第25話 藤田あかり②

ご飯を食べ終わって、部屋であかりさんと二人で話していた


さすがに悪いと思って、ひなたに手伝うよと言っても、


「いい!大輔さんと話してて!」


と何故かにやにやしながら一人で片付けをしている。あかりさんと話して欲しいらしい。


「へぇ、じゃああかりさんはテニスが得意なんですね!すごいなぁ」

「いやいや、それほどでも」


あかりさんはひなたとは少し違っていて、不器用な分、子供らしさも出ていて、明るい人だった。


「あと私のことも呼び捨てでいいよ。ひなたみたいにさ。私、さん付け慣れてないんだ」

「うーん……でもね、結構抵抗あるんだよね、なんかこう、どっちかって言うとあかりちゃんって呼ぶ方がしっくり来るって言うか」


あかりさんに呼び捨てにしてほいしと言われて、少し悩んでしまう。もしかしたらひなたがどう思うか。ひなたの友達と仲良く話していいのか、わからなかった。


「やっぱり大輔さんってさー、結構おじさん臭いねー。なんか友達の恋人って感じより、近所のおじさんって感じ」


聞いた瞬間、あぁ、やっぱりそうだよな。と反射的に思ってしまった。

自分に向けられた現状をいやでも見てしまう。年齢とか、周りの目とかがどうしても気になってしまった


「大輔さん?」

「……あーごめん。」

「私こそごめん。気にした?」


何かを察したのか、あかりさんは素直に謝ってくれた。

ひなたには言い難いことでも、あかりさんには言うことができるかもしれない。


「……ううん。実はさ、いろいろ悩んでて。ひなたのことで」

「ん?どーしたん」

「いやほら、やっぱり俺って傍から見ると結構歳いってるおじさんって思わない?」


きっかけを貰った俺は、初めて会ったあかりさんに対して、悩みを告白した。


「……うん。まぁ、思うよ」

「だからさ、なんか申し訳なくなって。」

「なんで?あんな幸せそうじゃん」

「でももしかしたら、もっと歳の近い男の子の方がいいんじゃないかとか思うんだよね。だから今回も、あかりさんに会うの少しためらったんだ。俺の事を彼氏って紹介するの、なんか俺だったら恥ずかしいからさ」


初めてあった人に向けた言葉とは思えないくらい、ネガティブな考え方だった。


しばらく何かを考えたあと、話すことを決めたようにあかりさんは俺に向かって言った


「……あのさ、大輔さん」

「うん」

「大輔さんって顔かっこいいよね」

「……え?いや、そんなこと……」

「あるよ。ひなたが惚れるのもわかる。」


いきなり褒められて、照れてしまった。でも、あかりさんが何を言いたいのかわからない。


「大輔さんさ、ひなたが他にいいよる男いたら、すんなり譲っちゃうでしょ」

「え?……うん。そうかも」


要領が掴めない表情で頷く


「もっと、自信もちなよ」

「え?自信?」

「うん。自信。ひなたは大輔さんのこと大好きなんだから、もっと堂々としなよ」

「いや、だから影で考えてるかも……」

「それだよ、それ。ちょっとは俺の女感出しなよ。私もわかんないけどさ、大輔さんが考えすぎって。それだけはわかる」

「……そっか」


あかりさんなりに、考えて話してくれたことなのだろう。俺にはまだ自覚のない、自信がという指摘。


「周りがとう思うとかも考えなくていいじゃん。ひなたは大輔さんの事が好き。大輔さんもひなたのことが好き。年齢なんて関係ないよ」

「うん……そうかもね」


言われて、今までの事を思い返してみる。

ひなたはいつだって、俺のことを好きでいてくれたし、年齢の差なんて気にしていなかった。


そんなことを気にしていたのは俺だけで。


そのせいで、ひなたに色々な不安を抱え込ませていたのかもしれない。

そう考えると、自信がない。そう自分でも思えた。


「たぶん今すぐに持つのは無理だけど、頑張ってみるよ。ありがとう」

「うん。頑張れ!」

「あと、大輔さん女関係素人でしょ。分かりやすすぎ」

「う……やっぱりそうだよね」


にやにやとからかうようにあかりさんは言ってきた。


「ただいまー!なんの話ししてたん?」

「恋バナだよー!ね?大輔さん?」

「うん、そうだね」

「えー!なんで私がいない時に話すんですか!」

「あはは、ひなたには言いづらい事なんだよ」

「えー……?」


ひなたは、納得いかなそうに、首を傾げた


「よし、じゃあ私はそろそろ行こうかな」


元々は泊待っていく予定だったあかりさんが、おもむろに立ち上がって帰り支度を始めた。


「え?泊まるんじゃないの?」

「んー、やっぱいいや。私の代わりに、大輔さんと泊まりなよ」

「え?……うん」

「じゃあね!大輔さんも、また話そうね」

「うん、またね」


立ち上がる瞬間、俺の耳元に口を寄せて


「ちゃんと伝えなよ」


その一言が、背中を強く押してくれるような気がした。



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