468話 きっかけは思いがけず
「このマップも駄目っぽいな」
細巻の煙草を口に咥え、紫煙を燻らせながらポリゴン状に消失していくボスを眺めながらふいーっと息を吐き出して一息入れる。
「ボスドロップに期待するのはどうかと」
「珍しい素材ってボス持ちが多いじゃん」
犬野郎が消失していったボスの近くから戻って来て装備の構えを解き、腕をぐるぐると回しているのを横目にドロップ品の確認。ボス特有の装備品なり、素材なりが手に入るが、どれもこれも銃には使えないので、インベントリから出して犬野郎に投げ付けておく。
「それにしても、上位クラスのガンナーがいると此処まで簡単にボスが相手出来るとは思わなかったですよ」
「あんたの硬すぎる防御力で壁してりゃ楽だって」
こうして二人でボス……って訳でもなく、少し離れた所には犬野郎のクランメンバーがドロップ品がどうのこうのと話している。面子的には犬野郎を筆頭にして、各分野の最高レベルが揃っているのだが……私が知ってるのは犬野郎とメカクレしかいないっていう。
「そもそも私が居なくても変わんないでしょ」
「そうかもしれませんね」
「社交辞令って知ってる?」
ぷぁっと煙を吐き出してから、ぐいーっと伸びて立ち上がる。
さて、ここのボスも私が欲しいような素材が見つからなかったので、次のボスやマップの行き先を考える。犬野郎に頼んでマップの深い所まで来てボス戦だったりに付いてきたが、あまり成果がない。レベルの高い所に来ても目当ての素材と言うか、珍しい素材が取れる事は取れるんだけど、ファンタジー色が強くなっていくから、現代兵器とはちょっとミスマッチだわ。
「手詰まり感が出てきたなあ……もうちょっと出来ると思ったけどそうでもないし」
「何が欲しいんですか?此処までのボスや雑魚の素材はぶつくさといらないって言い続けてましたが」
「有機物系の素材って使いにくいんだよ、一狩りいくゲームなら何でも間でもだろうけど、現代兵器に骨や皮って使われないでしょ」
「それでは何でボス討伐の付き合いに?」
そりゃー、珍しい鉱石の1つや2つ出てくると思ったんだけど、全然そんな事は無かったって訳。今倒したドラゴンのボスだって、牙や鱗が手に入ったけど、それをどう銃身に使うんだって話よ。装飾や外装には使えるだろうけど、スペックが変わらない部分での手入れってそこまで好きじゃない。
「マップであれこれ探し回る方が有意義な気がしてきたわ」
「……今まで探したマップってのは?」
「雪山、火山含めた山関係、洞窟に平地の採掘ポイントかしらねえ……色々回ってるけど、殆ど入手した事あるものだから成果は全然ないのよねえ」
魔法弾取得のための戦闘数稼ぎも兼ねて、改めていろいろな採掘ポイントを回って素材を入手しまわってみたが、新しい物や珍しい物はなく、どれもこれも既に発見済み、なんだったら加工までして銃弾や銃本体にまで使った事のあるものばかりだったりする。
「……そういえば一つ面白いマップがありますね」
「よっぽど面白くなきゃ私が出向けないわよ」
「アカメさんは一度近い所まで行ったことがあるはずですよ?」
「良いから言いなさいって」
「海底洞窟に行ったと思いますが、先のマップに海底火山があるんですよ」
海底火山か……確かにそれは珍しいな。
海で取れるような鉱物って何があったかなあ……コバルト、マンガンが多いんだっけか?後ほかになんかので見たけど、えーっとあれ、あれなんだっけ。
「とりあえず行きます?今日のノルマは終わってますし、付き合いますけど」
「ちょっと待って、今思い出しそうだから」
煙草の先を唇で器用に揺らしながらゲーム以外の知識を絞り出していく。何だったかな、レアアースも取れるってのは見たけど、もっとヤバい奴があったはず。
「ああ、思い出した!ウランだ、ウラン取れるわ!」
指をぱちんと鳴らしながら声を上げる。
いきなり声を荒げたのもあって周りの連中がこっちを見てくるのだが、そんな事はどうでもいい。確か海中資源だったからウランが取れる可能性がある。まさかの核兵器に手出すルート?いや、ゲームだから放射能がどうとかは関係ないって言うか、放射能汚染されたら手足が生えてきたり、自爆したら周りに核爆発で攻撃出来たりするようになったら面白い。
「物騒な名前が出てきましたけど……本気ですか?」
「いいじゃん、劣化ウラン弾を始めとした核兵器……魔法だってあるんだからこっちは科学の力よ」
「……1人だけ世界観が核戦争後の感じですけど」
「よし、行こうや、もしもこれが小説だったら、『異世界に現代兵器持ち込んでみた』ってタイトルになるぞ」
吸い終わった細巻煙草をぷっと吐き出してから、にぃーっとギザ歯を見せて笑う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます