第82話 見つけた2つの魔導具
NO82
見つけた2つの魔導具
翌日は、"餌付け亭" で朝食を食べて身支度をしたら、メイン通りをマダラと歩きつつ目に付いた串焼きや焼き魚を買いマダラの影に保管する。そうすれば、食べたい時に何時でも食べれるというわけだ。ただし、制限はあるが.....
『セイジロウ、あの露店で売ってる貝も買うのじゃ! あれは、まだ食した事がないやつじゃぞ!』
「まだ、買うのかよ? また、今度にしようぜ? 金だってたくさんあるわけじゃ無いんだから....」
『なんじゃ? ケチくさいのぅ、男が金をケチると器が小さくなるぞ? いいから、早く買うのじゃ!』
「あっ! ちょっと待てっ........はやっ!」
あっという間に目星の露店前まで移動しやがったよ....とんだ食い意地だな....
「はぁ...はぁ....すっ、すいません。この焼き貝を六つもらえますか?」
「あいよっ! 毎度ありーだ!! しかし、あんちゃんはすげぇ従魔を連れてるんだな....いきなり従魔が現れたのは時はビビッち待ったぜ! ガハハハっ!」
「すいません、こいつが食いしん坊なんで....」
「確かになぁ、これだけデカけりゃあ食うだろ? でも、仕方ねぇさ。あんちゃんが主なんだ! しっかりしなきゃなっ!! ホレッ一つ追加してやるまた買いにこいよっ!」
「あっ!...ありがとうございます! また、寄らせてもらいますねっ!! マダラ、いくぞ」
いやぁ! 何か良いオッサンだったな!何か江戸前の粋をちょっと感じたな....
「マダラ、いい人だったな....じゃ、貝を保管しといて。三つだけ食べていいから」
『ふむ、器のデカイ男だったな。あれぐらいの気前をセイジロウに見せてもらいたいものじゃな』
「.....やっぱり貝は二つだけだ。あとは食っちゃダメだ。これは、命令だ!!」
『なんじゃと!! 器の小さい主がぁー!!』
ふん....お前はいつも一言多いんだよ、バカタレ....ふふ、お前が食べなかった貝は器のデカ胃を持つ俺が食ってやるよ....ククク...
▽▽▽▽▽▽△
と、そんなやり取りをしながら、しばらく歩くとアンリエッタ邸に着いた。出迎えてくれた執事のシバスさんに倉庫整理を伝え、倉庫に向かう。
倉庫の扉前で待つとメイドのメイリーンさんが倉庫の鍵を持って現れた。
「おはようございます、メイリーンさん」
「おはようございます、セイジロウさん。今、鍵を開けますから」
メイリーンさんに扉の鍵を開けてもらい魔力灯を点けて、メイリーンさんから受け取った目録を見ながら、さっそく倉庫整理を始めて行く。
前回と同じように、木箱の中を確認してマダラの影の中に移動させてから、分類事の場所に木箱を置く。
そんな事を繰り返ししてしばらく経った頃、
「んっ?......これは?.....へぇ」
『なんじゃ、何か見つけたのかセイジロウ?』
「ああ、良いもの見つけたぜっ! こんなのがあるなんてな....さすが魔導具師アンリエッタさんだな....マダラ、この木箱はあっちに別で置いてくれるか」
『別に良いが、何を見つけたんじゃ? ワレに教えんかっ!』
「へへぇっ! 俺の予想が正しければ調理道具だな! 前の世界とはちょっと形が違うが原理は一緒だと思う。品目名を見ても"揚げ鍋導具" ってかかれてるし」
これは、フライヤーだと俺は思ってる。油を熱して、熱した油に食材をいれて揚げる調理道具だとマダラにした。
『ふむ、ではフライドポテトを作る導具なわけじゃな』
「あぁ、そうだ。ハルジオンの街のギルドの食事処は、ここまでちゃんとしたやつじゃななかったけどな....でも、たぶんそうだ」
『では、コレがあればフライドポテトが食えるんじゃな?』
「ああ、あとは油と芋があればな...まぁ、手に入るだろ。油も豚脂じゃなくて植物油があるはずだ....たぶん」
『なら、この魔導具をアンリに借りて作るのじゃ、セイジロウっ!』
「かっ、顔が...近い・ん・だ・よっ!!.....ちょっと落ち着け....はぁ....マダラ、まずは材料が必要だ。それに、塩とハーブに植物油もな」
間近に顔を近づけてくるマダラを両手で押し退けてからさらに説明する。
『そんなのは、市場で手に入るじゃろ』
「そりゃ、入るだろうな...探せば。あと、アンリエッタさんがこの魔導具を貸してくれるかだが.....多分、平気だな」
『ワレからアンリに頼んでも良いぞ』
「それが確実だが、そうじゃなくても倉庫でホコリを被っていたんだ。貸してくれるさ。それに、ちょっと思いついた事もあるからしばらく内緒にしてくれ」
『なんじゃ、煮えきらんのぅ』
「悪いな、でも近い内にフライドポテトは作ってやるよ」
そして、倉庫整理の依頼を昼食までメイドのメイリーンさんが来るまで続けた。
メイリーンさんの案内で裏庭のテーブル席に向かうとそこにはすでに、たくさんの料理が並べられていて、アンリエッタさんもいた。
「お疲れ様です、セイジロウさん。それと、マダラちゃん!昼食を用意しましたから食べましょうね!」
「ありがとうございます、アンリエッタさん。マダラもお礼言って」
『ふむ、アンリよ感謝する』
「えへへっ!!さっ、冷めない内に食べましょう!!マダラちゃんはわたしの隣ねぇー!」
ルインマスに来てマダラの初めての友達はアンリエッタさんだな。まるでマダラの主がアンリエッタさんのようだな.....
だがっ!
「アンリエッタさん、マダラは渡しませんからね....では、いただきます」
マダラは俺の従魔だ。ちゃんと釘をさしておかないとな。
さて、冷めない内に食べますか!
△▽△▽▽△△▽
昼食を食べた後は、メイリーンさんが用意してくれた紅茶を飲む。マダラとアンリエッタさんが裏庭でじゃれる姿を見て、束の間の食後休憩をしてから倉庫整理に戻った。
そして午前と同じように木箱を確認してから、マダラの影にいれて分類した場所へと運んだ。
俺は倉庫整理をしつつ在るものを探していた。品目名簿には記載があるので、記載に不備が無ければこの倉庫内の何処かにあるはずだと....
だが、なかなか見つからない。探していた場所が違うのは確認する木箱はどれも違った。もしかしたら、まだ山と積まれている木箱の中なのかと不安になっていた頃、
「おぉー! あったぞっ! アハハっ! いえーい!」
『なんじゃ、騒々しいのぅ。何があったのじゃセイジロウ?』
「んー! 実はさ、昼前に"揚げ鍋" を見つけたろ? その時にコレもあるんじゃないかと思ったんだよね。無ければアンリエッタさんに頼んでも制作してもらおうと思ってたんだよ」
『して、それはなんじゃ? ただの板にしか見えんが?』
「あぁ、間違いじゃないよ。これは、板さ。でも、コレも調理道具だ。露店でも見たろ? おっちゃんが貝や肉、魚を焼いていた鉄板さ!!」
『そんな物を探していたのか?』
「そうは言うけど、使う人が変われば料理も味も変わるんだぜ?"鉄板焼き" を見せてやるよ!!」
さーて、さっそく貸してくれるかメイリーンさんに聞いてもらおう! コレでデモンストレーションが出来るぜっ!!
"揚げ鍋" と"鉄板" はすんなり貸してもらえた。そして、明日の夕食時に冒険者ギルドマスターのサーシャさんとシンディさんを招いて、アンリエッタ邸の一画を借りてあの話の返事をデモンストレーション付きで答える事にした。
話が纏まってちょうど良く陽暮れになったので、倉庫整理を終わりにしてまた、明日の朝に来ることを伝えて宿に帰った。
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