第46話 鍛練(さいしゅうけっせん)
ちょ、ソフィアさん。なんで全裸!?
普段の武人っぽい凛々しさが消えて、えらく艶っぽい表情なんですが。
状況が全くわかりませんが、多分これは間違いなくアレですよね?
えーと、うん、ダメだな。
あのたゆんたゆんがノーガード。そしてこの普段見せない艶っぽい表情。
俺の理性が消し炭になってゆく。
だが、なんで俺の体は動かないんだ?
目の前に楽園が広がっているというのに、指一本動かない。
ああ、でもあんまり問題無さそうですね。ご自身で上に乗られるかんじですか。
……。
やっばり、こっちも激しめなんですね。
もう、たゆんたゆんじゃなくて、ばゆん!ばゆん!
なんという夢のような世界!
……。
…………。
………………。
夢か。
うん、流石にヤバいな。
確かに最近というかずっと過剰なスキンシップがあったとはいえ、あんな夢を見るとは。
しかもえらく生々しい夢だった。
まったく。俺は欲求不満の中学生か。
とりあえずシャワーでも浴びてすっきりしてくるか。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
「おかえりなさいませ、市長」
「おはようございます、セリスさん」
「今日も鍛練を?」
「いえ、そろそろ中断していた新しいエリアの探索に行こうかと。それで鳳仙さんはどこにいますか?」
なんせ水中だからな。何か対策を練らないと、また窒息して死に戻りだ。
「鳳仙様ならばお屋敷の方でラクィーサ様達とご一緒に、何か作っておられましたが」
「わかりました、行ってみます」
「その前にソフィア様達にも、今日は鍛練が無い旨をお伝えください。外で首を長くしてお待ちです」
「わかりました」
しかし、領地広げたのはいいんだけど、最初に使ったのがソフィアさんとの殴りあいだったのが悪かったんだよな、きっと。
お屋敷と小屋周り意外の領地の荒れっぷりが凄まじい。具体的に言うと、この1ヶ月毎日行われた鍛練という名の最終決戦のせいで、クレーター、クレーター、山、谷、クレーターって感じにぼこぼこだ。
アレだよな、この世界では天変地異って身近なんだなって、身をもって教えてくれる人達だよな。
さて、アホなこと。いや、アホなことじゃないな、実際に被害受けてるし。
じゃなくて、えーと、ソフィアさん達はっと……いたいた。
「ソフィアさ、やばっ!」
練気の弾丸。これシンプルな攻撃なんだが……。
おばぁあああ!
なんで見た目数センチの塊でこんなデカいクレーターができるんたよ! 見た目と威力が解離しすぎなんだよ、マジで!
「くれなあぶぉ」
きたな、炎の絨毯爆撃。絨毯延焼?
あつぉあおおおお!
魔力と練気の会わせ技だかなんだか知らんが、見た目ただの炎の癖にスーツの防御貫いてくるからな。しかも、炎の温度が高過ぎて直撃しなくても、近付いただけで一瞬で消し炭だ。
何度距離感間違えて消し炭になったことか。
「ロうおふぅ」
く、この辺か?
いっつうぅぅぅ!
ちょっと頬が切れちまった。
やっばり遠距離はロカさんが一番エグい。なんせ攻撃が見えないからな。
なんだよ空気の刃って。しかも広範囲の網目状に刃が張り巡らされてるからな。何回微塵切りにされたことか。
目で見るな感じるんだを、実践するはめになるとは思ってもみなかったよ。
くそ、三人とも既に鍛練モードだな。いきなり死に戻りするところだった。
最初の頃は近接戦主体だったのに……最近は遠距離含めて容赦なくなってきたし。そして今日も順調に地形が変わっていく。
さて、これどうやって鍛練しないことを伝えなりゃいいんだ。
……。
うーん、とりあえず死んどくか?
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
「おかえりなさいませ、市長」
「セリスさん、ただいまもどりました」
「お三方とお話は?」
「できませんでした。なんとか近付いたのですが……流石にあの3人の近接攻撃をかわしながら説得は厳しかったです」
3人ともまだまだ疲れそうにないし、というか疲れるのかあの3人は。
「市長」
うーむ、いつも通りだとあと5~6回は最低でも死に戻りしなきゃだしな。
「市長」
しかも全力で回避に徹してだからな。はてさてどうしたもんか?
「市長!」
「はい!」
「はぁ。近付かれなくとも、遠距離通話の機能を使えばお話できるのでは?」
!?
「その手がありましたね」
すっかり忘れてた。便利な機能も使いこなさなきゃ、意味がないよな。
えーと耳に手をあててっと。
『御屋形様、どうしたでごさるか? 鍛練は始まったばかりでござるよ』
うん、電話越しでもわかるこの殺気。今日も殺るき満々だな。ソフィアさんは、鍛練って言葉をどんな意味でとらえてるんだろな?
「ソフィアさん、申し訳ありませんが今日の鍛練は御休みです」
『では狩りでござるか?』
「いえ、今日からしばらく放置していた新エリアの探索に出ようかと」
『残念でごさる。拙者、御屋形様との鍛練を楽しみにしていたでごさるのに』
……。
うん、まあ、楽しそうなのは知ってるよ。
いつもいい笑顔だったもんね。端から見たら残忍ていえる部類のやつだけど。
『御屋形様、ちょっとだけ。ちょっとだけでござる』
あんたはどっかのおっさんですか。
というかちょっともなにも、いまさっき俺のこと3人がかりでぶん殴ったじゃないですか。
『きゅーん』
ダメだ、ダメだ!
このしょんぼりの先にあるのは死のみだ。負けるな俺。
ここで甘やかして返ってくるのは、俺を粉砕する拳だ。
「市長、もう少しだけ遊んであげてはいかがですか?」
遊ぶって。俺、毎回ぶち殺されてるんですが。あれを遊びというのはうちの領地だけでは?
「これからしばらく探索に向かわれるのですよね?」
「それはそうですが」
「なら、ここでもう少しかまって差し上げた方がよろしいかと。これから毎日エンドレスで遠距離通話機能を使われてもしりませんよ」
うん。何時に帰ってくるのって、何処にいるのって、だれといるのって5分おきに電話くれたりしそうだよね。
……。
俺なんでこの機能解放したんだろね。
「はあ、わかりました。もう一度だけそちらに向かいます」
『本当でござるか!』
「ただし! 私が探索に出ている間は、おとなしく待っていてくださいよ」
『わかったでござる! 拙者おとなしく待っているでござる』
「いってらっしゃいませ、市長」
「はあ」
全然話が進まないよまったく。
「でも、少し嬉しそうですよ市長」
な!?
「逝ってらっしゃいませ、市長♪」
……。
「逝ってきます、セリスさん」
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