第13話 フローラさんと勉強・午後
No13
フローラさんと勉強・午後
さぁ、午後はお待ちかねの魔法についてだ。この世界での魔法はどんな感じなんだ? やっぱり、詠唱有り系だよな、フローラさんも詠唱してたし。
なら、俺も詠唱するのか? ちょっと恥ずかしいんだけど....中年男性が魔法の詠唱って誰得なんだ?
フローラさんやアリーナさんが詠唱すれば様になるけどね。やっぱりマジモンの魔法詠唱はドキッとしたな....美少女、美人限定で!!
「では、セイジロウさん。午後からは魔法について、教えます。まずは、魔法を使うにしても魔力または魔石、魔導具が必要になります。魔力については分かりますか?」
「はい、私の出身国で良いなら知っています。魔力は自身の内に宿っていて、その魔力を糧として魔法を発動させる。と、私は思ってますが.....」
「セイジロウさんが言っている事でほぼ間違いないですが....セイジロウさんは魔法を使った事はあるのですか?」
「いえ、ありません」
「では、魔導具の取り扱いは?」
「無いですね....私がいた国では魔法の存在はあるとされてましたが、私はソレを見たことがありませんでした。国民でも魔法を使える方がいたかは分かりませんし、居たとしても極少数でしょうね」
「そうだったんですね....魔法が発展しない国柄だったのですね。なら、セイジロウさんが知らないのも、魔法を使ってみたい好奇心を押さえられないのも理解できます」
「あの、そんなに態度に出てますか?」
「今も、早く教えてほしいと顔に出てますよ。ふふふ」
「ハハハ....我ながら子供みたいですね。でも、この好奇心は押さえられませんよ。小さい時から思っていた魔法が使える日が来たんです!」
「まずは、落ち着きましょう。魔門を開けなければなりません。」
「?.....魔門ですか?」
「はい、人は体内に魔力を宿してますが魔門が開いてない人は魔力を扱えません。極僅かですが、自力で魔門を開ける人もいますが無理に開ければ命の危険を招く恐れは十分にありますので、覚えておいて下さいね」
ずいぶんと初っぱなから物騒な話が出てきたな....
「これから、セイジロウさんの体内にある魔門を開けてもらいます。わたしが魔力を流しますからその魔力を感じとって下さい。魔力が感じ取れたら自分の中に存在する魔力を感じとってください。最初は難しいかも知れませんが、自身の魔力を感じとれなければ、魔門も開きませんし、魔法も使えません」
「分かりました、頑張りますのでフローラさんは助けて下さいね」
「っ?!...最初から私を頼るのですか?」
「はい、魔法に関しては素人ですからね。頼りになる人が近くにいるなら、助けを求めますよ。それが美人ならなおさらです」
「....セイジロウさんは、口が上手いですね。いつか女性の怨みをかって刺されないようにした方がいいですよ」
「アハハ....気をつけます。では、よろしくお願いします。」
フローラさんは俺の背後に回り背中に手をついた。少しすると何かモワッとしたもの感じた。
これが、魔力か? これが、俺の中にあるのか?
俺はこのモワッとしたものを感じ取る為に集中する。多分、異世界ファンタジー知識によれば心臓か、丹田、血液だと思うが....
これか? なんとなく分かるぞ。体内にあるけど蓋をされてる感じが....
これが、魔門か...ならこれを開けるようにイメージすれば....
魔門をこじ開けるイメージを自分で強めていく。無理矢理ではなく、ゆっくり押し開けるように....すると、徐々に体内にある魔力が魔門を押し開いていく。
そして、
ブワッ!っと、何かが体内から溢れた。
「セイジロウさん、目を開けてください」
と、フローラさんの声が聞こえてきた。知らずのうちに目を閉じてたようだ。
「完了です。魔力を感じ取れますか?」
「はい、これが....魔力ですか?」
「セイジロウさんが、どう感じてるかはわかりませんが...人によって感じ方はそれぞれです。ですが、分かるようですね」
「はい、ユラユラした感じはしますね」
「それが魔力です。あとは体内にある魔力を操作して魔法を発動させるのですが、ここでは危険なのでギルドの練鍛場でやりましょう」
俺とフローラさんはギルドの練鍛場に向かった。ギルドの裏手には石壁に囲まれた場所に移動した。ここでは、冒険者が自身の鍛練をする為の場所で攻撃的な魔法以外は使っていい事になっていた。
練鍛場の隅に移動し魔法の練習になった。
「では、まず初歩の魔法を発動し魔法に慣れてみましょう。最初は、水の魔法からです。手を突きだし掌の前に水の塊を作り出すようにイメージします。この時、言葉を発しながらするとイメージがしやすくなります」
「それが魔法の詠唱ですか?」
「はい。決まった文言はないですが、大きさや形状を言葉にするのが一般的ですかね」
言われた通りにやってみた。
「小さき水よ、我の魔力を糧として顕現せよ。水球っ!」
すると、拳大の水の玉が現れた。
おおっ! 人生初の魔法っ!! マジかっ!
「上出来です。最初はほとんどの方が失敗するんですけどね....では、その水の玉を霧散させるように消してください」
消えるイメージをしながら、
「消えよ」
と、呟くとスーっと水の玉は消えていった。
「それが魔法の発動と消失です。今のが魔法の基礎になります。まだ、覚える事はありますが、今日はここまでにしましょう。」
「えっ? もう終わりですか?」
「はい。終わりです。魔法を使って嬉しいのは分かりますが自制するのも魔法師の教えです。気持ちが昂ったままで魔法を発動させれば事故の元です。一度、間をあけてまた後日魔法の鍛練をしましょう」
「そっ、そうですか.....」
「ふふ、そんな顔をしないでください。わたしが悪いみたいじゃないですか...」
「悪くは.....ないですけど。何か腑に落ちないんですよね...」
「ふふふ、ちょっと面白くなって....初期の魔法本をお貸ししますからそんなに落ち込まないでください。魔法について書かれている本ですから読んでいても楽しいはずですよ。写本にすればいつでも読めますしね」
フローラさん、パネェ!!一石二鳥どころか、三鳥、四鳥もあった!
「分かりました、では戻ってその本を読みましょう。さっ! 行きましょうっ!!」
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「今日はありがとうございました。とても充実した1日でした」
今はフローラさんとの勉強会も終わり午後のティータイムをしてる。もちろん、プリン付きで。
「満足していただけたならよかったです。なるべく魔法の練習はギルドの練鍛場で練習してくださいね。街の外でも良いですが、魔物はいますので。それから、街中で魔法の使用は慎んでくださいね。事故や怪我は自己責任になりますし、最悪は斬首されますからね」
物騒だな、異世界っ!!
「分かりました、覚えておきます。」
「はい。もし、分からない事や聞きたい事があればまた勉強会を開きますから言って下さい」
「ありがとうございます。またお願いすると思います。新作の甘味を考えておきますね」
しばらく雑談をしたあと、ギルドの食事処でまた依頼の仕事をこなす。
「ねぇ、プリンは夜の販売はないのー?」
「昼間の販売だけなのっ!?」
「明日は休みにしなさいよーっ! プリンが食べれないじゃないのよ!!」
と、食事処では質問と女性冒険者が同じパーティーの男性冒険者に文句を言ったりするのを聞きながら、仕事をこなした。
客がほとんどいなくなり、俺とビルドさん、リーナさんとエリナさんとでフライドポテトとエールを飲み食いしながら、雑談をしていた。
「ねぇ、セイジロウさん。夜もプリンの販売はしないの?」
「そうですよ、最近プリンの問い合わせが多いんですよっ! もぅ、ひっきりなしですよ!」
「って、言われてもね....まだ増産は出来ないんだよね。一人で仕込むからなかなかね....人が欲しいけど、レシピを覚えられるのも困るし....」
「まぁ、秘密のレシピなのは分かりますけど、何とかなりませんか?」
「何とかね....魔法を使えるようになったから魔法の腕が上がれば何とかなるかな?」
「魔法ですか? セイジロウさん、魔法が使えなかったんですか?」
「うん、国柄で魔法が発展してなかったんだよ。だから、魔法が使えなくてね。でも、今日の勉強会で魔法を教えてもらったんだ。だから、魔法が上手くなればプリンも増産できると思うんだよ」
「魔法でプリン増産ですか....大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、まぁ出来るように頑張るから気長に待っていて。では、宿に戻ります。また明日」
"森の恵み亭" に帰り、夕食を食べお湯で体を拭いて就寝した。
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