第146話 水着の完成
No146
水着の完成
俺は水着制作を頼んだレイリーンさんの服飾店にやって来て、完成した二着の水着に目を奪われていた。
一つはレイリーンさんが着ているワンピース型の水着だ。白色と青色のグラデーションで裾には小さなリボンが幾つも飾りつけられている。
胸元には大きなリボンが飾りつけてあり一際に目をひく。露出度的にはそれほど多くはないがそれはそれで良い感じだ。
そしてもう一着の水着が、ハンガーに吊るされているビキニスタイルでパレオ付きの水着だ。
こっちの水着は赤色のビキニに濃い紫色をしたパレオを腰に巻き付けるスタイルだ。俺は、この水着を着たフローラさんを想像してしまっていた。
あの紫色の髪色に赤色のビキニスタイルはかなり似合うはずだ。それに、濃い紫色のパレオも美脚のチラリズムも合わさって悩殺間違いなしだ!
「レイリーンさん、この水着は....」
「あぁ、この水着はお店の宣伝用に作ったんですよ。水着のスタイルと色合いを派手にして目を引くように。さすがに、わたしでは着こなせないのでこっちのワンピース型を着て宣伝してます」
「これも、素晴らしい水着ですね。色合いと良い、形と良い。すでに、量産に入っているんですか?」
「一応の対応が出来るようにはなっていますが、まだそれほど知れ渡って無いんですよね。やはり、火水祭で宣伝が出来なかったのが痛いですね。ですが、常連客や新規のお客には宣伝してもらうように--」
いや、それじゃ遅い! すでに火水季も半ばを過ぎてる。このままでは水着の宣伝が出来ても海水浴が見れるのは来年になってしまうではないかっ!
「レイリーンさん、宣伝の為のイベントをしましょう! そして、周知してもらうのです。水着の良さをっ! 素晴らしさをっ! わたしは用が出来ましたからまた後日に来ます! レイリーンさんは水着を出来る限り宣伝して下さい!」
と、足早にレイリーンさんの店を出て漁業場に向かった。
△▽△△△▽
漁業場管理所の受付嬢にスレイブさんは居るかを聞くと今日は見ていないと言われ、すぐにスレイブさんの貸し家に向かった。
スレイブさんの貸し家の扉を叩くとスレイブさんが出てきてくれた。
「スレイブさん、久しぶりです」
「ああ、セイジロウか。久しぶりだな、今まで何してたんだ?」
マーマン種のスレイブさんに会うのは久しぶりだった。レイリーンさんの店で水着制作の話し合いをして以来だから随分と経つ。
「色々と忙しくて、冒険者ギルドでの試験もあったりで.....それより、水着が完成したんですよ? 知っていましたか?」
「あぁ、あの水を弾く服だな。知っているぞ、今だってマレアナレアの糸の処理をしてる最中だからな。まぁ、とりあえず入れ」
俺はスレイブさんに言われて家の中に案内された。家の中の一部屋には処理済みのマレアナレアの糸が綺麗に揃えられていた。
「これは.....また随分とありますね。全部、スレイブさんが採取して来たんですか?」
「ああ、そうだ。二日に一度は採取に行って糸の処理をしたら生地職人へと届けるんだ。今までより実入りも良いし、定期的な仕事だからな。ちゃんと契約もしてるし、報酬の払いもきっちりしてる」
じゃ、あのレイリーンさん達との話し合い通りになったわけだ。マーマン種に糸の採取依頼を出して仕入れルートを確保したのか。
「糸の採取はスレイブさん一人だけでは無いですよね?」
「そうだ、さすがに一人では無理があるからな。十数人のマーマン種達と定期的に採取してる。他の仲間達も新しい料理店との魚介類の確保で契約してるやつもいるぞ」
その新しい料理店は多分、鉄板焼き店関係だろうな。水中で自在に動けるマーマン種は貴重な戦力だしギルドが動かないはずがないからな。
「そうですか、色々と順調で良かったですよ」
「あぁ、最近は忙しく働いてるよ。それで、今日はどうしたんだ? 魚介類ならまだ捕ってないというか、捕りに行ってる暇が無いんだ」
そっか、それはちょっと残念だったな。あわよくば魚介類を安く手に入れたかったんだけど....まぁ、仕方ないか。
「今日はスレイブさんの顔を見に来たのと
、実は折り入ってお願いを聞いてもらえないかと....」
「そうか、なら話はここじゃなくて飯を食いながらでどうだ? あと少しで今日の糸の処理が終わるからセイジロウが良ければこのあとにでも話すか」
「そうですね。なら、漁業場を見て回ってきますから.....陽暮れにまた来ましょうか?」
「そしてくれると助かるな」
と、あと数時間で陽が暮れるからそれまではマダラと一緒に漁業場で魚やら貝類、カニやエビなどを買って暇を潰しつつ買い溜めしていった。
△▽△△△▽△
陽が沈み空が夕闇に染まった頃に、スレイブさんと一緒に料理が旨いと評判の店に向かった。
店で適当に料理を注文しテーブルに用意されると、俺は冷えたラームエールでスレイブさんは冷えた果実酒を手にとり乾杯をしてから話が始まった。
ちなみに、マダラの食事はお土産を十分に頼んである。
「それで、さっきの話とはなんだ?」
スレイブさんは、焼き魚をナイフとフォークで器用に切り分けながら聞いてきた。
「はい、実は水着を宣伝する為のイベントをしようと思いまして。それの手伝いをスレイブさん達に手伝って思おうかなと思いまして」
「イベント? しかも、俺達にか? それはマーマン種の仲間達が必要という事なのか?」
スレイブさんは切り分けた魚を食べなが話をしてる。俺は、スレイブさんとは違う焼き魚をナイフとフォークで切り分けて食べる。
この魚も旨い! 切り身を口の中に入れると魚肉の肉汁が口の中に溢れると同時に、切り身に付けた果実の甘酸っぱいソースが拡がっていき魚肉と良く合っている。
「そうなんです。浜辺で海水浴をしようと思うんですけど、海の魔物とマーマン種の水魔法が必要でして。あの、火水祭の水龍とか出せますか?」
浮き輪やビニールボールとかあれば遊びには役に立つんだけど、こっちの世界にはないからな。マーマン種の魔法で何か出来れば良いかなと思ったんだ。
「あれか.....あれはさすがに無理だろうな。祭りが終わってもあれほどの水魔法の使い手だ。引く手数多だろう」
スレイブさんは、焼き貝の身を器用にナイフとフォークで取り口に入れる。その食べる姿はとても美味しそうに見える。
「そうですよね、やはりあれほどとなると難しいですよね......」
俺は薄々と分かっていたがもしかしたらと思っていた。俺は、カニの殻から身を取り出して食べた。
カニの旨味が口に拡がり、次から次へとカニの殻を取ってカニ身にしゃぶりつく。
「あの水龍ほどではないが、水魔法の使い手はそれなりにいるぞ。べつに、水龍だけが目当てだった訳でもあるまい?」
スレイブさんは、カニの殻を取ってカニ身を取り出してから、大きめの葉野菜にカニ身を包んで食べた。葉野菜のシャキシャキとした音が聞こえた。
「まぁ、そうですね。水龍が出せる水魔法の使い手がいたら良いなってぐらいには期待してましたけど......何とかはなりますよ」
俺は焼き貝の身をナイフとフォークで取り出して食べた。口の中に貝の旨味エキスが拡がる。噛めば噛むほど旨味エキスが溢れ出てくる。それを冷えたラームエールで流し込んでいく。さらに、焼き貝の身を口に入れてはラームエールで流し込む。幸せだ。
ラームエール、もう一杯下さい! ついでに湯豆を一つ!
「なら、あとは人数か....その宣伝イベントの当日と前後一日は休みがほしいな。それと報酬だな。それ以外の細かい話はまた後日でどうだ? 仲間には声をかけておこう」
「ありがとうございます。報酬の方は各個人で銀貨五枚は約束します。それは、スレイブさんの仲間に伝えてもらえますか?」
日当五万なら平気だよね? 前の世界でも日当五万なんて破格だし、ヤバい仕事ぐらいでしか聞いたことないし....
「それは、ありがたいが大丈夫なのか? 銀貨五枚は安くない金額だが」
「はい、急な依頼ですから。なので、水魔法の使い手と人数は十人はほしいです」
「分かった。仲間にきいてみよう」
スレイブさんは力強く頷いてくれた。
その後は、残りの料理を堪能してから宿へと帰った。
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