第40話 新たなエリアへ

 さて、気を取り直してっと。


「それでセリスさん。このメニューにある、移住契約書をどうすれば良いのですか?」


「ではまず、移住契約書を選択してください」


 ふむ。移住契約書を選択っと。


 お、なんか紙が出てきたぞ。


「いま、市長の前にあらわれたものが移住契約書になります」


 ふむふむ、何が書いてあるのかね?


 1.領主に危害を加えることを禁ずる。

 2.領地から一定範囲までしか外に出ることができない。

(職種、能力等々、個々人によって範囲は異なる)

 3.領主の信頼を失った際には、領主権限で追放される場合がある。

 上記三項目を承認し、サインをした者を領地の住民とすることができる不思議な契約書か。


「そこに書かれた項目は、全ての住民に適用されます」


 ……。


「市長?」


 うん、あれだな、1の項目はあってないようなものってことだな。


「市長、どうかされましたか?」


「いえ、なんでもありません。それで住人を増やす為には、この契約書に住人候補の方にサインしていただければ良い、ということなのでしょうか?」


「いえ、事はそう簡単ではありません」


 だよな。

 サインもらうだけでいいなら、何の苦もなく増やせるからな。ゲームとして一捻りくらいはあるよな。


「そちらの契約書、契約書を出すのは市長ですが、サインをするペンを出すのは住人候補の方になります」


「なるほど、双方納得の元でないと駄目ということですね」


「双方納得ですか、まあ、そうとも言えなくもないのですが」


「どういうことですか?」


「領地の住人になるということは、すなわち市長の元に降るということです。ですから市長の下についても良い、市長の領地開発に力を貸したいという強い意志がある人にのみ、ペンが現れます」


 おおう、その辺は結構しっかりした忠誠心みたいなのを求めるのね。


「中々大変な事ではありますが、その分、気のおける住人を集めることができます」


 まあ、領内で常に命の危険を警戒しなきゃいけないのは疲れるしな。

 ……いや、毎日領内で命を散らされてるな俺。そう考えると忠誠心とか意味あるのか?


「市長?」


 ああ、でも、純粋な悪意を持って殺られるのとはまた違うしな。そう考えれば難易度が高いのも悪いことじゃないか。


「わかりました、頑張ってみます」


「よろしくお願いいたします、市長」


 よし、新しい能力のこともわかった。次は鍵だな。


 《ガロンディアの鍵(初回)の起動を確認しました。移動先に新天地を選択しますか?》


 はいを選択してっと。お、リストが開いた。


 《以下の選択肢から目的地を選んでください》


 えーと、パヤバヤにメルシュナード、それにデセンタヌか。さて、どれがいいのかね? どれも初めて聞いた名前だし、こんなもん勘で選ぶしかないよな。


 ということで、これに決めたぁ!


 《メルシュナードへの扉を開きました。転移しますか》


 勿論。


「それではちょっと行ってきますね」


「行ってらっしゃいませ、市長」


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 《転移が完了しました》


 さて、どんなとこおぼぼぼぼぼぼぼ。


 こ、呼吸が。しかもしょっぱ、口の中が塩っからい!


 なんか目の前を魚が泳いでるし、これもしかして海の中? ということは今度の俺の敵は酸素の残量ってか。

 いやいや。なに?今度は脱出系のゲームなの? なんで酸素残量と戦わなきゃなんないんだよ。敵が斬新過ぎるわ!


 ふう。ツッコミはこの辺にしておいて、さてどうしたものか。


 それにしても俺、結構余裕あるな。散々溺死させられた経験が生きてるのかね? それでも限界はあるだろうしな、早くなんとかしないとな。


 ってなんかデカいヤツきたあ!

 魚の体にワニの顔か。体長は5mくらいか? 水中戦とかこっちが不利過ぎるが、逃がしてくれそうにはなさそうだし。迎え撃つ、かぁ。


 ぬあお!

 デカいくせに結構早いな。だかそれぐらいの速度なら!


 おぼぉあああああ。


 くそ、まともに突撃を喰らっちまった。水中だとこっちの動きがかなり鈍るな。一度距離をとって感覚を修正していかないと、まともにやりあうことも出来ないぞ。


 あれ、追ってこない? 逃がしてくれそうな雰囲気じゃなかったんだが。……ん? 口開けてなにするつもりだ?


 口の中に渦が発生しおおおお、引き寄せられるううう。ぬおお目、目が回るううう。


 くそ!このままだと奴の口の中に一直線だが。


 むがががががが!


 ……うん、ダメだな全く抵抗出来ない。それに酸素もかなりきつくなってきた。なんというかアウェイ過ぎるにも程があるな。

 だがしかし、このままただで飲まれてたまるかよ。この渦の水流を利用した、きりもみドロップキックを食らいやがれ、ワニ面野郎!


 ……うん、あんまり効いてないな。というか全く効いてないな。

 ……これはもうあれだな、食われるな、俺。


 …………あれ?


 噛まれたのに痛くも痒くもない。そういやさっきの突撃も、勢いで弾き飛ばされはしたがダメージは無かったな。

 もしかして、このワニ面野郎の攻撃力じゃ、宝仙さんの作ったスーツを抜くだけの力がないってことなのか?


 うおおっ!?また噛みつかれ……うん、やっぱり痛くも痒くもない。やはりこのワニ面野郎、攻撃力が足りてない。


 そうとわかれば、こんなデカいだけのワニ面野郎怖くもなともない。形勢逆転だ!

 さっさと、かかってきやがれこのワニ面野郎!

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