第136話 水着を作るぞ

NO136

水着を作るぞ


 火水祭が終わってから数日が経ち、俺とマダラはマーマン種のスレイブさんと会っていた。水着制作に必要なマレアナレアの糸の採取の話をしていた。


 話し合いの場はレイリーンさんの店内の一室だ。俺とレイリーンさん、マーマン種のスレイブさんの三人が集まっていた。


 さっそく水着についての話を始めた。

「まずは話し合いの場所を提供してくれたレイリーンさんにはお礼を申し上げます。それと、スレイブさんには急な話に付き合ってもらいありがとうございます」

 と、レイリーンさんとスレイブさんに感謝を述べた。


「わたしは構いませんよ。ここなら資料もありますし、いざとなれば道具もありますから」

「俺もかまわん。セイジロウからは話を聞いて自分から行動したんだからな」

 と、レイリーンさんとスレイブさんは快く答えてくれた。


「では、さっそく話をしましょう。今回は、マレアナレアの糸に関しての話になります。スレイブさんには先に少し話しましたけど、マレアナレアの糸がたくさん必要になります。レイリーンさん、私が渡した糸でどれぐらい水着が作れますか?」


 前回、レイリーンさんにはスレイブさんが捕ってきてくれたマレアナレアの糸を全部渡してる。これを生地にから水着の制作が始まる。


 ちなみにマレアナレアの糸は海中に生息する海の魔物、水蜘蛛が吐き出す糸だ。危険度は低く自らでは襲ってこない。海中に張り出した糸に獲物が絡むまで待つ魔物だ。こちらから強い刺激を与えなけれ危険は限りなく少ない魔物だとスレイブさんに教わった。


「セイジロウさんから渡されたマレアナレアの糸は、すでに生地制作の職人さん達の手で生地になり始めてます。まだ、正確な数字は分かりませんが、二十人に満たないとわたしは判断してます。これは、セイジロウさんがデザインした運動用の水着で判断した場合です。上下を分ける水着なら四十人程は制作出来ます」


 水着は、全部で三種類の型をデザイン画にしてレイリーンさんに渡してある。

 一つは、運動用の両手首と両足首があらわになってる水着。

 一つは、胸部から局部までを隠したワンピース型の水着。

 一つは、胸部と局部をそれぞれ分けたビキニスタイルの水着。


 これに、男性着用のハーフパンツ型の男性水着がある。こっちは、俺的にオマケだからぶっちゃけどうでもいいだけど....


「私としては、ワンピース型とビキニスタイル型の水着が女性には流行ると思うのですが....男性水着に関してはせいぜいサイズ変更ぐらいなので生地の量の割り出しは簡単ですし、デザインにも変化ないですからね」


 とにかく女性水着を流行らせて海水浴を定着化させねば! 早くしないと火水季が終わっちゃうよっ!


「確かに女性用水着はそちらのデザインの方が定着しそうですね。男性は一律でデザインは決まってますから、細かいとこで差をつければ良いと思いますよ。それで、マレアナレアの糸の採取量なんですが......」

 と、レイリーンさんは少し困り顔で俺の顔を見てきてから続きを話した。


「わたしとしましてもかなりの量が必要になると思ってます。水着もそうですが、通常の衣類に関しても使用できると思ってます。すでに、セイジロウさんはご存知だと思いますが、アンリエッタさんの服の制作をしてる段階で確信しましたから」


「やっぱり普通の衣服にも使えたんですね。それは良い知らせですけど、両方共に進めるんですか?」

 さすがにちょっと早いんじゃないかな? まだ、水着の生地を制作してる段階出しスレイブさんとの話も進めてないよ?


「いえ、すぐにというわけじゃないんです。まずは、水着から制作しますが【火水祭】の海上演舞の衣装にどうかと考えてます。先日、観てたと思いますが海上演舞は海の上で行われます。なので、演舞を行う方が着る水着衣装を作ろうかと思ってます。採取量によるんですがどうでしょうか?」


 へぇ、海上演舞の衣装か....それはもちろん良い考えだし、衣装が水着なら海水に濡れても問題ない。さらに、演舞がさらに華やかになりそうだな! 問題はどれだけ捕れるのかか....


「レイリーンの考えには賛成には賛成ですよっ! 海上演舞がさらに華やかなりますし、水着の宣伝にもなりましね。問題は、マレアナレアの糸の採取量ですね。スレイブさんは前回の採取量が半日ぐらいかかったんですよね?」


 ここで、マーマン種のスレイブさんに話を聞いてみた。

「そうだな、約半日だが他にも魚介類を捕っていたからな....マレアナレアの糸だけなら半日もかからんだろう」


「なら、一日掛ければ前回の二倍か三倍は採取できる分けですか?」

「いや、そうでは無いな。いくら俺達がマーマン種でも休みは必要だ。せいぜい二倍だな」


「となれば、スレイブさんが捕ってくる採取量は水着に換算すると四十着から八十着前後になるわけですね。まぁ、水着だけに換算すればですけどね」


 と、俺は話すがスレイブさんの話はまだ続いた。

「セイジロウ、毎日は糸の採取は無理だぞ。マレアナレアの糸を採取すれば当然無くなる。だが、水蜘蛛が糸を張るにも一日は必要だし水蜘蛛が死んでしまえば糸も無くなる。猟場を段階的に変えながら採取する必要があるし、俺だけじゃ体が持たんぞ」


 ですよねーっ! そんなポンポンと都合よくは行かないよな。まずは、安定的に採取できるシステムを構築しないと.....前の世界みたいな貿易ができる訳じゃないんだから。


「スレイブさんの友人方で定期的にマレアナレアの糸を採取する事は可能ですか?」

「それは多分可能だ。ちゃんと報酬がもらえるならな」


「じゃ、レイリーンさんの方でスレイブさん達に依頼を出してマレアナレアの糸を採取してもらったらどうですか? ある程度の水着制作に関しての費用は算出してますよね?」


「はい、正確な算出は試作の水着が出来上がってからですが、ある程度はわかってます」

 なら、そこから逆算してスレイブさん達に依頼する報酬と仕入れルート、さらに商業ギルドや冒険者ギルドとかを巻き込んでルインマスの街の特産にしちゃえば上手くいくんかな?


「では、仕入れに関する報酬はスレイブさん達と話が出来ますね! 販売はレイリーンさんが個人でするのですか?」

「いえ、服飾組合と商業ギルドとで話を進めようと思ってます。話し合いはまだこれからですが....」

 うんうん、良いんじゃないの? 上手く行けば街の発展や産業になるし、仮にならなくてもルインマスの街だけでも利益は出ると思う.....よ?


「そうですか、なら冒険者ギルドにも参加してもらったらどうですか? 海水浴の件や火水祭の衣装の話もありますし。冒険者ギルドマスターのサーシャさんとは少しだけ知ってる仲ですから、一筆書いときますよ」


「それは、助かります! コネがあるのと無いのじゃ違いますからね!」


 これで後はレイリーンさん達とスレイブさん達とで話が進めば水着が出来るな!良いね、いいね! 着実に進んでるね!


 俺がニコニコと笑みを浮かべてるとレイリーンさんが話を続ける。

「あの、セイジロウさん。セイジロウさんの報酬はどうなりますか? 元々、セイジロウさんの持ってきたマレアナレアの糸とアイデアから話が始まりましたから....」


 あー、報酬か....どうしよう....

「そうですね、どうしましょう? 話がまとまって販売してからで良いんじゃないですか? まだ、机上の段階ですしね」


「なら、デザイン量だけでもお支払します。これを元に水着を販売しますから」

 まぁ、それぐらいなら貰いましょう。売り市で結構散財しちゃったからな。助かります!


「では、そちらだけありがたくいただきます」

「では、帰りにお渡しします。それから、スレイブさんはマレアナレアの糸の採取に関しての話をしてもいいでしょうか?」


 と、レイリーンさんとスレイブさんとでの話もが始まり俺はその話を聞きつつ、レイリーンさんからの質問やスレイブさんからの質問に答えながら、話し合いは陽暮れまで続いた。


 とりあえずは大まかな話は決まり、この日から本格的に水着計画がスタートした

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