episode59:雨音のinterlude


【~雨宮兎亜Side~】


「いよいよね……」


 空と海を繋ぐ真っすぐで純粋な雨たちは、個性に彩られた花にいくつもの奇跡を与え、華やかに芽吹くことを願うかのように何度も降り注ぐ。


 二人のピアニストとの出会いがきっかけで、幾度かになる困難を乗り越え、こうして道を作り、私はこのCRS世界に足を踏み出した。


「……って、何緊張しているんだろう……っ」


 心臓の音が何度も鳴り響き、深呼吸をしても全く収まる気配がない。


「自分の指が震えるなんて、何年振りよ……。でも……」


 「死雨の死神」なんて大それた二つ名を与えられ、今では騎士Ⅳの称号を持っているけど、悔しいが私よりつづり姉の足元にも及ばない……。


 以前の優人の演奏を聞いて、あのままじゃいけないと思って思わず本人に直接引導を渡す形になったけど、仕方がない。


「かつては、音殺しサウンド・キルと呼ばれていた伝説のピアニストが、こんなところで躓くわけがないよね」


 きっと、なにか策を考えて演奏をしてくるでしょう。

 そうじゃなきゃ、困るのよ……。


 あなたは、これからくるであろう


 私が、どう優人に思われたっていい……。

 でも、優人に今必要なのは明確な理由を持った悪意ある強敵ライバル


 取り戻させなくちゃいけないのだ……。

 どんな困難な状況でも、音で救って見せた本当の音を……。


 手に入れてもらわないといけないのだ。

 あの時失った……いいや、私が奪った優人の武器を……っ!


 あの日、何の力もなかった私を救ってくれたあなたたちに、この音が心に届くように……。


「――――優人、私くらい超えてくれないと承知しないからね」


 今日の天気は、幸いにも天照雨さばえ……。


 最高の音が出る、最高のコンディション日和。

 もう、走り出した音は止まらない。

 今ここに、物語のページがまた一つ開く音が聞こえた気がした……。


 私は、雨が好きだ……。

 最高の音を奏でられるから……。 


 ありがとう、神様。

 今日が、奇跡が起こる最高の日になりますように……。


 さぁ、行こう。

 演奏の時間だ……。



「さぁ、透子。あなたの馬鹿息子に一発、活を入れに行くわっ!」




 ――――芽吹く花の名前は、アルストロメリア。




 花言葉は……。




 ―――――……。




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