第51話 何を言ってるんだ
「[本当、お前容赦ねぇな]」
「[え、何の話?]」
「[いや、さすがにあれはちょっと引いたわ……]」
「[え、何でよ]」
デュオンとシオンが私の顔をまじまじと見ながらドン引きと言った表情をする。
「[いやー、まさか嬢ちゃんがこんなに成長してたとはなぁ!]」
兄弟二人とは対照的にシグバール国王がガシガシと頭を思いきり撫でてくる。続けて「よくやったと思うぜ」とセツナもシグバール国王に同調した。
「ケリーさまはひいてないですよね?」
さすがにクエリーシェルに引かれたらと不安で確認すると、「何を喋ってたかはわからないが、よくやったと思う」と褒められてはにかむ。素直にクエリーシェルに褒められたことは嬉しかった。
「[おいおい、イチャつくのはあとだぜ]」
「[だな。さっさと、この後の協議をしよう]」
視線を皆でローグに移せば、ビクッと身体ごとビクつくローグ。
そして彼をぐるりと囲んでデュオンが勢いよく引っ張ると、とりあえず近くにある椅子に放り投げるように座らせるのだった。
「〈で?現状はどうなっているの?〉」
「〈兵達には即刻ブライエへの進軍をやめるように伝えたし、帝国兵も捕らえるように伝達済みだ〉」
「〈そうはいっても帝国兵も大人しく捕まることはないでしょうね。この辺りは被害が出そうだからある程度粛正しないと〉」
「〈そうだな。恐らく秘密裏に行動していたやつもいるだろうし、そいつも見つけなければならないな〉」
「〈なかなか骨の折れる作業だな〉」
私達が現状を確認しながら帝国兵について今後どうするかを話し合っていると、訝しむようにローグが眉を顰めた。
「〈何を言っているんだ、お前達は〉」
「〈何を言ってるんだ、はそっちでしょ。モットー国のことをいたるところまで調べ尽くしてるわよ、帝国は。そのための派兵だし〉」
「〈な、何を言って……っ!帝国は我が国との同盟関係だからこそ協力しているのでは!?〉」
「〈そう思うならそう思っててもいいけど、随分とお花畑な頭ね。よく考えればモットー国のどの部分に利用価値があるかわかるでしょうに。ギルデル、帝国からの指示書出して〉」
「〈リーシェさんは人遣いが荒いですねぇ〉」
「〈き、貴様は帝国からの派遣部隊の副隊長では!?〉」
「〈あぁ、一時期そんなこともしてましたが、ボクはリーシェさん側についたんですよ。今の帝国には未来がないので〉」
ギルデルはにっこりと微笑むと、懐から指示書を取り出す。
そして、帝国がお互いの国が疲弊しているタイミングで両国を一網打尽にして国を乗っ取ろうとしている旨を読み上げた。
「〈そんな、バカな……っ!帝国がそんなことをするはずが!〉」
「〈じゃあ自分の目で見なさいよ〉」
リーシェが促すとギルデルから引ったくるように指示書を食い入るように見つめるローグ。どこからどう見ても先程言った内容が書かれているそれに、彼はだんだんと青褪めていった。
「〈そんな、バカな……では我々は一体なんのために……?〉」
「〈自国を乗っ取られるための下地を自分で作り上げてた、ってことよね。本当、そういうとこが頭弱いんだから。言っておくけど、師匠はそういうとこ強かだったわよ〉」
師匠は普段のらりくらりと躱していながらも、根回しがとても上手な人物だった。ローグが不満にしていた部分も自国のために演じていたことだし、ほいほいと他国を引き入れなかったのも何でも疑い慎重になっていたからこそだろう。
「[あやつは、モットー国発展のために尽くしてきた男だ。そんなこともわからんで国を動かそうなど100年早いわ!!]」
ビリビリビリ、とまるで雷が落ちたかのようなシグバール国王の怒声に全員が固まる。デュオンとシオンも自分が怒られたかのように小さく縮こまり、ローグに至っては呆気に取られていた。
「〈ということで、帝国排除が最優先よ。そのために帝国兵はなるべく殺さないようにしてきたから〉」
「〈情報を持ってるやつは徹底的に締め上げて吐かせるっきゃないな〉」
「〈どなたがどういった情報を持っているかはボクがわかりますから、選定はボクにお任せください〉」
「〈本当、敵に回すと厄介な人ね、貴方〉」
「〈そんな褒められても困りますよ〉」
(誰も褒めてないんだけど)
こんなしょうもない言い合いをしたところで話が先に進まないので、「とりあえずその方向で」と話を進める。
「〈とにかくローグは帝国排除の方向で国内で話し合ってちょうだい。異論が出るなら潰して。言っておくけど、モットー国とブライエ国が協力しないと帝国を打ち倒すことは不可能よ〉」
「〈わかった〉」
ローグは未だにショックを隠しきれないようだが、そんなことこっちは知ったことではないのでとにかく今後帝国を迎撃する旨を話し合うのだった。
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