『獏の見る夢』

作者 夷也荊

読み飛ばすなかれ、事件は一ページ目から始まっている

  • ★★★ Excellent!!!

ミステリーまたはそれに準ずる作品の多くには、プロローグが挿入されます。
webではプロローグを読み飛ばす、なんていう話をよく耳にしますが、この作品の第一話は決して読み飛ばしていいものではありません。
なぜなら、その時すでに事件が起こっているからです。

不眠症の美大生が悪夢に悩まされている。そんなところから始まる物語ですが、この「悪夢」というのが物語の進行に連れてその正体へと変貌していきます。
真相に迫る過程で、話は序盤のとある一場面へと戻るのです。「あれは伏線だったのか!」この痛快感を味わえるのがミステリー・サスペンスの醍醐味ですが、この作品もまさにそういった楽しみが待ち構えています。だから読んでいて飽きないし、気が抜けない。面白いんです。

原因を突き詰めれば、ストレスフルな社会に生きる我々の誰しもがかかる可能性のある「悪夢病」。キャラクターを通して描かれる劣等感や無力感は、多くの読者の共感を得られるでしょう。
物語内での悪夢の扱いが非常に斬新で、真実が明らかになった時の驚きは格別です。
ぜひ、たくさんの方に読んでいただき、考えていただきたい作品です。

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