第18話 モンスターと戦うよりドキドキした

 残っている4匹のオーガは横一列になって俺の前に立ちはだかる。

 あえて真正面から斬りかかり、真ん中の2匹の首を斬るべくジャンプをしたが、少し飛び過ぎてオーガの頭の上を飛び越えてしまった。

 む、まだ自分の身体能力が理解できていないな。


 地面に着地しようとしたが、目の前に木の枝があったのでそこに乗った。

 丁度オーガの目線と同じ高さだ。大体7~8メートルかな?

 上手い具合にオーガの背後を取れたから軽くジャンプして、オーガの頭上から力一杯ちからいっぱい斧を振り下ろす。


 唐竹からたけを割った様にキレイに半分になった。

 やっぱり斬った抵抗が無い。これもシステム的な物なのだろうか、それとも俺の身体能力? 斧の性能?

 こればっかりは場数を踏まないと分からないな。


 残り3匹だ。

 3匹のうち1匹は逃げ腰で1匹は怒り狂い、1匹は戸惑っている。

 オーガでも性格の違いがあるんだな。


 怒り狂ってるやつが突進してきた。

 だが力はあるが動きが遅いため、ドスンドスンと地響きをたてているだけだ。

 間合いに入ると右手で地面を薙ぎ払い、外れたのが分かると俺の周辺を力任せに地面を殴り続ける。


 地面が割れるんじゃないかと思うほどの威力で、俺は振動でバランスを崩してしまった。

 それを見逃さなかったのが、いつの間にか近くにいた戸惑っていたオーガだ。

 バランスを崩した俺に向けて、地面から引き抜いたらしい木を振り下ろし、俺を潰しにかかる。

 受けてみるか? いややっぱり怖い!


 バランスを失ったついでに後ろに転がって避けると、目の前の地面に木が突き刺さる。

 根が付いたままの木は、そこに植樹しょくじゅされたように根が埋まっている。

 なんて怪力。


 ふと見ると、逃げ腰だったオーガが逃げている。

 オーガを1匹でも逃がすと、後からここを通る馬車が危険だ。

 木を振り下ろしたオーガのまたの下をくぐりぬけ、逃げ出したオーガを追いかけると、追いかける俺に気が付いてオーガが大声をだす。


 でっかい声だな、耳が痛い。これも攻撃になるのかな?

 動きのおそいオーガなのですぐに追いつき、時間をかけるのも面倒なので体を回転させて両足を切断する。

 そして地面に倒れ込む前に前方に回り込んで、倒れる勢いを利用して斧で首を切り落とした。


 残り2匹だ。

 2匹もほぼ戦意喪失しているが、逃がすわけにはいかない。

 オーガとの戦力差は大体わかったから、次は武器を変えよう。

 巨大なバトルアックスをしまい、小型の斧・ハチェットを2本を取り出した。


 ハチェットを両手で構え、今度こそ首を落とすべく力加減をしてジャンプする。

 む、少し低いか? 手を伸ばしても首には届きそうにない。よし、左手の斧をオーガの肩に刺して、体を持ち上げよ……うお!? 

 ハチェットは肩に刺さったが、体を持ち上げようと力を入れるとそのまま肩を切り裂いてしまった。


 仕方が無いから地面に着地をしたが、あービックリした、ハチェットでもほとんど抵抗なく切れるんだな。

 武器の性能もあるだろうけど、多分俺の力が強すぎるんだろう。

 システムでだったら、力を入れる前に肩を切り裂いてしまうだろうから。


 首は斬れなかったけど、後は力加減の練習だな。

 バトルアックスだったら簡単に切れ過ぎてしまうから、このままハチェットでやろう。




 オーガ2匹を倒し終わった。

 途中からなぶり殺しているように見えたから、すぐに終わらせた。


 さて、馬車周辺の狼はどうなったかな?


 馬車に近づくとすでに戦闘は終わっているようで、みんなで負傷者の手当てをしていた。

 そういえば俺も治療スキルがあったな。

 えーっと包帯、包帯はどこかなっと。


 バッグの中から治療に必要な包帯を探すが見当たらない。

 そうだった、包帯じゃなくて治療キットに変わったんだったな。

 治療キットは110個あるから存分ぞんぶんに使おう。


 すぐ近くに地面に座り込み、肩から血を流している冒険者が居る。まだ治療が出来ていないようだ。

 よし、この人の治療をしよう。


 治療キットを使うのは初めてだが、ゲームの時の包帯と同じようにダブルクリックしたら俺の右手に丸いカーソルが出てきた。

 カーソルを冒険者の傷口に当てると2秒からカウントダウンが始まり、0秒になるとカーソルが消える。

 これで終わったのかな?


 冒険者の肩を見ると血は止まっている。鎧の隙間から皮膚を見ると、ぬったったあとが見えるがすぐに消えた。

 どうやら治療が終わったようだ。


「ん? あれ? 痛くないぞ? あなたは医療の心得があるのか。ありがとう」


 この調子で順番に怪我人を治していく。傷口を縫う必要のある人は20人くらいだったから、少し時間が掛かってしまったな。


「ふぅ、こんなものかな。他に怪我人はいませんか?」


「今の奴で最後だ。ありがとう、君が来てくれなければ、俺達は全滅していただろう」


 さっきの冒険者リーダーだ。


「いえ、お役に立てて良かった」


 リーダーと握手をすると、いきなり俺に抱き付いてくる人がいた。

 な、なにごと!?


「あなた凄いわ! 私達の命の恩人ね!」


 抱き付いてきたのは女性で、歳は22~23、輝くような長い金髪はゆるいウェーブがかかり、目を大きく見開いているが普段は鋭い目をしているだろう。身長は160センチ少々で厚手の革鎧を着ている。

 スタイルが良く胸も大きい。


 び、美人さんだ!!

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