を持った女子おなご、クリスティじゃったかな? は空を見上げてため息をついた。

 髪は茶色で軽く前髪を横に流し、後ろ髪は肩にかかる程度の長さじゃ。少々おっとりしておるな。


「同意。あの数は魔法では不可能」


 真っ黒いフード付きローブの中に黒く長い髪を入れ、子供かと思うほど背の低い女子、エバンスじゃ。

 自身の体よりも長い曲がりくねった杖を持ち、ローブで全身が覆われているため体型が分からん。

 空を見上げる事すらせず、地面の小石を蹴っておる。この子は感情表現が少ないのう。


 もう一人の女子は短剣を2本持ち、黒い長袖ながそでシャツの上から半袖の革鎧。

 半ズボンに革の腰掛を斜めに巻き、髪は赤いく短い癖毛くせげで、少々やる気のないしゃべり方をするケンタウリ。

 手をひたいに当てて日差しを遮りながら空を見とる。


 そして地面で寝ているエリーナ。


 みんなめんこいのぅ!


「来ないんなら帰っちゃおっかぁ。依頼はワーウルフだけだしぃ」


「バーカ、あの数を放っておいたら被害が出るのが分かり切ってるだろうが!」


「バカって言ったねぇ!? この老害ィ!」


「誰が老害だ! 同い年だろうが!」


「私の方が3日若いからねぇ」


 アズベルとケンタウリは幼馴染らしく、よく夫婦漫才めおとまんざいをする。

 ただの幼馴染らしいぞ?


「魔法が無理ならワシが何とかするしかないのぅ」


 周囲を見回すと手ごろな岩があった。

 高さ1メートル、幅2メートル、奥行き2メートルといった感じのゴツゴツした岩じゃ。


「いい感じの岩じゃな。どっこいせ」


 斜めにして手を地面との隙間に突っ込み、右肩に担ぎ上げた。

 良い感じの重さじゃ!


「どこが1番ええかの~……お、あそこじゃ!」


 右手に乗せて大きく振りかぶり、左足をたかーく上げて


「フンガーーーーーー!」


 鳥モドキが一番群がっておる所へ向けて野球ボールの様に投げ飛ばした。


「さてお次はっと」


 背中に担いでおった短い槍を手に取り、投擲とうてきする機会を待つ。


「今じゃ! ぬあっしゃぁ!」


 岩の後を追って投げた槍はあっという間に岩に追いつき、中心に命中・破裂した。

 岩は無数のつぶてとなって鳥モドキに襲い掛かり、耐久力のない鳥モドキは成す術無く撃ち落とされていく。

 まるでショットガンの様じゃ。 


 大きな穴が開き、日の光が差し込む。

 おお、キレイじゃの。さてお次は……ぬ?


 次に投げる岩を探しておると、鳥モドキは尻尾を巻いて逃げてしまった。


「なんじゃい、他愛のない」


 鳥モドキが居ないのなら岩は必要ないのぅ。

 

 改めて周りを見回したが、沢山の狼男と鳥モドキが地面に散乱しておる。

 ワシら以外に動いとるモンはおらんようじゃ。


「うむ、ワシの役目は終わりじゃな。それではワシはくぞ」


 ズボンのポケットに手を突っ込み、ふんぞり返って歩き出す。


「おいおい待てよバンチョウ。助けてもらった上に報酬も受け取らずに行っちまうのか?」


「ワシは金が欲しくて助けたわけではないわい」


「それは困る。一番活躍したヤツが報酬を受け取らないと、俺達も報酬を受け取れなくなっちまうだろ」


「む」


「お礼も出来ていないわ。せめて街まで一緒に行ってくれないかしら?」


「賛成。バンチョウの事、色々聞きたい」


「そうよねぇ、これでサヨナラなんてさみしいよねぇ」


 女子おなごが……女子がワシと一緒に居たいといっちょる! モテ期かのぅ!

 アズベルら男連中がニヤけとるのが気になるが。


「し、仕方がないのう。街まで一緒にいくとするか」


 いやっほ~~い!! めんこい女子おなごとお散歩たいむじゃ!




 ユグドラが乗ってきた馬に乗り、馬の両側には狼男の尻尾と鳥モドキの首の入った袋をぶら下げておる。

 かなりの小遣いになるようじゃ。


 移動中はいろんな話をしたぞ。


「なぁバンチョウ、なんで素手なんだ? 武器は使えないのか?」


「相手が素手じゃったからな、ワシも素手で戦わねば対等ではあるまい。武器は一通り使えるぞ。剣、槍、メイス、短剣。斧と弓以外なら大体行けるのぅ」


「剣を使えるのか! じゃあ今度手合わせしてくれよ!」


「かまわんぞ」


「いいなアズベルさん。俺も俺も! 大剣の使い方教えて欲しいっす!」


「まあよかろう」


「盾を使った戦い方もできるんかい?」


「盾と剣の合わせ技なら沢山あるのぅ」


 なぜじゃ! なぜ女子は遠くにおるのじゃ! どうしておとこに囲まれておるのじゃぁ!!

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