第5話・可愛い男の子

 ★☆


 しばらくして、戦国アカデミーが入っているビルに到着。

 エレベーターがタイミングよく一階に来ていたので、秀と蘭子はすぐさま乗り込んだ。


すると、

「おーい、待ってー」

 同い年くらいの声が、ビルの入り口から聞こえてきた。

 緑色のリュックを背負っているので、すぐに戦国アカデミー生だと分かった。

 エレベーターに乗ろうと、急いでエレベーターに向かって走ってくる。

 秀は開ボタンを押した。

 すると、今からエレベーターに乗り込もうとしている戦国アカデミー生と、秀はばっちり目が合った。


「ありがとー!」


 秀に向かってお礼を言う戦国アカデミー生は、薄くもなく濃くもない顔立ちをしていて、日本人にはない色白さと金色に輝く髪、薄茶色の目をしていた。

 外国映画に出て来そうな美少女の登場に、一瞬、秀はドキッとしてしまう。


「とうちゃーく! 待っていてくれてありがとう!」


 美少女がエレベーターに乗り込んだ。勢いで、エレベーターが揺れた。

 それにしても、めちゃくちゃ日本語が上手い。


「おう」


 秀は軽く返事をして、閉ボタンを押した。エレベーターが動き出す。


「あ、蘭ちゃん。おはよー」

「おはよう。ノーブル君」


 仲良くあいさつをし合う美少女と蘭子。

 ――ん? ノーブル? 目の前には女子しか見当たらないけど、今聞こえたのは空耳なのか? と秀は首を傾げる。


「今、ノーブル? って言った?」

「うん、言った」


 秀の質問に、蘭子がさらっと答えた。

 ――へ? じゃあ、こいつがノーブルなのか!?

 秀は目を白黒させる。

 記憶が正しければ、ノーブルは『男子』と聞いた。

 蘭子の好きな奴と勘違いしたのだから、絶対に忘れるはずがない。

 秀は信じられないと言わんばかりに、ノーブルと呼ばれた美少女を、頭の天辺から足の先まで観察する。

 顔は、どこからどう見ても女子にしか見えない。

 ふるゆわショートボブの髪型も、どっちつかずで性別の断定が難しい。

 だけど、大きめの深緑のパーカーにダメージジーンズを履いているところは男子っぽかった。

 女子? 男子? どっちだ!? と、秀の頭は混乱する。


「えーと……ノーブルって、男子じゃなかったっけ?」


 疑問符を浮かべる秀に、蘭子とノーブルは顔を見合わせて笑った。

 同時に、エレベーターが二階に到着する。

 今度はノーブルが開けるボタンを押した。

 蘭子と秀が外に出た後、ノーブルも降りてくる。

 すぐに戦国アカデミーの入り口扉を開けて中へ入ると思いきゃ、蘭子は少し離れた階段付近まで歩いていく。

 誰にも邪魔されないと判断した階段の端っこで、三人は輪になった。


「豊臣さん、紹介する。この人が蘭の面食い電池を日々充電させてくれている織田おだノーブル君。女顔だけど正真正銘の男の子。ノーブル君、この子が昨日メールで伝えた同じクラスの豊臣秀さん」


 蘭子がさらりとお互いを紹介してくれた。

 すると、ノーブルが先陣を切った。


「これからよろしくねー」


 キラキラと眩しい笑顔で、秀に手を差し出してくる。

 どうやら握手をしたいらしい。

 握手することに慣れていない秀は、初対面の相手と握手することを何だか気恥ずかしく感じた。

 だけど、断るのは悪い気がした秀。

「よろしく」と言って、しっかり握手を交わした。

 凄く新鮮な体験だった。緊張で少し笑顔が引きつってしまう。

 それに対し、ノーブルは何の躊躇ためらいがないキラキラの笑顔だ。

 目が眩むほどの眩しい。

 ありえない話だけど、秀の目には何故か、ノーブル全体から謎のキラキラが放出されているように見えた。


 ――まさか! このキラキラってノーブル充電なのか? と言うことは、俺にもノーブル充電が見えるのか!?


 だとすると、充電の具合が全然省エネじゃない。大盤振舞すぎる! ――って、体から謎のキラキラを出す人間なんて、いるわけないだろ! と、秀は自分自身にツッコミを入れた。


 しかし、秀の考えは満更でもなかった。

 どうやら蘭子にも謎のキラキラが見えているようで、「ノーブル君、蘭にも電池を充電させて下さいであります!」

 と、真剣な顔で敬礼をした。

 ――ありますって何だか軍人みたいだな……。


「いいよー。ほら、キラキラ~」

 ノーブルは両手で髪をふさふさし始める。すると、髪から溢れんばかりのキラキラが出てきた。

 これは現実なのだろうか?

 魔法のような光景に、秀は目を疑った。両手で目を擦ってから、再度、キラキラを確認する。

 やっぱり見えた。

 目をぎゅっと閉じてから、再び目を開けても……やっぱり見える。

 ――うん、よく分かった。これは、夢じゃない。現実なんだ。

 秀は目の前の現象を、素直に受け入れることにした。

 深く考えると、ふたりの中に入っていけない気がしたからだ。

 強いて言うなら、崇拝するくらいイケメンだから、あのキラキラは出るのかな? と謎のキラキラ現象は何だかよく分からないまま、何とか飲み込む秀だった。

 

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