第14話「VS植物モンスター その3」
徐々に迫る大軍を目にすると、ユキエは慌てふためき、叫ぶ。
「ちょっ、これ、まずいわよ! さっさと逃げるわよ!! ほら、早く!」
「まだだ。こいつを連れて行く」
「ええっ! そんな、仲間かどうかもわからないし、とりあえずアタシたちが逃げるのが優先じゃないッ!?」
バーサスは一瞬いやな表情を浮かべるてから、諦めたように目を伏せてから、手を動かした。
ザクッ!!
バーサスの手にあるバールがツタ男の心臓の位置へ突き刺さる。
「ええっ! なにしてんのッ!?」
バーサスの突然の奇行に驚きの声を上げた。
「生きてるか?」
「え、ええ、そういえば生きてる、わね」
「なら、ドニーだろう」
バーサスはエリザベスの言った通り、心臓を突き刺してしまった事に若干の敗北感を覚えながらも、ドニーに繋がるツタを切り裂く。
そして、ドニーの腕が隠している樹を確認すると、そこには一匹の子リスが横たわる。
「何かを守るように見えたが、これか……」
素早く生死を確認し、生きているのを確かめると、雑に掴んで、ドニーの上に乗せる。
「良し。一時撤退だ」
バーサスはバールを捨て、両手を開けると、ツタに巻かれたドニーを抱える。
「ぐぐぐっ」
重量に思わず声が漏れるが、しっかりと抱え上げ、走り出す。
「バーサス、頑張って! あんたが捕まったらアタシまで道連れなんだから、ドニーを捨ててでも、逃げ切りなさいよ!!」
怪物たちが子リスを守るなか、元人間のユキエは血も涙もない台詞を発した。
※
バーサスたちは植物の大軍から完全には補足されていないようで、現場から離れてすぐに隠れてやり過ごす。
「なんとか、逃げ切れそうだな。エリザベスの元へ戻ろう」
ユキエへ告げ、隠れながら移動していたのだが、
ピシッ!!
バーサスの足へとツタのムチが襲った。
「ッ!?」
バーサスの脛当てが代わりに砕けた為、足は無事だったが、なぜか位置がバレていた。
「見つかった!? そんな、なんで!?」
「ユキエ、落ち着け、敵は1体だけか?」
バーサスが見る限りでは1体だけだったが、ユキエには続々とここに集まってくるモンスターたちが見えた。
「仕方ない。誰か一人が犠牲になるしかないな」
「そうね。ドニーか、そこのリスでいいんじゃない?」
「いや、こいつらは連れて行く」
「…………えっ?」
そうなると必然として、ユキエが犠牲になるしかないのは明白だった。
「ちょっ! イヤよ! アタシ、こんな知性の欠片もない植物たちに囲まれるなんてイヤよ!! ちょっと、バーサス、さっき、守ってくれるって言っていたじゃない! あれはウソだったのね!! ヒドイ! この嘘吐き! 女泣かせの外道!!」
ユキエが恨みつらみを吐き出すと、
「いや、お前でもない。もう一人いるだろ。ずっと楽してるんだ。少しくらい働いてもらう」
そう言うと、カニバル・フラワーを無視し、走り出す。
その足取りは隠れて進もうというものは一切なく、どんどん後ろに気配が増えていく。
ドニーという巨体を抱えながらでも全力で走るバーサスに植物モンスターたちはギリギリで追いつくことが出来ないでいた。
そのまま走り続けると、森を抜け、湖畔が目の前に広がる。
「エリザベス。あとは任せた!」
バーサスの背後には5体のカニバル・フラワーが追走しており、それがそのままエリザベスを襲う。
「おいおい。か弱い女性にこんな怪物を押し付けるとか正気かい? キミ、そのうち女泣かせの外道とか呼ばれるぞ」
つい先ほどユキエ言われていたのをまるで聞いていたかのように、軽口を叩くと、エリザベスはさっとバッグに手を入れるとすぐに、黒い小型の物体を取り出した。
それは小さな火を5回吐き、瞬く間に5体のカニバル・フラワーを吹き飛ばした。
朝日に照らされ、怪しく煌くそれは、『ベレッタ・ナノ』女性でも取り扱い易い拳銃であった。
「まぁ、目的は全て果たしたようだし、外道は許してあげよう」
ニタリとした笑みを浮かべ、エリザベスはバーサスが担ぐ物体を見つめた。
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