第30話 遠距離通話

「くぅーん」


 ソフィアさんのしょんぼり具合が雨に濡れた子犬のようだ。

 不得手なことで、ここまで気落ちするとは、えらく可愛らしい破壊の化神だな。


「御屋形様も、何もできない拙者を笑っているでこざる!」


 ん、不味い不味い。困ってしょんぼりしてる女性を見て、ニヤニヤしてるとか。

 って、ああ、ソフィアさんが小屋の隅っこで膝を抱えてしまった。

 しかし、ロカさんといいソフィアさんといい、いじけるのにあの場所は快適なのか?


「申し訳ありません、ソフィアさん。しょんぼりしている、ソフィアさんがちょっと可愛らしいと思って、ついつい笑ってしまっただけですよ」


「!」


 あれ? なんか耳がピンとなった? それに、なんかモジモジし始めたぞ。


「流石市長。見事過ぎるフォローです」


 え? 今のでいいの? 本音ではあるけど可愛いの一言で?

 うん、あれだ。今後はソフィアさんが変な男に騙されたりしないように、気を付けないとな。


『クルムから連絡が来ています』


 うおっ、びっくりした。

 このシステムメッセージ、唐突過ぎてビックリするな。


『クルムから連絡が来ています』


 いや、連絡が来てるって言われても、どうすりゃいいんだ?


『クルムから連絡が来ています』


 こんなときこそ、初心者の手引きだ!


 《クルムからの連絡に対応してみよう》


 なんというグットタイミング、というよりは俺の状況に対応してるのか?まあ、なんでもいいや。それよりもやり方をっと。


 ふむふむ、まずは左右どちらかの手を耳にあてるっと。この手が受話器代わりって感じかな?

 続いてメニューを開いて、クルム一覧を選択。一覧の中から繋ぎたいクルムを選択するか。


 メニューを開いて、クルム一覧っと。まあ一覧ていってもまだ一人しかいないけどな。お、春香さんの名前が光ってる。あとは名前を選んでっと。


『ⅩⅣ狼!』


 うおっ!


『ⅩⅣ狼!』


「なにごとですか?」


『やっとつながったわ。あなた、いままで携帯とリンクさせていなかったの?』


「おっしゃる通りです、昨日の夜に初めて携帯とリンクさせました。よくわかりましたね」


『何度もコールしようとしたんだけど、そもそもコールの選択肢自体が出なかったし、クルム一覧であなただけログイン中のネームの色が青だったから』


 コールにログイン中のネームの色か。コールってのは、まんまこの連絡システムをつかった呼び出し。ネームの色もクルムだかの状況に合わせて、リストの名前の色が変化するみたいだな。


『このゲーム、携帯をリンクさせないと、こうやって遠距離での会話ができないの』


「携帯が無いと電話ができないってことですか?」


『そういうことみたい』


 なんでそこで無駄にリアルとリンクさせるんだ? まあ、ゲームであるからには商売もかかわってくるし、その辺のからみってことなのかな? まさか随時通話料金が発生するとか?


「これで通話料金が取られていたりは」


『するわよ。初月度は無料なんだけど、2か月目からアプリ利用料として月々の維持費がかかるの。まあ、微々たる料金だけどね』


 まじか! ちゃんと説明読んでなかった。まさかゲームの中で電話代を取られるとは。

 しかも必須機能を微々たる月額料金。たぶん懐が痛まに程度、月これくらいなら全然問題ないみたいな金額ぽいしな。

 ……ゲームやってるのに現実感が半端ない。


『急に無言になって、どうかした?』


「いえ、なんでもありませんよ。それよりも何かあったのですか?」


『そうそう、ちょっと聞きたいことがあったんだけど』


「なんでしょう? 私でこたえられることであれば」


『今、広場で話題になってる、初心者装備プレイヤーってあなたじゃない?』


 広場?何のことだ?


「広場ですか?」


『ええ、今プレイヤーの間でその初心者装備プレイヤーの動画が話題になっていて。ちょっと遠目で、プレイヤーの顔までは確認できないのだけれど、背格好があなたに似ている気がして』


 動画、動画ねえ。そんなもの撮影した記憶はないし、そもそもどうやって撮影するのかもわからん。


「申し訳ありません、身に覚えのない話ですね」


『そう、それならいいわ。それで話はかわるけど、調子はどう?』


 調子はどうなんだろな? 死に戻りばかりで、あんまり進んでない気はするが。


「知らない女の気配がするでござる」


 (ひゐっ!?)


 こ、このプレッシャーは……! お、俺の命の危険が危ない気がする!

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