第67話 男二人の空騒ぎ その3

 《ログアウトが完了しました》


 ふー、今日もなかなか波瀾万丈だったな。

 しかしこんなヘルメット一つであれだけのゲームができるってのは、なんというか技術の進歩ってのは凄いもんだね。


 ま、それはそれとして。腹も減ったし、ひとっ風呂浴びて食事にでもいくかねっと。


 ん?


 今、普通に立ち上がれたよな。


 …………。

 少しはよくなってきたってことかね?


 ま、痛いのが好きな訳じゃないからな、もしそうなら嬉しい限りだ。


  ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 ふう、いいお湯だった。


 お? 丸田から着信か。

 それとあとは……うん、見なかったことにしよう。


 さて、とりあえず丸田に電話を返すかね。


『十四郎か』


 相変わらず携帯とるの速いな。

 もしかして携帯と見つめあってるのか?


「ぶふっ」


『なんだよいきなり』


「いや、携帯と正座して向かい合ってるお前を想像して吹き出した」


『は? 意味がわからねぇよ』


「いや、うん、気にするな。俺の勝手な想像だ」


『勝手に想像して本人の前で笑い飛ばすなよ、というか隠せよ』


「俺とお前の仲だろ? 細かいことは気にするな」


『気にするだろ。お前、俺に訳もわからず笑いのネタにされて、目の前で笑われて気にしないのか?』


 …………。


「眠ってるお前の目蓋に、目玉を書くくらいにはムカつくな」


『おま、あれ、お前がやったのかよ!』


「あれ?」


『修学旅行だよ!』


 ああ、あの時のあれか。


「あれは俺じゃないぞ」


 まだネタばらしされてなかったのか。

 まあ、流石に時効だろうし犯人を教えてやるかね。


「犯人はお前の嫁さんだぞ」


『な』


「お前、行きの飛行機の中でさっさと寝ちまっただろ? それ見てお前の嫁さんが、私を置いてさっさと寝るなんてけしからんとか言ってな」


『ちょ、ちょっと待て。あれって初日からだったのか?』


「そうだぞ。いく先々で居眠りするお前が話題になってたぞ」


 写真とか撮られてたしな。


『……』


「ちなみにお前が夜寝る度に、上書きされてたからな」


『なんで夜の男の部屋に女が入れるんだよ』


「協力者がいれば簡単だろ」


 なんせ教員付き添いのもとでだったからな。


『……』


「まあ、素敵な彼女のちょっとしたお茶目だろ。もう随分前の話なんだし、広い心で許してやれよ」


『いや、それはそうだが』


「まあ、若気の至りってやつだよ」


『いや、なんであいつの若気の至りで俺が被害うけてんだよ』


「愛だろ愛」


『はあぁ。それで、なんでお前は俺に教えなかったんだよ』


「え? 他人の恋路を邪魔するほど俺は野暮じゃないからな」


『俺の顔に落書きするのは恋路じゃねーだろうが』


「そうなのか?」


『そうだよ。貴方が好きです、顔に落書きさせてくださいとかどう思うよ』


「……そういうのはちょっと」


『俺だってそうだよ!』


「はあ、そろそろ飽きてきたな。そういや、なんか用事があったんじゃないのか?」


『いきなり話をぶった切るなよ! 全く、お前もいい性格してるよな』


「お前の嫁さんほどじゃないけどな」


『話ぶった切ったくせに、蒸し返すなよ!』


「わかったわかった、それでなんの用事だったんだ?」


『その嫁から伝言だよ、晩飯まだなら一緒にいかねえかってよ』


 お、丸田の嫁さんと会うのも久しぶりだな。

 ちょうど晩飯食いにいくところだったし。


「いいぞ、一緒にいこうぜ」


『そうか、あいつも喜びそうだ』


「時間はどうする?」


『1時間後にこっちから迎えにいくよ』


「わかった」


『ああ、それと』


「ん、どうした?」


『十四郎、体に異変があったりしないか?』


 異変?


「いや、特にないぞ。いたって元気そのものだ」


『そうか』


「丸田は大丈夫か? 目蓋に新しく目が書かれたりしてないか?」


『ねえよ! ……いや、ちょっとまて確認してみる』


 しっかし体に異変ねぇ。また珍しいことを聞くもんだ。


『くそっ、目が書かれてやがった! あいつめ、急にお前を誘って三人で食事なんていうから珍しいと思ったら』


「わはははは。折角だからそのまま来いよ」


『行くかよ! ったく、それじゃ1時間後にな。着いたら電話する』


「わかった。まってるよ」


 さてと。

 それじゃ、出かける準備でもしますかね。

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