第11話 朝


寝ぼけながら時間を確認すると、朝の6時半を指していた。

昨日は色々なことがあって、ありすぎて、脳がまだ興奮している。その一つの理由は


「大輔さん、おはようございます」

「あぁ、おはよう、ひなたさん」


隣で俺の顔を見つめる隣人のひなたさん。


昨日の夜、俺たちは付き合うことになった


俺に名前を呼ばれて、なにか不満そうに丸い目を細めて


「せっかくですし、呼び捨てで読んで欲しいです……なんて言ってみたり」


掛け布団を口元にあてながら、小さい声で呟くひなたさん。

朝なのにひなたさんの仕草にやられてしまう。本当に彼女になったんだと、最近感じてこなかった高揚感が湧いてくる


「わかったよ……ひなた」

「っ……はい」


名前を呼んで、お互いに顔を赤くする2人


だらだらと起きて、仕事に行く準備をする。朝ごはんを一緒に食べて、洗面台で顔を洗い歯を磨く。


付き合ってるというか結婚生活みたいで、ありきたりな一瞬でも心が幸せで、感じたことのない感動のような気持ちを感じる。

……剛はいつもこんな気持ちなのか


「それじゃあ行ってくるね」

「はい……あ、ちょっとしゃがんでください」

「うん?……はい」


ひなたと目が合うくらいの位置までしゃがむ、


「目を閉じてください!」

「わかった……?」


言われるままに目を閉じる。

次の瞬間、柔らかいものが口にあたって、すぐに離れる。


「はい、いってらっしゃい」

「う、うん、行ってきます」


赤い顔で見送る彼女と、部屋を出る俺。

扉を閉めた途端、俺は駅まで全力でダッシュした。


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