第137話 久しぶりの討伐依頼

No137

久しぶりの討伐依頼



 翌日は、冒険者ギルドの依頼を受ける為にいつもより早く起きた。

「んっ.......ん~.......起きるか....」

 俺は身支度を整えて"餌付け亭" の食堂に向かった。


「おはようございます、ロゼッタさん」

「おはようさんだよ! 今日は早いねっ!」


「はい、今日は冒険者ギルドで依頼を受けようと思いまして」

「そうかい、火水祭も終わったから遊びの時間は終わりだね! しっかり働いてきな。朝食を用意するからテーブルで待ってな!」


 俺は空いてるテーブルへと座って朝食を待つ。食堂を見渡すと火水祭時より混んではいなかったがまだそれなりに人は泊まってるようだと思った。


 "餌付け亭" の宿は料理もサービスもかなり良いと俺は思ってる。冒険者ギルドからも推薦される程だ。火水祭が終わったからといっていきなり客足が遠退くわけじゃない。


 朝食を食べてる宿泊者達を見ながら呆けてると、ロゼッタさんが朝食をテーブルに並べてくれた。

「しっかり食べて元気に帰ってくるんだよっ!」

 と、ありがたい言葉をもらい朝食をいただいた。


 朝食を食べ終わりマダラと一緒に冒険者ギルドに向かう。メイン通りをマダラと思念をしながら歩き気になった露店で買い溜めをしつつ冒険者ギルドに着いた。


 いつものように依頼提示板を見ながら、手頃な依頼を選び受付嬢のシンディさんの列に並んび順番が来るのを待つ。


 この冒険者の列に並ぶのさえなければな....アニメや漫画なら特に並ぶシーン何て無いのに現実はしっかり並ぶからな....はぁ....


 しばらく並んでるとようやく順番が回ってきた。

「おはようございます、シンディさん」

「おはようございます、セイジロウさん。今日は依頼ですか?」


「はい、この討伐依頼と採取に依頼をお願いします」

 俺は依頼提示板から剥がしてきた依頼をシンディさんに見せた。

「はい、こちらですね。では、ギルドカードをお願いします。..........では、少々お待ち下さい」

 シンディさんは手早く処理をしていく。


「はい、お待たせしました。無事に帰って来て下さいね」

「はい、ありがとうございます。行ってきます」

「いってらっしゃい!」

 と、挨拶してからマダラと一緒に第三西門に向かった。


△▽△▽▽△


マダラと一緒に門番の手続きをおえると、しばらく歩いてからマダラに跨がり目標地点に向かった。


「マダラ、今回はグレーターウルフって魔物とファングウルフの討伐だ」

『ほぅ、こっちの狼じゃな。どの程度なのか試して見るかの』


「ある程度の群れらしいから、数もそれなりにいると思うんだよ。だから、犬狼を近接で俺が遠距離から攻撃しようと思うんだけど」

『ふむ、では四匹ほどセイジロウに従わせよう。指示はセイジロウが出すのじゃぞ』


「わかった、マダラは群れのリーダーのグレーターウルフを頼むよ」

『そのつもりじゃ』


 今回の討伐先はルインマスの街から、マダラの脚で十数分の場所にある森の中だ。近くに街道があり、そこから森の中に入ってグレーターウルフを見つける。


 俺とマダラはその森に着くとマダラに探索を指示した。

「マダラ、森の探索を頼むよ。俺は、もう一つの採取依頼を済ませるから。犬狼は先に影から出してくれるか」

『わかった.....では、行ってくるぞ』


 俺は犬狼四匹を連れて森の中を歩いていく。マダラから出した犬狼は狼の形を象っているがモフモフとかではない。何て言うか、柔らかいプラスチックのような感じで、弾力があり硬質感もある。何とも不思議な感じだ。


 しばらく警戒しつつ森の中で採取してると、ガサガサと葉音が聞こえてきて近くの茂みからマダラが現れた。


「....マダラか、どうだった? ウルフの群れは見つかった?」

『ふむ、見つけたがなかなかに聡いリーダーのようだな。あまり接近は出来なかったぞ』


「ん~、そっか。どうしよっか.....」

『セイジロウを乗せては接近にしづらいじゃろな。ここはウルフ共を誘き寄せるのじゃ』


「どうやって......俺が囮をするのかっ! それは、ちょっと嫌なんだけど....」

『そうでは無い。適当な獣を狩ってきて血を流しておくんじゃ。ワレ達は風上で離れて待つ。犬狼に見張りをさせて群れが近づいてきたら襲うのじゃ』


「わかった。じゃ、それで行こう。最悪ダメだったらマダラが単独で討伐してきてくれ」

『.....しっかり誘い込むからお主も働くんじゃ。ワレはエサとなる獣を狩ってくるから待ってるんじゃぞ』


 いってらっしゃい! 別にマダラだけで討伐しても良いじゃん.......まぁ、これも自分の為だからしょうがないか。


▽△▽▽△▽


 それから、マダラが狩ってきたホーンラビットを三匹の血を流し、俺とマダラは風上で離れた場所からウルフの群がやって来るのを待っていた。


 しばらくして待ってると見張りの犬狼からマダラに合図があった。

『セイジロウ、群が血の臭いをつかんでエサに接近してるぞ。ワレ達は群がエサに食いついたら背後から襲いかかる。よいな?』


『分かった、先手はマダラに任せる。俺は、群れの近くでマダラから飛び降りるから駆けよる速度を落として合図してくれ』


『うむ、分かった......そろそろじゃ、いくぞ!』


 俺はマダラに跨がりウルフの背後から近づいていく。

 すると、マダラからの合図がありマダラから飛び降りた。

『今じゃ、セイジロウっ!』


 ズザザザァァーーっ!


 俺はマダラから飛び降りて犬狼達とウルフの群れへと突っ込んだ。ウルフ達はマダラの突然の奇襲で狼狽えていた。


 マダラの方は作戦通りウルフの群のリーダー、グレーターウルフと戦闘状態になっていた。森の木々の合間を縫いながら戦っていた。おれは、取り巻きのファングウルフに向かって魔法を放った。


「土弾乱舞っ!....犬狼達はファングウルフ達へと攻撃だ!」


 俺の土魔法はファングウフル達数匹に直撃し、土魔法によって被弾したファングウフル達は地面へと倒れていった。そこにすかさず犬狼が襲いかかる。


 土魔法に当たらなかったファングウフル達は他の犬狼達と戦闘になっていた。戦闘をしてる犬狼を魔法でフォローしながら各個討伐していった。


 ファングウルフ達との戦闘中は、マダラとグレーターウルフとの戦闘を気に出来なかったが、俺達の戦闘が終わると同時ぐらいにマダラがグレーターウルフを咥えて帰ってきた。


「おっ、そっちも終わったんだなって、別に咥えて来なくても良かったんじゃないか?」

『こやつとはそれなりに戦闘したんじゃ。ただ影に入れてしまうのもどうかと思ってのぅ』


「そっか、マダラがそれで良いならそうするべきなんだろうな。じゃ、あっちのファングウルフ達と一緒に並べてくれるか? 討伐証明をとっちゃうから」


『なら、ワレはエサをしまったら少し周りを見てこよう。血の臭いにつられてやってきた魔物らを狩ってくるぞ』


 と、マダラが森の中へと入ると犬狼達には周囲の警戒をしてもらって俺はグレーターウルフとファングウルフの討伐証明を切り取る作業にはいった。


 グレーターウルフ達の討伐証明を取ってからしばらくしてマダラが帰ってきた。犬狼達をマダラの影に戻したら、討伐したグレーターウルフ達もマダラの影にしまった。


「よし、これで今回の依頼は達成だな。グレーターウルフ達はマダラの糧にしていいよ。あと周りには魔物いたの?」

『たいしていなかったのぅ。ゴブリンとコボルトがいたが其奴らを狩っただけじゃな』


「そっか。さてどうするか? ルインマスに帰る?」

『ワレはもう少し狩りをしたいのぅ。久しぶりに守りに来たんじゃ』


「なら、今日一日はマダラの自由にしていいさ。適当に夜営できる場所を探したら、マダラは狩り行ってきていいよ。俺はその間に試したい料理を作ってるから」


『なんじゃ、セイジロウは狩りをせんのか? 料理も良いが戦闘訓練をしなければいざというときに危険じゃぞ?』


「まぁ、それは分かるけど森の中だとあまり自由に魔法が撃てないし。夜営場所で魔法の練習をしたら今日は料理に力をいれるよ」


『ふむ、では練習をしっかりするんじゃぞ。なら、ワレに乗るんじゃ。夜営場所を探しにいくぞ』


 と、俺とマダラは夜営場所を探しに森の中を駆けていった。

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