第211話 めでたしめでたし?(瑠衣)

「みくにゃん……!」

「え、る、瑠衣ちゃん……?」


 葉奈のせいで散々探し回った結果、美久里は屋上にいた。

 たくさん泣いたのか、目が赤くなっている。

 でも、どうして泣いていたのだろうか。


「みくにゃん、あいつになんかされたのにゃ?」

「あいつ? あ、今日朝に会った子のこと……?」


 美久里は少し考えるような素振りを見せるも、首を横に振る。


「なにもされてないよ。学校サボっちゃったのは……ちょっと、そういう気分だったから」

「そんなわけねーだろ」

「そ、そうですよ……! 美久里ちゃんがそんなことでサボるなんてありえないです!」


 朔良と萌花は、確固とした信頼があるからそう言ったのだろう。

 美久里もそれをわかっているはず。

 だからこそ、また涙が溢れてきたのかもしれない。


「うっ……ほんとはね、私、みんなのそばにいていいかわからなくなったの。みんな卒業して、別々の道に進んじゃったら……こうして集まることも……なくなっちゃうのかなって」


 美久里は、朔良と萌花のさっきの優しさを完全には受け取れていないようだった。

 人間関係……友人関係は、そんなにも儚いものだと思っているらしい。

 実際、そういう関係もなくはない。

 だけど、少なくとも、瑠衣たちはそんな安い関係ではないはずだ――!


「……ふざけるんじゃないにゃ」

「え、る、瑠衣ちゃん……? どうしたの〜……?」


 無意識にこぼしていた言葉を、一番近くにいた紫乃に聞かれてしまったらしい。

 こうなったら、もう腹を括って伝えるしかなくなった。


「なんなのにゃ!? みくにゃんは、瑠衣たちのことを薄情な人間だと思ってるのにゃ!?」

「えっ……!? そ、そういうことじゃ……」

「そういうことじゃなければなんなのにゃ! だって……そんなことで終わるような関係だと思われてたなんて……ショックが大きいにゃ……」


 言葉を紡いでいくにつれて、ボロボロと涙がこぼれてきた。

 でも、その言葉はちゃんと届いたようで、美久里はハッとした表情になっている。


「ご、ごめん……私、みんなのこと信じてなかったんだね……」

「まあ、気持ちはわかるから気にするなっす。うちにもそういう不安がないわけでもないっすし」

「そうだね。ボクはこの中では付き合いが浅い方だから、そういう不安は人一倍あるよ」


 葉奈と柚が美久里を慰めて、ようやく一段落した。

 その中で一人だけ、面白くなさそうな顔をしている人がいたけども。

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