第151話 水着宣伝イベント・5

No151

水着宣伝イベント・5




 翌日、俺は二日酔いで朝から頭が痛かった。昨日、スレイブさんと海水浴イベントの話で花を咲かせ過ぎて酒を思った以上に飲み過ぎてしまっていた。


「ウゥ~~.....頭が.....痛い....」

『なんじゃ、だらしないのぅ。はよ、支度をして出掛けるんじゃ。今日は街の外に向かうはずじゃろが!』

 と、朝からマダラが思念で話かけてくる。二日酔いでの思念はかなり頭に響く。


「マッ....マダラ....ちょっと静かに....話してくれよ.....頭が.....痛いんだから....」

 ったく、思念は直接頭の中に声が響くから二日酔いには最悪だな.....


『ふん、どうしようもない主じゃ。体調が回復したらワレに報せるんじゃ』

 と、マダラにしては気遣ってくれたらしい。俺は、簡単に身支度を整えて少しふらつきながら宿の食堂に向かった。


「おはよう....ござい...ます、ロゼッタさん」

「おはようさんだねっ! おやっ、顔色が悪いね、どうしたんだいっ!」

 

 ロゼッタさんの声が頭に響くっ! 頭が痛いんよ! ロゼッタさんには悪気が無いのは分かるけど今は声の音量を下げてくれっと内心で祈った。


「アハハ....ちょっと飲み過ぎまして....朝食は軽くしてもらえますか」

「なんだい、飲み過ぎかい? なら、二日酔いに聞くお茶を用意してやるさね! テーブルで座って待っていな」

 と、朝食を用意しに向かっていった。


 俺は近場の空いてるテーブル席にダラリっと腰掛けながら、ガンガンと頭に響く痛さに辟易しながら朝食を待っていた。


 少ししてロゼッタさんがテーブルに朝食を用意してくれた。スープに新鮮なサラダ、ベーコンにパンと軽い朝食だった。それと、茶色い液体の飲み物。

「お待ちどうだよ、軽い朝食だよ! それと、【飛酒茶】だよ。これは、数種類の薬草を乾燥させてから水出ししたお茶だよ。食事をしながら飲みな。数時間もすればスッキリと頭の痛みがなくなるよ」


 おぉ、ありがたい! 飛酒茶の詳しい説明をロゼッタさんから聞くと、前日に残った酒が消えてなくなり、体が飛ぶように軽くなるそうだ。まるで、二日酔いが無かったかのようになるんだとか!


「ありがとうございます、いただきます」

「食べたら少し休んでから動きな! それと、通常なら飛酒茶は料金を取るんだがセイジロウは上客だからね、今回はサービスだよ。ただし、次回からしっかりいただくからね!」

 と、優しいロゼッタさんに感謝しながらゆっくりと朝食を食べつつお茶を飲んでいく。

 飛酒茶の味は、前の世界のほうじ茶に少し苦味を加えたような味だ。なんとなく体に良さそうな味でホッとする味がした。


 朝食を食べてから少し宿の部屋でゆっくりと過ごした。ダラダラゴロゴロしてると次第に頭の痛さや体の怠さがなくなり、昼時手前にはスッキリしていた。

「そろそろ動けるようになってきたな! 飛酒茶か....凄いな。街中で見かけたら手に入れておこう」


 俺は冒険者ギルドに向かう為に身支度を整えて宿を出ると同時に、マダラに思念を送り影の中からマダラを出した。

『やっとか、セイジロウ。待ちわびたぞ! すでに昼時ではないか、全く』


「悪かったよ。体調も戻ったしメイン通りでマダラの食事を買いつつ冒険者ギルドに向かおう」

『待った分、いつもよりたくさん買うのじゃぞ。ワレはセイジロウを気遣って黙って待っていたのじゃからな!』


 その為に大人しくしてたのかよ.....優しさだけじゃなく打算的な事だったわけね。さすがは、俺の相棒だ。良く考えてるよ....クソッ。


「分かったよ、なら早速行くか」

 と、メイン通りをマダラと一緒に歩きなから露店を巡っていく。マダラの言う通りにいつもよりちょっと多めに買い食い改め買い溜めをしていき、冒険者ギルドに着くとマダラは影の中に入ってもらいギルドの依頼提示板を見ていく。


 その時にギルドの食事処を見ると、すでに初めて見た時とは違う真新しい設備に変わっていた。どうやら、近いうちに鉄板焼きを主体とした食事処が開く雰囲気を醸し出していた。

 きっと数日以内には冒険者達で賑わいを見せるようになる事は想像に難くない。


 俺は、手頃な討伐依頼を依頼提示板から剥がして受付嬢のいるカウンターに持っていった。

「こんにちは、こちらを依頼を受けたいのですが」

 と、いつものシンディさんの姿がなく違う受付嬢に手続きをしてもらった。


「こんにちは。こちらですね、少々お待ち下さい..............お待たせしました。手続きは完了です。ご武運を」

 と、シンディさんと変わらない手早さで依頼手続きを済ませてくれた受付嬢に礼を言ってから、冒険者ギルドを出て北門にマダラと一緒に向かう。


 歩きながらマダラと会話で今回の討伐依頼の話をする。

「マダラ、今回は丘陵地での討伐だ。どうやら、オークの魔物が集落を築いてるらしい。それの殲滅だな。マダラは適当に魔物を狩れば良いだろう?」


『そうじゃな、久方ぶりだからのぅ。やり過ぎない程度に狩って良いのじゃろ?』

「あぁ、別に大丈夫じゃないか? 今回は二泊ぐらいしようと思うから、まずは依頼をこなしたら適当な場所に移動しようと思う。おれも、【透縛鎖靭】や【黒衣透翼】の訓練もしたいからな」


『そうじゃな、黒衣透翼はともかく透縛鎖靭は使い方次第で十分な武器になるからのぅ。早いうちに慣れるのが良いじゃろ』


「そうだな。せっかく、マダラから受け取った天装具だからな。宝の持ち腐れにはしないようにするさ」

 と、北門に着くと門番に手続きをしてもらい、依頼の北の丘陵地にマダラに跨がって向かった。


▽△▽▽▽▽▽▽


 マダラに跨がり森や草原、丘や川を駆けながら丘陵地に向かっていく。途中で接敵した魔物はマダラによって素早く狩られていき狩られた魔物達はマダラの影へと入れられて糧となる。

 こうしてマダラの糧となった魔物はマダラの魔力量を増やしていった。


 数時間ほどマダラと駆けていき依頼の目的地近くに到着した。俺は、一度マダラから降りて方角と地図を確認してマダラと話をする。

「地図を確認した限りではこの近くらしいな。多分、数キロ以内にオークの集落があるはずだ。すでに、陽が暮れ始めてるから近くで夜営出来そうな場所を探そう」


『なら、少し周りを見てこよう。セイジロウは、この辺で待っておるんじゃぞ』

「あぁ、頼むよマダラ」

 と、マダラはすぐに周辺の探索に向かった。俺は、周囲警戒しつつマダラの帰りを待った。


 しばらくして、茂みからマダラが現れた。

『セイジロウ、向こうに少し拓けた場所が見つかった。ついでに周りの魔物を狩っておいたぞ』

「わかった、じゃその場所に向かうか。今夜はそこで夜営してから明日はオークの討伐だ」


 マダラに跨がり見つけてくれた場所へと向かった。夜営場所に着くと夜営道具を準備してテントを張る。


 夜営準備が終わり陽が完全に落ちると夕食の準備を始めた。

「さて、今夜は何を食べるかな?」

 俺は、マダラの影の中に保管してある食材を思い浮かべながらマダラに頼んで食材を取り出してもらう。


「今夜はカニ三昧と行くか! 鍋に焼きカニに茹カニだ!」

『ほぅ、カニじゃな。ワレもカニは好物じゃなからな。上手く調理するんじゃぞ!』


「分かってるって。調理法は漁業場の人に聞いたから大丈夫だよ。それより、周囲の警戒は頼んだぞ」

『分かっておるわ。すでに、犬狼を数匹放って警戒しておるぞ』

 マダラは地面に寝転がりつつも周囲の警戒は怠っていなかった。


 俺は、鍋の具材を一口サイズに切り水魔法で水を生み出して具材を煮込んでいく。さらに、カニの足やカニ味噌を加えていく。


 次に違う鍋に水を張り沸騰してきたらカニを丸ごと数匹入れて茹でていった。

 その間に、鉄板焼きでカニを焼いていく。本当は網焼きをしたいが鉄板しかないので今回はこれで我慢してもらう。


 カニ鍋の味を確認しつつ、茹カニの様子の見る。さらに、鉄板焼きのカニの焼き加減を見る。そうして忙しく調理をしていった。


 そして、すべての調理が終わると受け皿にカニ鍋を注ぎ、他の受け皿には焼いたカニや茹カニを並べていきカニ三昧料理の完成だ。

「マダラ、出来たぞ! さぁ、食べようぜ!」

『ほぅ、旨そうじゃな! では、いただくとしよう!』


 俺は、手を合わせていただきますをしてから料理に手を出した。まずは、カニ鍋からだ!


 カニ鍋のスープを一口飲むとカニの風味が口の中にひろがっていった。次にスープ入ってるカニ身を食べると柔らかいカニ身から濃厚な味とちょうど良い塩味が食を進ませて行く。


「カニ鍋は旨いな! 普通なら適度な塩味とカニ独特の風味だけだけど、このカニはさらに濃厚な味がカニ身から滲み出てきていくらでも食べれるな!」


『こっちの焼きカニも旨いぞ! この柑橘な味加減が堪らんぞ! 旨いぞ!』

 マダラは焼きカニが気に入ったようでガツガツと食っていく。こんもりと盛ったカニ身がすでに空になっていて、俺は食事をしながら新しくカニを焼いていってはマダラの受け皿にカニ身を盛ってやる。


 俺も焼きカニや茹カニを冷めないうちに手早く食べつつ、マダラ用のカニを調理していって夜営料理を楽しんだ。


「ふぅ~.....食べたな。マダラはどうだった? カニには満足したか?」

『ふむ、ワレは満足じゃ。量的にはもう少し食したいが概ね満足じゃな。肉のようなボリューム感はないが美味であったぞ!』


「そうかい、そりゃ良かったよ。ついでに、明日の朝の料理も仕込んだから後は寝るだけだな。夜の警戒はマダラに頼んだぞ?」

『安心せい、すでに周辺は魔物一匹おらんからな。安全じゃぞ』


 さすがは、マダラだな。こうやて夜の森の中で安全に休めるのはマダラのおかげだな。その点については感謝しかないな。


「わかった、じゃあ頼むよ。緊急時には起こしてくれ」

『ゆっくり休むが良いぞ』

 と、俺は用意したテントに入り眠りについた。

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