第四章・袖振り合うも他生の縁。

第26話・みんなで文化祭へ

 九月十四日。土曜日。天気はくもり。

 今日は最高気温が二十五度と比較的低いおかげで、少しだけ涼しく感じられた。

 目覚まし時計で起きなかった秀は、母親に起こされた。

 時刻は、午前七時。


「あと、もう少し……」


 そう言って、ベッドでごろごろしていると、机に置いてあるキッズケータイが鳴った。塾に通い始めてから、いつでも連絡が取れるように母親が買ってくれた。

 ベッドから出ないように手を伸ばして、青色のキッズケータイを掴む。画面を見ると、光からのメールが届いていた。

 半分寝た状態で内容を読む。


『起きてる? あとで迎えに行くからね』


 と、書かれていた。

 もう少し寝ていたいが、仕方がなく起きることにした。

 普段の土曜日だと、九時くらいまで寝ている秀。だけど、今日は九尾学園の文化祭へ行くため、どうしても起きなくてはならない。

 秀はあくびをしながら、部屋着のまま部屋を出た。まずはトイレに行き、洗面台で手洗いとうがいをする。それから、リビングダイビングへ向かった。


「文化祭って模擬店があると思うけど、朝ご飯はどうする?」


 母親が聞いてくるので、秀は「んー、とりあえずパンでも食べておくかな」と答えた。

 家から九尾学園への移動時間を考えると、何かしら胃に入れておかなければ途中でへばってしまうかもしれない。


「りょーかい」


 母親は返事をすると、食パン一枚をオーブントースターに入れた。

 焼けるまでの間に、秀は飼っているセキセイインコのご飯と水、そしてペットシートを新しいものに変えた。

 お世話が終わって手を洗う頃には、食パンもこんがり焼けた。

 ダイビングテーブルの椅子に座って、秀がマーガリンを塗っていると、母親がデジカメを渡してきた。


「いい、今日は沢山写真を撮って来てよね!」

「うん、分かった」


 秀は返事をしてから、食パンを口に運んだ。もぐもぐとよく噛んで食べたあと、牛乳を飲む。

 すると、隣に置いておいたキッズケータイが鳴った。


『そろそろ時間だから、そっちに行こうと思うんだけど準備できた?』

『了解』


 光にメールを返して、秀は立ち上がった。 

 洗面台へ移動して、歯磨きと顔を洗った。それが終わると、自分の部屋へ行って着替えをした。

 半袖白青ボーダーTシャツとベージュの七分パンツだ。

 紺色のワンショルダーバッグを背負っていると、インターフォンが鳴った。 

 誰が来たのか出る前に分かった。

 だけど、秀は「デジカメを忘れた!」と玄関には行かずに、慌てた様子でリビングダイニングへ入っていく。

 見兼ねて母親が一足先に、来客を出迎えるために玄関まで向かった。


「光ちゃん。おはよー」

「おはよー」


 玄関で母親と光が挨拶し合っていると、すぐに秀も合流した。

 いつもおしゃれにキメてる光。

 今日は一段と気合いが入っていた。

 黒のキャップを被り、耳には大きなハートのイヤリング。黒色の肩開き七分Tシャツを着て、真っ赤なスカートをはいている。横型ショルダーも赤黒だ。

 無敵の可愛さが全身から溢れ出ていて、まるで雑誌からそのまま抜け出してきたみたいだった。


「今日もおしゃれで可愛いわね~」

「えへへ、ありがとー。九尾学園のお土産話、楽しみにしててね」

「秀にカメラを持たせてあるから写真もお願いね。それじゃ、気をつけて行ってらっしゃい」

「はーい! いってきまーす」


 光は元気よく返事をした。


「あっ、秀! せっかく蘭子ちゃんママが付き添ってくれるんだから、きちんとお礼を言うのよ」

「分かってるって! じゃあ、いってきます」


 そう言って、秀は玄関ドアを開けた。

 エレベーターは運悪く上の階へ行ってしまったので、秀と光は階段を駆け下りた。

 マンションの外に出ると、今度は運よく蘭子と蘭子の母親が乗る車が到着した。

 今日は蘭子の母が保護者として一日付き添ってくれるため、車で送り迎えもしてくれるのだ。


「「おはようございます! 今日はよろしくお願いします」」


 秀と光があいさつをして、後部座席に乗り込んだ。


「おはよー」


 助手席に乗る蘭子があいさつを返す。

 蘭子の服装は、白と紺色のセーラー服っぽいワンピースを着ていて、薄手の白いカーディガンを羽織っている。

  斜めがけの白いカバンには、ワンポイントでうさ耳がついていた。

 森ガール風で凄く可愛い。


「おはよう。忘れ物はない?」

「「はい、大丈夫です」」


 蘭子の母親の質問に、秀と光の声が重なる。

 ふたりとも準備は完璧だ。素早い動きでシートベルトを着用する。


「それじゃ、出発しましょうか」


 蘭子の母親が車を発進させた。

 次はノーブルを迎えに行くために、織田家へと車は走り出した。

 


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