第148話 水着宣伝イベント・2

No148

水着宣伝イベント・2




 昼食時までアンリエッタ邸で海水浴イベントの話をして、昼食を食べてから俺とマダラは冒険者ギルドへと向かった。

「とりあえず、アンリエッタさんの協力を得られて良かったよ! なぁ、マダラ」

『ワレに分からん話じゃが、セイジロウが喜んでおるならそれで良いじゃろ』


「まぁ、水着はマダラには関係無いかも知れないけど、浜辺では鉄板焼き店が出るんだから旨い魚介類が食べれるぞ?」

『ほぅ、ならワレにも分かる話じゃな。その時を期待して待っていよう。しっかりと働くんじゃぞ、セイジロウ』


 そりゃ働くけど.....まぁ、今回ばかりはマダラの出番はあまり無いからな。

 そんな話をしながら歩き冒険者ギルドに着いた。俺は受付嬢のシンディさんの列に並んだ。並ぶ人も少なくすぐに順番がやってきた。

「こんにちは、シンディさん」

「セイジロウさん、こんにちは。珍しいですね、この時間にギルドに来るには」


「はい、ちょっと思いついた事があって....ギルドマスターと話はできますか?」


 シンディさんは、俺の言葉を聞いて笑顔を崩さなかったが内心では厄介事かと思ったようで話を聞いてきた。

「ギルドマスターですか?.....ちなみに、話の内容は教えてもらえる事は出来るのですか?」


「えぇ、水着を着て海水浴をするだけですよ」

「海水浴.....ですか? それに、水着とは?」

 シンディさんが聞きなれない言葉に首を傾げながら聞いてきた。


「はい、水着を着て海水浴です。その話をギルドマスターにしたいのですが.....」

「分かりました、少々お待ちください」


 しばらくしてギルドマスターの面会が通り、執務室へとシンディさんが案内してくれた。執務室に入ると同時にサーシャさんの声が響き渡る。

「セイジロウっ! また、お前かっ!」


 えっ? またって何さ.....別になにもしてないよ。まぁ、これからするんだけど....


「ギルドマスター、落ち着いて下さい。まだ、何も話されてはいませんよ。今、お茶を用意しますから。セイジロウさんは掛けてお待ち下さいね」

 と、シンディさんは落ち着いた感じでお茶を用意しに一旦執務室を出ていった。


 俺はシンディさんに言われた通りにソファに腰かけた。

 俺がソファに腰かけるとサーシャさんが資料をテーブルの上に置き対面に座って話し始めた。

「セイジロウ、水を弾く服を作っているのはお前か? 火水祭の頃に何やら商業ギルドから報告があったのは覚えてるが忙しくて流ししていたのを思い出してな。さっき、シンディに聞いてその資料と報告書を見つけたのよ」


 その資料と報告書がテーブルに置かれてものだと言うのは分かったが....

「それで、何で開口一番に声を出したのですか? それに、またとはなんでしょう? 私はまだ何もしてないですよ」


「どの口がそんな事を言ってるのかしら? 勝手に新しい衣服を考案して商業ギルドと手を組んで販路を拡げてるらしいじゃない。あなたは冒険者ギルドに所属してるのよ? 普通はまず始めにわたしに話を持ってくるのが筋じゃなくて?」


 えー、そんなの聞いてないし.....別に俺が好きで作ったんだから良いじゃん。


「あー、その事で今日は話をしに来たんですよ、サーシャさん。まずは、話を聞いてもらえませんか?」

 と、このタイミングでお茶を用意しに行ったシンディさんが帰ってきてテーブルに用意してくれた。


「それと、シンディさんにも同席してもらいたいのですよ。今回は魅力的な女性が中心となる話なので....ねっ、サーシャさんとシンディさん」

 俺はニコリっと笑顔で二人を見る。シンディさんは受付嬢だけあってギルドの顔役で女性として魅力的なスタイルをしてるから、きっと水着は似合うはずだ。


 ギルドマスターのサーシャさんは、エルフィン種なだけあって顔はかなりの美人顔だ。だが、スタイルはスレンダーで発育は乏しくスタイル的な魅力はシンディさんに及ばないが、美人なので問題はない。


「ほぅ、魅力的とな.....いいわよ、話を聞きましょうか。シンディも同席しなさい」

「魅力的なんて....セイジロウさんに言われてはしょうがないですね。同席します」


 話をする準備が整い水着と海水浴について話を始めた。


 まずは、水着を作った経緯とすでに服飾師のレイリーンさんが水着を完成させている事も話す。

「まずは、それじゃ。なぜ、冒険者ギルドに話を持ってこなかったのよ! 話を聞くとずいぶんと便利そうな服じゃない! こっちに話を持ってくれば商業ギルドにデカイ顔をさせずに済んだのにっ」


「いや、だって服ですよ。武器や防具ならまだしも水着の話を冒険者ギルドに持ってきてどうするんですか? それに、私が商業ギルドに話を持ち込んだわけじゃなく、服飾師のレイリーンさんが生産と販路を作る為に話をしただけでしょ? 私のせいじゃありませんよ」


 どこの世界に水着を作りたいから手を貸してくれって冒険者ギルドに頼む奴がいるんだよ.....いや、もしかしたらいるかも知れないけど、普通はいないよ。


「クッ....じゃが、話ぐらいしても良かったではないかしら? わたしだって暇な時ぐらいは相談に乗るわよ」

「でも、ギルドマスターは火水祭の時は凄く忙しかったじゃないですか? それに、鉄板焼き店の話も進行してましたし、今だってそれほど暇じゃ無いはずですよ。副ギルドマスターが陰で泣いてましたよ」


 おいおい、もしかして本職そっちのけで鉄板焼き店に本腰を入れてるんじゃないのか?


 サーシャさんはチラッと視線を俺たちから外して、

「今は大事な時期なのよ。それに、ギルドマスターの後継を育てるのに良い機会じゃない? わたしがいつまでもマスターの椅子に座ってる訳にもいかないし...」


 どうせ、今さっき考え付いた言い訳だろうが、俺が口を挟む問題ではないので聞き流す。

 シンディさんは、サーシャさんの顔をジッっと見ながら何か言いたそうにしてるが、今回は先に話を進めさせてもらう。


「とりあえず、ギルドマスターは忙しい日々を送ってますから何でもかんでも相談は出来ませんよ。今回は形になったから良かったですけどならない場合もあるわけですから」

「そうですね。マスターにはマスターの仕事がありますからね。本職の仕事を疎かにしてもらっては困ります。ですよね、ギルドマスター?」


 シンディさんは、笑顔をサーシャさんに向けているがその裏の顔はきっと.....うん、サーシャさんがシンディさんの笑顔から視線を外してるので俺の考えは正しい。御愁傷様です、ギルドマスター。


「それでですね、水着が完成した事によって新しい催しの開催を提案しに来ました。これが成功すれば、来年からは毎日がお祭り騒ぎになりますよ。冒険者ギルドも忙しくてなってきてウハウハです。話の内容次第で力を貸してもらえますか?」


「そんな旨い話があるのかしら? それがセイジロウが言ってる海水浴の話なの?」

 サーシャさんは、俺が話し始めるとシンディさんの視線から逃げるように話しに食いついてきた。

 シンディさんはそんなサーシャさんの態度に溜め息を吐いていた。


 ごめんなさい、シンディさん。今は話をしたいんです。俺が帰ったらしっかりと叱ってくれて良いですから。


「そうです。水着は海水浴をする為に作ったのです。実際に完成品を見てきましたが、かなりの出来映えでしたよ。あの水着を着たら街行く男性の視線は釘付けですね。シンディさんとサーシャさんは美人で魅力的ですから当然、似合いますよ」


 うん、ここは上げて上げて、上げまくって行くところだ! 実際、俺も二人の水着姿が見たいからな!


「そっ、そんなにかしら?」

「そっ、それはちょっと言い過ぎではないでかねぇ」

 シンディさんとサーシャさんは少しは照れながら体をモジモジさせて恥ずかしがっている。


「そんな事ありませんよ。二人は自分で思っている以上に魅力的なんですよ。青い空に青い海、白い砂浜に水着を着た美女がいたらほとんどの男性は二人を見るでしょう。私もシンディさんとサーシャさんの水着姿は是非とも見たいですよ!」


 ここまで、言えば女性として嬉しくないわけがないはずだ。現に、俺の言葉を聞いた二人は顔を赤くしてるのだから。


「そっ、そこまで言われたら水着を着なくもないわよ?」

「えっ? マッマスターが着るのならわたしも、受付嬢として着ないわけにはいきませんから、一緒に着ますよ!」


 ふふ、そう言うと思ってましたよ! ありがとうございますっ!


「えぇ、是非とも来てください。販売は服飾店レイリーンのお店ですから。ちなみに、早めに行かないと海水浴に間に合いませんし、デザインも決めなきゃいけないですから早めに来店して下さいね」

 と、水着の宣伝はしておく。


「なっ、なら急がなきゃいけないじゃない!」

「マスターは、セイジロウさんの話を聞かないといけませんよ。わたしは、すぐに服飾店レイリーンに行ってきますっ!」

 シンディさんとサーシャさんはソファから腰を浮かせて早くも行動を開始しようとしていた。


「二人とも落ち着いてください。すでに、量産が出来るようになっていますから今はまだ大丈夫ですよ」


「何よ、それならそうと先に言いなさいよっ。まったく....」

「そっ、そうなんですね。すいません、恥ずかしい姿をお見せしてしまいました」


 いえ、女の子がキャッキャしてるのは眼福でしたよ。


「それで話を進めますね。その水着を着て海水浴をするには海の魔物が少々邪魔なわけです」

「そうね、浜辺とはいえ魔物は存在するわ。それに、わたし達では海中にいる魔物を討伐するには不得手よ」

「そうですね、船上からの討伐が主なやり方になりますね」


 そこはすでに手は打ってありますよ!


「その通りですね。人は水中での活動は不得手です。なので、すでに友人のマーマン種の方に魔物討伐を依頼しました。サーシャさん達に依頼したいのは浜辺側での警護をお願いしたいのです。報酬は一人銀貨五枚で十名ほど人がほしいです」


「あら、ずいぶんと破格な報酬ね。一日で銀貨五枚とは。奮発したわね」

「それに、マーマン種ですか....よく伝がありましたね」

「えぇ、マレアナレアの糸の採取はマーマン種の友人に依頼しましたから。水着の素材はマーマン種達が今でも採取してるんですよ。多分、商業ギルドで定期的な依頼が出てるはずです」


「なるほど、すでに水着を作る為のルートは確保されてるわけね。まったく、知らぬ間にそんな事をして! もうっ!」


 もうっ! って、見た目が美人なだけあってサーシャさんがやると破壊力抜群だな。ここに俺以外の男がいたら惚れてるだろいな。

 俺にはフローラさんがいるからそんな簡単には惚れたりしないぞ!


「ですが、セイジロウさんには驚きですね。いつの間にそんな事まで.....どうしますか、ギルドマスター? ここまでお膳立てされてるからには見過ごせませんよ? もしここで見過ごせば、他のギルドが参入してきます。今回の海水浴の規模は小さいですが、これが大きくなれば....」


「えぇ、とてつもない事になるわ。鉄板焼き店なんて目じゃないわよ! いいわ、セイジロウ。わたし達はあなたの話しに乗るわよ!」


「ありがとうございます。なら、詳細な話を詰めていきたいところですが、小腹が空きましたね」

 それから、小休止を入れてから陽暮れまで海水浴について細かい部分を俺とシンディさんとサーシャさんで話し合った。

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